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毛玉
2023年5月23日 23:25
月も雲もひとつもなくても、それでも空に向かって歌う毎日。僕はそれで空が微笑んでくれる気がしてその時間が好きだった。それだけだった。でもある日僕は突然に声に力がなくなって、声を出すだけで咳が止まらなくなった。歌いたい。あのワンフレーズだけでも、と思ったとしても、その短い1小節ですら気持ちよく歌えない。だんだんと咳の回数が増えるたび、喉の奥で血の味がした。それはまるで