ファクトチェックの効用:その③ 大規模実験の結果

近年、ファクトチェックの効果を測定するために大規模な実験が行われました。ジョージワシントン大学のPorter准教授とオハイオ州立大学のWood助教授は、2020年9月から10月にかけて、アルゼンチン、ナイジェリア、南アフリカ、イギリスの被験者を対象に実験を行いました[1]

これまでのファクトチェックに関する研究は、ほとんどがアメリカで行われたものだったので、人種、経済、政治的に多様だけれども、IFCNが認証しているファクトチェック機関が存在しているこの4か国を選びました。合計28の実験を行い、22の異なるファクトチェックを評価しました。いずれの実験でも、被験者(各国でそれぞれ約2000人)は、フェイクニュースに曝されるグループ、フェイクニュースの後にファクトチェックを読むグループ、何も読まない統制グループの三グループに分けられました。

ファクトチェックは、各国のファクトチェック機関が作成したファクトチェックを用いました。ファクトチェックのトピックは、コロナ関連と地球温暖化というグローバルなトピックを含み、その他各国固有の事情を踏まえて、地方政治、犯罪、経済等の幅広いトピックが設定されました。

最後に被験者は、ニュースに関連する事実関係について、正確さを5段階で評価するよう質問されました。実験の結果、ファクトチェックを読んだ被験者は、5段階で平均0.59ポイント事実の正確さの認識を向上させました。ファクトチェックは効果があったのです。

さらに、ファクトチェックによる事実認識の正確さの向上は持続的で、ほとんどの実験では、ファクトチェックを読んだ後2週間以上経過しても効果が検出可能でした。確かに、一部のイデオロギーを持ったグループでは効果は検出されませんでしたが、バックファイア効果も見られなかったとのことです。共著者のWood助教授は、「ファクトチェックは強力なツールなのです」と述べています[2]



[1] Porter E., Wood T.J.(2021). The global effectiveness of fact-checking: Evidence from simultaneous experiments in Argentina, Nigeria, South Africa, and the United Kingdom, Proceedings of the National Academy of Sciences, 118 (37), 10.1073/pnas.2104235118

[2] https://news.osu.edu/fact-checking-works-across-the-globe-to-correct-misinformation/


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