超満員の観客と共に味わった悔しさ<ファジアーノ岡山VS横浜FC>

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シティライトスタジアムで行われる今季最後の試合となった横浜FC戦。昇格PO圏内に浮上する可能性を残していたことに加え、”ファンタジスタ”中村俊輔や今季で引退する元岡山”隊長”こと田所諒を一目見ようと17,288人(スタジアム歴代2位の観客動員数)が会場に足を運んだ。

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試合結果

明治安田生命J2リーグ第41節
ファジアーノ岡山 0-1 横浜FC

<選手交代>

後半16分 MF三村真→MF仲間隼斗(ファジアーノ岡山)
後半30分 FW赤嶺真吾→FW山本大貴(ファジアーノ岡山)
後半34分 MF中山克広→FW斉藤光毅(横浜FC)
後半39分 MF中村俊輔→DF田代真一(横浜FC)
後半47分 MF齋藤功佑→DF田所諒(横浜FC)


<スタメン>

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前節の金沢戦からの変更はMF武田将平からMF喜山康平の一か所のみ。シーズンを通して攻撃を牽引してきたMF仲間隼斗は控えに回ったが、起爆剤になれるか。

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 対する横浜FCは前節の徳島戦からのスタメン変更はなし。“稀代のファンタジスタ”MF中村俊輔や代表歴のあるFW皆川佑介、特別指定選手として最多の5ゴールを決めているMF松尾佑介らがスタメンに名を連ねた。元日本代表MF松井大輔や、7シーズン岡山でプレーし、今季限りでの引退を発表したDF田所諒らはベンチスタートに。


無効化されたファジアーノ岡山の前プレスと攻略された左サイド

 昇格プレーオフ圏内に入るためには勝点3が絶対条件であるファジアーノ岡山(以下岡山)と自動昇格圏内の2位をキープしたい横浜FC(以下横浜)との負けられない一戦が幕を開けた。
 開始早々からアウェイの横浜がボールを握る展開が続く。横浜FCは低い位置から丁寧にパスを繋ぎ、岡山ゴールへ前進を図ってきた。それに対して、岡山は得意とする「前からの連動した守備」をしていくと思われた。しかし、前からの守備は機能しなかった。その要因は横浜が岡山の前プレスに対して数的優位をうまく作ることができたことにある。岡山の2トップから始まる前プレスに対してDFカルピンヨンアピンとDF伊野波雅彦の間にボランチであるMF佐藤謙介やMF中村が下がることで、横浜が2対3の数的優位を生み出した。これによって、本来中のコースを切ってSBに誘導する岡山のプレスをかわし、CB→ボランチ→CBの経路で逆サイドのサイドバックに展開するシーンが多くみられた。

 また横浜のビルドアップは岡山の2トップを困らせるだけでなく、特に岡山の左サイドをほとんど攻略していた。

 横浜の右SB北爪健吾が岡山の左サイドハーフ三村真の外側の高い位置を取る。MF三村は規則として中央を閉めることから守備を始める。なぜなら縦のパスコースを切るためだ。対面するSBにパスが通っても、スライドして自分のラインより前でボールを受けられることに関しては良い守備ができているといえる。しかし、この試合ではそのラインを突破される格好でSBにボールを持たれてしまった。横浜のボール保持時、DF北爪は一貫して岡山MF三村の脇のポジションを取り続けた。そこへ苦し紛れではないしっかりとしたパスが通るため、横浜DF北爪・MF中山克広のコンビに対して岡山DF廣木雄磨・MF三村は後手を踏む形になってしまった。


ミスが失点に直結

 前半23分、前述したように1列下がったMF佐藤が高い位置を取るDF北爪へ一気にロングパス。これをDF廣木がインターセプト、と思いきやコントロールミスをしてしまう。これをDF北爪が拾い、入れ替わり、ゴール方向へドリブルを開始。中へ切れ込むことでPA内にいた岡山DF3枚を引き付けることに成功。そして左サイド斜め45度、フリーで待っていたMF松尾にパスが通ると冷静にゴールに流し込まれ、ゴールを献上した。

