会社設立・初めて従業員を雇用するときの社会保険・人事労務の手続きについて #2
知人から独立して会社を立ち上げるという話を聞き、前回は 法人設立 ~ 初めて従業員を雇用する にあたっての手続きなどをまとめました。
今回はその続きで、立ち上げた会社が成長し、従業員数が増えてきたときに必要な手続きをまとめます。
1.従業員が10人以上になったら 就業規則 の届出が必要です
社員・パート・アルバイト等にかかわらず、従業員が10人になったら 就業規則 についての届出を行う必要があります。
就業規則 という名前は聞いたことがある方も多いと思います。しかし、実際に中身まで読んだことがある方は少ないかもしれません。会社によっては 人事・給与規程 などと呼ぶところもあります。
就業規則 とは、給与や勤務時間などの労働条件や、職場の規律などを定めて文書にしたものです。この文書には必ず記載しなければならない項目が、労働基準法で定められてます。また記載がない場合、原則 転勤命令や懲戒処分を行うことができません。就業規則は 会社にとっても 従業員にとっても重要な文書であるとご認識ください。
ではこの文書に記載する 労働条件 や 職場の規律 は、どのように作成すればよいか、悩んでしまうところもあるかと思います。
参考になるのは、厚生労働省のWebにある モデル就業規則 です。現時点では 令和5年7月の改定版が公開されており、70項目(第1条~第70条)について、例文とその解説が記載されています。
しかし就業規則の作成、あるいは変更については、社会保険労務士など専門家に相談するのが一番です。ご自身の会社、雇用する従業員の方たちにとって何が必要か、そんな観点で 相談を依頼されると良いのではないでしょうか。
なお、就業規則についての届出義務は10人以上ですが、文書の作成自体は1人からでも始めることは問題ありません。
[必要な手続き:従業員が10人になったら]
● 就業規則に関する届出(届出先:労働基準監督署)
・「就業規則届」に次の書類を添付して提出します
添付1:就業規則(会社で定めた文書のコピー)
添付2:意見書(労働者代表などの意見を記載したもの)
2.従業員が50人以上になったら 産業医・衛生管理者の選任 が必要です
会社が成長し従業員が50人以上になると、人事労務に関する社内手続きが大きく増加します。この規模になると専任の人事担当もいると考えられますが、その担当者の業務量が増加することになるため、あらかじめ負担増加にどのように対応するかを検討しておくことも必要です。
働く人たちに関する法律には、労働基準法の他に 労働安全衛生法 というものがあります。労働災害防止など労働者の安全・健康を確保するためのルールや基準が定められており、従業員50人以上の会社は、この定めに従って様々な対応をする必要があります。
特に重要なのは 衛生管理者と産業医の確保です。衛生管理者は 従業員が試験に合格する必要があり、候補者に対して学習時間の確保が必要です。毎月各地で試験が開催されてはいますが、早めに社内準備をする方が良いと考えられます。
また産業医は 病院等で勤務する医師と個別契約をする必要がありますが、どういったルートで契約先を見つけるかが問題になります。産業医を紹介するサービスがあったり、地域の医師会で相談できる場合もあるようです。当然、契約費用もかかるので、あらかじめ予算を含めた準備が必要です。
[必要な手続き:従業員が50人になったら]
● 安全衛生に関する届出(届出先:労働基準監督署)
・「衛生管理者選任報告」で 選任について届出をします(14日以内)
・「産業医選任報告」で 医師の選任について届出します(14日以内)
※ 製造業・建設業 他 一定の業種では「安全管理者選任報告」で 安全管理者の届出が必要な場合があります
終わりに
従業員が50人以上になると、定期健康診断の結果報告や、ストレスチェックの実施・結果報告 等も義務付けられています。
特にストレスチェックは、メンタルヘルスとも関連する機微な個人情報を取り扱うこととなるため、その実施方法には非常に注意が必要です。人事労務担当者の業務の負荷は、思っている以上に増えることにもなります。
私自身の経験も踏まえると、会社が成長するにつれて、人事労務を担当する社員の育成・教育といった点も、重要な課題の一つであると考えていただけると幸いです。
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