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Thanks, VISION. | ナイトカルチャーの意義と今後の俺

個人的な話

2022年9月3日、渋谷道玄坂再開発によって、大好きなナイトクラブ SOUND MUSEUM VISIONが、閉店になった。
名古屋から上京したときからずっと、僕の大切な遊び場で、VISIONで出会う音楽にはいつもドキドキさせられたし、VISIONで出会う人達はいつも新しい刺激をくれた。忘れたい泥酔の思い出や色恋沙汰もたくさんあったけど、今ではその全てが愛おしい。
大学生のときは、バースタッフとしてアルバイトをさせて頂いたこともあって、誰かの楽しい時間を作っていると思える瞬間はとても嬉しかった。
振り返ると、孤独な夜も平日の疲れも、全て乗り越えて行けた空間だったし、純粋に、ただ楽しい空間だった。
ナイトクラブは、特に、VISIONは、昼間の役割を超えて、それぞれの境界を取り払って、人が集まる場所だと思う。僕にとっては、必要な祝祭だったし、きっと誰かにとっても、そうであり続けると思う。

音楽とリアルな場所の意義

音楽の好きなところはたくさんあるが、特に、「音楽が好きだ」「そこに音楽が鳴っている」という共通の感覚だけで、様々なプロパティ(属性)を、少しだけ取り払って、人が話したり踊ったりできるところが好きだ。わかり合えない世界を少しだけ繋ぐところ。音楽には、人が共に在る感覚を作る力を感じる。
現代社会は、特にインターネットによって、人々の「思考」や「指向」や「嗜好」をかなり極端な方向に持って行っていると思う。インターネットが広告のビジネスモデルである限り、その傾向は続くと思うし、そのことで人が分断されていくことが少しだけ寂しい。そういったことでイデオロギーがぶつかることで争いが起きるのは本当に避けたい。
でも、リアルな空間として集まる場所が存在することで、予期せぬ遭遇があったりする。リアルな空間には、URL(すぐにアクセスできるユニークな住所)がないから、予期せぬ遭遇がある。インターネットは、好きな情報にすぐ辿り着けて便利だけど、僕はリアルな空間には意義があると思うし、僕たちを豊かにする何かがあると思う。不便性の中の益というか。だから、僕は、今後の人生で、In Real Experienceで、人が集まることに対して、何か貢献したい。リアルな経済も大切にしたいし、そういう場所を出来るだけなくしたくない。そこには意義があると思うから。

夜の量子性を考える

夜が持つ可能性は大きい。価値があるかないかで物事を考えるのはあまり好きじゃないけど、昼にはないなにかしらの価値が夜にはある。例えば、夜は曖昧だ。夜は大体許されるし、夜は、昼にはないエネルギーを人間に与える。夜に考えることや夜に話すことは、量子力学における電子の振る舞いのように、曖昧で、どっちを向いているのかも、どこにあるのかもわからない。その曖昧性が魅力の一つだ。まあ、それは置いておいて、夜、ナイトカルチャーは最高だ。夜の最高さについては、引き続き、友達と言語化していく。

創造的活動の灯火を消さない社会を作る

僕は、音楽や漫才もちょっとだけ続けている。プロにはなれていないが、それを続けていることが純粋に楽しい。創造的活動は楽しいことだから、何かを作りたいという創造的活動の灯火をできるだけ消さない社会が素敵だと思う。「音楽を作ること」「音楽を楽しむこと」は、多くの人にとって、生きる意味になっていると思う。だから、創造的活動で、もっと経済が回れば、もっと素敵だと思う。それで、今は、インディペンデントアーティストを支える音楽ディストリビューター TuneCore Japan で働いている。僕は「何かを作りたいという創造性の灯火を消さない社会」を作りたい。

都市開発から集団の意思決定を考える

都市開発はよくわかってないし、正直くだらないなと思う自分もいる。デベロッパーが、くだらないマネーゲームのために、都市を入れ替えて、絶え間ない資本主義の経済を循環させていくだけの運動にも思える。たしかに、新しいものはいいし、綺麗なオフィスは最高なのはわかるけど、自分が慣れ親しんだ場所、街が取り壊されるのは寂しい。でも、それは僕の意見。例えば、自分が慣れ親しんでいない下北沢とかは、正直なんの思い出もないから、ふと訪れると「なんか綺麗になって良かったな」なんて思ってしまう。誰かにとって、大切な場所は、誰かにとって、大切な場所ではないことに気づく。その街を再開発するべきかどうかも、多数の人間の意思が集まって決定される。僕たちは、常にどちらのサイドにも立ちうるから、一概に都市開発がクソが!とも言えないのである。だから、僕は今後「意思決定」という行為について、もっと言えば、「集団における良い選択行為」について考え続けたい。

最後に

人は他人に影響を与え、他人から影響を受けて生きていく。その影響が誰かの人生を大きく変えることがあるし、そんな化学反応が起こる場所を少しでも支えられて、非常に光栄に思う。そんな場所が、VISIONだったし、そんな場所を支えたすべての人たちに感謝の思いでいっぱいだ。

リアルな場所や音楽が、「共に存在すること」「わからないこと」「孤独であること」に対して、もたらす意義を信じている。だから、これからも、音楽やリアルな場所を支えて行きたい。

夏目漱石も「この生きづらい世の中を作ったのは、三軒両隣にちらちらするただの人」って言っていたし、未来は作って行けるし、行こう。
僕にとって、VISIONは、未来を作る場所でした。ありがとうございました。

5-8周年あたりのVISIONを支えたメンバー


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