 この失点シーンで触れなければならないのは2点。ひとつはきっかけになってしまったDF廣木のコントロールミスだ。右SB北爪が岡山の最終ラインとほぼ同じくらい高いポジションを取っていたためインターセプトできれば、攻守が一気にひっくり返り大きなチャンスになる。相手にボールを握られ、耐える時間が続いていた岡山の選手の頭の中にはよぎったことだろう。インターセプトをして、マイボールにすることで得意のカウンターを発動できたら理想的だ。しかし、それはできなかった。それどころか失点を許してしまったのだ。結果論になってしまうが、ミスをしなければ、映像を見返せばわかるようにDF廣木の前にはMF三村がフリーだった。もちろんパスコースもある。少しアバウトでもよいから、ワンタッチで前方につけるべきだった。
 もうひとつはPA内での対応だ。DF北爪に入れ替わられたことは仕方ないとして岡山DFの3人が誰もボールにアタックできなかったということだ。最初に対峙したDFチェ・ジョンウォンがアプローチをかけるが、簡単に中央に運ばれる。中のコースを切り、縦に誘導していれば、自ゴールから遠ざけることができるかつ、味方が下がってくる時間をつくることができたのではないか。3対3の数的同数だったが、DFチェがかわされ、一気に2対3の数的不利になってしまう。ボールを持つDF北爪の選択肢はシュートを撃つ、右斜めへ動き出したFW皆川へパス、左方向のMF松尾へパスの3つだ。いわゆる何でもできる状況のDF北爪に対して、DF後藤圭太は突っ込み簡単にかわされ、DF増谷幸祐には防ぐチャンスさえなかった。

 このケースから、サッカーはミスが失点に直結するスポーツだということ、ゴール前というとてもデリケートなエリアでは慌てず、冷静にプレーしなければならないということを再確認できた。しかし、サッカーは足でやるスポーツ。手ほど器用ではないのでミスは必ず起こるものだ。チームメイトのミスをいかにカバーすることができるか、サッカー選手に欠かせない能力だと痛感した。


クロス攻撃を徹底するも遠かったゴール

 失点を許した岡山だったが、昇格という夢に向かってあきらめない。失点に関与してしまった左サイドが奮起する。
 後半4分、DF廣木が大外のレーンの高い位置を取りMF三村がひとつ内側のレーンでSBを引っ張り、スペースを作る。そこへMF喜山康平がパスを出すとそれをMF三村は開けたスペースへフリック、そのスペースに走り込んだDF廣木がセンタリングを送るとゴール前で待っていたFW赤嶺真吾がシュートを放つ。左足でしっかりとらえたシュートはポストに嫌われた。

 続いて後半5分、左サイドからのコーナーキック。MF上田康太のキックにFW赤嶺がヘディングシュートを枠に飛ばすが、横浜GK南雄太のファインセーブによって防がれてしまった。
 ラストチャンスは後半43分。MF上田からのアーリークロスをFWイ・ヨンジェが合わせるが、またまたポストに跳ね返る。運にも見放されてしまった岡山は、同点に追いつくことはできなかった。
 後半は前からのプレスを改善し、セカンドボールを拾うことでアグレッシブに攻めるものの、1点が遠かったファジアーノ岡山。ホーム最終節を勝利で飾ることはできなかった。



最後に

 昇格の可能性を事実上なくしたファジアーノ岡山だが前を向くしかない。夢であるJ1への道は途絶えてしまったが悲観しすぎることはない。有馬賢二監督が就任し、慣れ親しんだ3-4-3から4-4-2にシステムを変えて望んだ今シーズン。開幕前は残留が御の字という声は少なくなかった。しかし、シーズンを通して降格を一度も考えないどころか新体制1年目にもかかわらず昇格できるかもという期待を抱かせてくれた。終盤はけが人が続出し、失速したのかもしれないが、来シーズンの有馬ファジに対する期待で胸がいっぱいだ。2019明治安田生命J2リーグの最終節である水戸戦は残念ながらアウェイだ。スタジアムに行けなくても、テレビの前で、スマホの前で応援しようじゃないか。きっとその想いは選手たちに届くはずだ。



㎰.田所諒選手11年間お疲れ様でした。

 J2初年度の2009年から7シーズンにわたり、豊富な運動量で左サイドを走り、一生懸命プレーする姿は夢や希望をたくさんもたらしてくれました。まさにクラブ理念である「子供たちに夢を!」を体現した選手でした。個人的には小学生だった頃サイドバックにコンバートされ、どんなプレーをすればよいのかをお手本にしていました。本当にお疲れ様でした。

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