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記念

 今年度から、自分の勤務先である会社に、パートナーシップ制度が導入された。
 やっとだ。
 やっと。
 記念に、ずっと書こうと思いながらも書けていなかった書き物を始めようと思う。続かないかもしれないけど。

 その昔、同性の恋人にフラれた事がある。
 理由は「男じゃないから」。私がまだ、20代半ばだった頃の話だ。
 彼女がそう言ったのは、それが事実であり、私に彼女を諦めさせるには一番確実な方法だったからだと思う。というか、他にもっと理由はあった。バカだとかアホだとか生活力がないとかメンタル弱すぎとか面倒くさいとか、もう好きじゃないとか。
 そういう、理由らしき理由を全部丸めての「男じゃない」。どう頑張ったところで、私は男にはなれない。諦める外なかった。

 あの頃、今のようなパートナーシップ制度があったら、私と彼女はどうなっていただろう。それでもやっぱり、フラれていたんだろうな、と思う。私はとんでもないアホでメンタル弱々で、彼女に甘えていたので。
 結果、やっぱりダメだったとしても。「男になりたかった」などと、どうしようもない理由で泣く必要はなかったはずだ。性別違和ではなく、「男じゃないと女の子とは結婚できないから」なんて理由で。

 だからこれは、絶対に良い変化なのだ。あの頃の私や私のような人が泣かないで済む。もちろん一番いいのは、シンプルに同性婚が認められる事だけど。

 振り返っても、人生で一番好きになった女の子だった。傍から見れば普通の人かもしれない。でも私には特別だったし、特別なものをたくさんくれた。
 彼女がいなければ、私はあの後もまだ暫くは、斜に構えたしゃらくさいガキのままだっただろうと思う。私は彼女の事が本当に好きだったし、彼女もまた驚くほどたくさんの気持ちをくれた。余りあるものを与えてくれた事に、今でも感謝している。

 彼女と私を繋げたのは、ゲームだった。
 私は今、そのゲームを作った会社に勤めている。
 今はもう連絡先もわからないけど、話したら多分めちゃくちゃ驚くと思う。
 何せ、勤めている当人が一番驚いているので。

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