見出し画像

ポテサラVS.マカロニ戦争に終止符を。

「生ビール3つと煮込み、お刺身盛り合わせ3人前。あとポテトサラダマカロニサラダをください。」


注文は任せるといっていたはずの同僚が口を開く。


「ポテトサラダとマカロニサラダ、どっちも頼むの? どっちかで良くない?」


また始まった。
注文は任せると言っておきながら、人の注文にケチをつける輩がいる。
どっちかでいいと思っていたら、どっちかしか頼まないよ。
「ポテトサラダ」も「マカロニサラダ」もどっちも食べたいからどっちも頼むんじゃないか。

百歩譲って「どっちかでよくない?」は、よしとしよう。
その後に余計な一言をぶっこんでくる輩もいる。
その代表的な3つのパターンがこれだ。


「どっち派? 俺、ポテサラ派!」

どっちも頼んでいる時点で、俺にどっち派とかない。
強いて言うなら中立派だ。
そもそも、何故みんながどちらか一方を支持していると思うのか?


「サラダって名前だけど、これ炭水化物だからサラダとは呼べないでしょ!」

これを言う輩は、決まって面白いこと言いました的な顔をしてるからやっかいだ。
こっちだってそんなことは百も承知。
俺は「ポテトサラダ」も「マカロニサラダ」も、酒の肴として注文している。
サラダが食べたければ、ちゃんとサラダを頼むわ。


「最近よく見る小洒落たアレンジされてるのは認めない。やっぱり王道じゃないと。」

確かに王道は素晴らしい。
でも俺は、どんなにお洒落な「ポテトサラダ」でも、カレー味の「マカロニサラダ」でも、何でも愛せる。
むしろ食べたい!
王道しか認めないと言っている人は、きっとスマホが発売された頃に「ガラケー派」を宣言していた人なんだろうね。


思い返せば、俺と「ポテトサラダ」「マカロニサラダ」との付き合いは古い。
幼少期から今も変わらず、俺の「好きな食べ物ランキングTOP10」にランクインし続けている。
多感な10代と比べれば、40代になり食の好みも大きく変わった。この間、ずっと変わらずランクインし続けているのは「寿司」「焼き肉」、そして「ポテトサラダ」と「マカロニサラダ」だけだ。


大人になって、「マカロニポテトサラダ」というメニューに出会った。
その名の通り「ポテトサラダ」と「マカロニサラダ」が一緒になった奇跡の一皿だ。

「どっち派?」
「サラダじゃない」
「アレンジしたのは認めない」

こんなハラスメントが横行していると社会において、「マカロニポテトサラダ」なんてメニューを開発してしまう人は、きっと俺と同じ気持ちを持っていたに違いない。

俺は嬉々として「マカロニポテトサラダ」を食べた。
美味い!
「ポテトサラダ」のクリーミーさと、「マカロニサラダ」のプニプニ食感が一皿で味わえる日がくるなんて。
大好きなもの同士が一緒になったんだ。大好きな味になるに決まってる。

でも何故だろう?
食べ終わる頃には、ちょっと物足りなさを感じていた。

もしかしたら俺は、「ポテトサラダ」と「マカロニサラダ」を掛け合わせたら、1+1が5にも10にもなると思っていたのかもしれない。
「マカロニポテトサラダ」を悪く言うつもりは毛頭ない。
この興奮を味わわせてくれたことに感謝しているし、味も美味い。
これは揺るぎない事実だ。

ただ俺は、「マカロニポテトサラダ」よりも「ポテトサラダ」と「マカロニサラダ」を食べたいと思ってしまった。
これもまた、疑いようのない事実だった。


この感覚。どこかで感じたことがある。
そうか。「マカロニポテトサラダ」とは、2001年に行われた「K-1 VS.猪木軍」だ。
大好きなK-1と大好きなプロレスの禁断のマッチメイク。
どんな試合になるのか?
どんな結果が待っているのか?
最初はハラハラドキドキした。

忘れもしない2001年8月19日。
俺はさいたまスーパーアリーナのSRS席に陣取っていた。
前半の「K-1 JAPAN GP」とは、ガラッと変わった空気感。
少し前の席には、格闘技界だけでなく、プロレス界からも続々と有名選手が観戦に訪れている。

この日の試合は3試合。
第1試合は、K-1軍のレネ・ローゼの右ハイキックが安田忠夫の顔面を捉えて失神KO。
会場の大画面に映し出された中西学の不満げな顔が忘れられない。

第2試合は、“PRIDEの番人”ことゲーリー・グッドリッジが、ヤン“ザ・ジャイアント”ノルキヤを秒殺。
「K-1 VS.猪木軍」の勝敗を五分に戻した。

そして第3試合。後にPRIDEでも旋風を巻き起こすミルコ・クロコップのMMA(特別ルールだけど)初戦。相手は“猪木イズム最後の継承者”藤田和之だ。
ミルコの打撃を警戒してか、少し遠い距離からタックルを仕掛ける藤田。
ミルコは華麗なステップでかわす。
3回目のタックルに合わせてミルコの膝蹴り一閃。会場には骨と骨がぶつかり合う大きな音が響いた。
藤田の額がパックリと割れ、大量の出血。
圧倒的不利を予想されていたミルコが歴史的大番狂わせを起こした。

異種格闘技戦の最大の魅力がこれだ。
誰にも予想できない、筋書きのないドラマを観ることができる。
リング上では、ジェロム・レ・バンナやマイク・ベルナルドが勝ったミルコを称える。
こんな光景はじめてだ。


俺にとって「K-1 VS.猪木軍」のピークはこの日だった。
世間的に「K-1 VS.猪木軍」が最高潮に盛り上がったのはこの年の大晦日だろう。安田忠夫がジェロム・レ・バンナにギロチンチョークを決めて勝利したシーンだ。
しかし俺の目には、お互いが負けないことを優先した消化不良な試合展開、慣れないルールで輝きを失った選手の方が印象に残っている。

夢の対決が必ずしも想像を超えるとは限らない。
なぜなら、K-1もプロレスもMMAも、それぞれが全く違う競技であり、それぞれの競技のトップ選手同士が戦う方がハイレベルな攻防を観れるのは明らかだ。
たしかに、異種格闘技戦には夢がある。
しかし俺は、立ち技は立ち技、プロレスはプロレス、MMAはMMAで魅せてくれる試合が好きだ。


俺は、「ポテトサラダ」も「マカロニサラダ」も食べたい。
仮に「マカロニポテトサラダ」があったとしても、それぞれを別で食べたいと思っている。
そっちの方が、それぞれの魅力が味わえるからね。


でも、時々こんなことも考えるんだ。
「スパゲティサラダ」も美味いよね。


#創作大賞2024 #エッセイ部門

本業で地元のまちに貢献できるように、いただいたサポートは戸田市・蕨市特化型ライターとしての活動費に充てさせていただきます! よろしくお願いいたします!