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ベーシックインカムについて考えてみた その2

今回はベーシックインカムに対して反対意見の「労働意欲の低下」および「財源確保の問題」について述べていく。ちなみに、ベーシックインカムの基本的な考え方はこちらの記事を参照していただけると幸い。

労働意欲を失うという問題

ベーシックインカムの話になると、真っ先にあがるのが、労働意欲の低下を心配する声だ。労働しなくてもお金がもらえて生活が営めるならば、多くの人が働かなくなるのではないかという声である。

確かに30万円ほどの金額が入ってくるならばそういった人々が大量に出てくるかもしれないが、ベーシックインカムの主流は多くても7万円ほどなので、きっぱり働かなくなる人は少ないと予想する。

たとえば、ベーシックインカムを株式投資の配当金になぞらえると考えやすくなる。仮に株の配当が月5万円(年間60万円)もらえたとしても、この金額が仕事を辞めるインセンティブにはならない。むしろ生活や気持ちに余裕ができるので、労働効率は上がる。

したがって「お金を支給される」というよりも「配当金を受け取る」という言葉にするほうがベーシックインカムの概念にしっくりくるのだ。

米国民主党の候補者だったAndrew Yang氏の核となる政策はベーシックインカムであっだったが、彼がひたすら「Freedom Dividend」と言っていたのはこれが理由だ。

株主が「株を保有する」対価として「配当金」をもらうように、国民が「市民権を保有する」対価として「配当金」をもらえるということだ。

他にも、選挙に行くたびに「配当金」がもらえる仕組みなんてのも面白いかもしれない。この方が、お金を貰う対価が顕著である上、投票率も上がるので、一石二鳥だ。

前回の記事で紹介したフィンランドでのベーシックインカムの実験では、労働意欲が低下するという報告もなかった。

よって、労働意欲の低下を心配する意見は、ベーシックインカムを取りやめる理由には少し弱いのである。

財源が不足するという問題

さて、もう一つの懸念点は財源についてである。多額のお金が必要になるので実現できないという意見。確かにベーシックインカムの導入には少なくない財源の確保が必要とされる。

日本政府が、15歳以上(15歳の区切りだと統計データが取りやすいので)に限定して月に7万円を支給すると仮定する。

するとベーシックインカムには1億1,100万人が対象となる(総人口は1億2,653万人:総務省統計、速報値)ので、およそ年間で77.7兆円が必要になる。

平成30年度の政府の税収総額が65兆円ほど(国債発行分は除く)なので、全然足りてない。というわけで、ここは少し知恵を絞らなければならないのだが、すでに大勢の識者たちがベーシックインカム案を紹介しているので、今回はそれに乗っかる。

2ちゃんねる創設者ひろゆき氏によるベーシックインカム案
医療費全員3割負担:16兆円
生活保護費カット:4兆円
相続税1.5倍:3兆円 1兆円増
厚生年金と国民年金の支給額をベーシックインカムと同額にする:20.1兆円
固定資産税5.6%:25.5兆円
解雇規制を無くすことで法人税10.8兆円(2015年度)から倍に:10.8兆円増
たばこを1,320円にすることで:6.45兆円 4.3兆円増
パチンコ税35%:6.3兆円
現在の予算:88兆円

ひろゆき氏の案では、歳入の半分を注ぎ込んでいる社会保障費をベーシックインカムにまわすこと、プラス医療費の負担を国民に戻すことで、約40兆円の財源を確保している。目立ったものでいえば、固定資産税もある。

興味深いのは解雇規制の撤廃。企業が好きに解雇できるようになるので、力のある者だけを残すことができ、その結果企業は競争力を上げられる。

この解雇規制を解くことを人参にとして、法人税を上げるという考えだ。解雇される側には辛い状況であるが、ベーシックインカムがあるので、生きていくことはできる。

何よりも今の解雇規制がある状況であると、グローバル市場での企業力が多いに低下してしまい、巡り巡って自分たち国民のデメリットとなる。このおかげで派遣法も必要なくなるだろうし。

また、たばこやパチンコにもメスを入れている。こういった業界は政界への顔も広いので簡単ではないだろうが、実現すればかなりの税収アップになる。

ここでのポイントは、消費増税のように国民全体に負担をかけずとも、知恵を絞れば税収は確保できるということ。

さらには、ベーシックインカムで国民の所得が増えると、消費も必然的に増える。それが政府の財布に税収として入ってくるので、純粋に77兆円準備する必要もないかもしれない。

いずれにせよ、ベーシックインカムは「夢」のようにフワフワしている考えではなく、実現する意思・知恵・度胸があれば叶えられる政策なのである。

AIの時代に備えて

ベーシックインカムの財源確保についてはもっと考える余地があると思うが、超非現実な政策ではないし、個人的には大賛成である。

というのも前回の投稿で述べた通り、グローバルに経済が繋がったゆえ、AI x ロボットが労働市場に進出してくる大きな波には逆らえないからだ。

そのときに職を失うのが、20代や30代の青年の場合は、自己投資をしたり職業訓練を経て、市場に対して価値のある存在となり、新たな職場で活躍することができるかもしれない。

しかしながら、たとえば50歳高卒で勉強嫌いのおじさんが、政府主導の職業訓練を受けてバリバリのプログラマーになるという確率は、ベーシックインカムを実現させるより少ないと言わざるを得ない。

テクノロジーは進歩し、大半の人々が職を失う時代は確実に来る。だったら来る時代に備えて、今から準備していく必要があるのではないだろうか。

桜の問題であったりアベノマスクにやいやい言うのではなく、右派・左派、メディア・国民も関係なしに、未来を視て仕組みを変えていければな、なんて思います。


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