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【シベリア鉄道紀行第①話】子どもの頃のときめき
たしか小学生のときだったであろうか。図書館の本棚に置いてあった一冊の本が私の心を釘付けにした。
「世界の列車大全」
本の題名は忘れたが、世界中を走る列車が載っていた本であることは覚えている。当時から鉄道が好きだったが、日本の鉄道しか知らなかった。そのため、見たことのない海外の列車に即座に引き込まれたのである。
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「うわー、いいなぁ!」
そんな憧れの気持ちを抱きながら、夢中になって眺めていると、とある列車が私に強烈なインパクトを与えた。
「大陸横断 3か国直通 シベリア鉄道 モスクワー北京」
あまりものスケールの大きさに圧倒される。
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この列車は、ロシアのモスクワからシベリアを横断し、モンゴルを経由して終着、北京まで3か国を走破する列車である。
あの広大なユーラシア大陸を鉄道で走破し、乗車時間はなんと約130時間。日本では考えられない規格外のこの列車は私の憧れの的となった。
「あぁ、いつか絶対に乗ってみたい!!」
そのように強く思ったが、当時の私は小学生。ましてや、インターネットもまだそこまで発達していなかった時代。私はその大陸横断列車の乗り方について、自分で調べる術などなかったのである。乗りたいという強い願望が湧いてくる反面、
「自分がシベリア鉄道なんて乗れるわけないよ。」
このような諦めの気持ちも強かった。私には無理だ、と思い続けていると、次第にこの列車については考えなくなる。
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2017年、私は21歳、大学3年生になった。
大学生活もそこそこうまくいき、単位を1つも落とさずに卒業できる、と思ったが、就職活動で完全につまずいた。昔から抱いていた自分自身に対する劣等感が湧き出てきて、自己分析や面接、エントリーシート、これらに全く手を付けることができない。自分の無力感や自己嫌悪に完全にやられた私は、精神がおかしくなり、大学を休学する決断をした。
精神がボロボロになった私は、実家の近所にある精神科に通い、カウンセリングや集団療法を受けることとなった。しかし、そこの心療内科の先生、スタッフは、なぜかわらからないが泥臭いの昭和の体育会系。毎日のように叱責されたり、嫌みや軽蔑の言葉をかけられる日々が続く。精神科に通って精神が病むことなんて想像もしていなかった。本当に運が悪い。
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病院に通うために自転車に乗っていたある日、車輪に道端の木の枝が絡まり、顔面から転倒し、前歯3本を負傷する。しかし、診療内科の人は自分が転んだことに対してさらに叱責をしてきた。
「転んだのは不可抗力だけど、それもあなたの自己責任だからね!」
そのようなとんちんかんなお叱りを病院の先生から受けた私は、とうとう我慢の限界がきて、その病院に通うことをやめたのである。
就職活動の苦難と、古臭い体育会系な精神科により、完全に生きる気力を失った私は、精神はボロボロになり、自暴自棄になる。
「あー、もうどうでもいい。自分なんてこの世にいらない存在だ!!」
同年代の人は、すでに就職をし、新たな人生のステージに進んでいる。対して私は実家でどうしようもない生活をしている。自分の存在価値などない、と毎日のように思っていた。
そんな中、ある日、私はこの動画を目にする。
これは有名な鉄道系YouTuber、スーツさんの動画である。動画の内容を端的に言うと、「自殺する勇気があるならば、もっとできることはあるだろう。」という内容だ。
「確かにそうだよなぁ。」と思った私は、現状、何ができるかを考え始めた。すぐには見つからなかったが、この動画を投稿していたスーツさんがシベリア鉄道の旅をしているのを偶然目にする。
その時、私に稲妻のような激震が走った。
「シベリア鉄道、これだ!」
私が小学生の頃、シベリア鉄道に強い憧れを抱いていた記憶がふっとよみがえってくる。
「そうだ、ずっとシベリア鉄道に乗りたいって思ってたんだ!」
スーツさんの動画のおかげで、私の心は少し明るい気持ちになった。
「自殺するくらいだったら、憧れていたシベリア鉄道にまず乗りにいこう!」
そのように思った私は、即座にインターネットでシベリア鉄道に乗る方法について調べ始めた。幸運なことに、私たちはインターネットが普及した便利な時代を生きている。そのため、日本の自宅から、シベリア鉄道のきっぷを簡単に買うことができた。通常ならば、いきなり海外のサイトからクレジットカードで支払いをすることに対してためらっていたと思うが、その時の私はそんな心配事などを、全くいとわない。
「乗りたい!絶対に乗りたい!」
この気持ちに身を任せて、モスクワー北京の列車のチケット(7万円)、と航空券、ホテルの予約、ビザを取得し、旅の準備を始めた。
【第②話に進む】
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