元採用部長から新卒採用担当者へー1、採用すべき人材とは

例年は、企業の新卒採用担当者がやっと一息つける時期ですが、
今年は多くの企業で引き続き採用活動を続けらてているようですので、
まだまだお忙しくされている方が多いのではないでしょうか。

そして、この夏が終わればすぐに翌年度の採用の準備が始まります。
就職活動は1年でおわりますが、採用担当者は、内定から入社までのケアもあるので、1年中それも切れ目なく永遠と採用活動をしている状況です。
本当に大変な仕事ですが、それでも多くの方が熱意をもって採用業務をされているといつも感じており、素晴らしいことだと思っています。

その新卒採用ですが、”採用すべき人材”について社内議論され合意が取れていらっしゃいますでしょうか?

これまでに50社近い採用担当の方に伺いましたが、ほとんどの会社でそれが議論され合意をとることがなされていない状況とのことでした。

そんなの”良い学生”にきまっている
自分の中では判断基準がある
人材像については経営から指示される

こうした答えをいただくことが多いように思います。
しかし、これではあまりにも不十分です。

”良い学生”とはいったいどういった学生なのでしょうか?
何が、何のために、良いのでしょうか?
会社は存続し発展することで、社会にからその存在意義を認められます。
採用すべき人材は、その”存続と発展”に寄与することが求められます。
それは学生として”良い”といいうことはイコールなのでしょうか。

例えば、私が法人営業を新卒採用で採用したときのことです。
その会社では、応募学生に対して基礎能力とパーソナリティを見るためのアセスメントテストを受けていただいていて、その項目の一つに”ひとあたりの良さ”という項目がありました。
営業は対人能力が高いほうがよいので、当然”ひとあたり”のスコアも高いほうが良いと考えられていました。
ところが、実際に社内を見回して営業として成功している社員をみると、とても”ひとあたり”が良いとは言えない方たちばかりです。
改めて、そうした成功している営業の人のテストの結果を確認し、”ひとあたり”のスコアが高いことの意味をテストの開発会社に確認をしてみました。

結果、その会社の営業職では”ひとあたり”のスコアが低い方がより適正があるということが論理的に解明されたのです。

”ひとあたり”が良いというのは、相手の意見や立場を尊重する傾向が強い、つまり自分の意見が相手の意見と会わないときに譲ってしまう傾向が強い、ということであると開発者が解説してくれました。
その会社の商品は非常に高価で、金額的にもその効果についても、購入した会社の経営におおきな影響を与えます。そうした商品を売るときには、営業はその商品が確かにそのお客様にとって良いものである、という考えを強くもつことが重要です。

お客様が、”いやそんな高価なものは難しい”とか、”いまはまだ早すぎる”、”いまのままで十分”といった意見を持たれているときに、”たしかにそうですね”と営業が言ってしまうと、商談はそれで終わりです。
成功している営業はそうしたときに、”会社の経営の将来を考えて”、”会社をよりよくすることができる”、”費用対効果の高さ”などをしっかり説明(ときには言いすぎてお客様に疎まれたりしたようですが)していたようでした。

最終的には、その営業の言うことを正しいと判断し、お客様が真剣に考え、購入をしてくださいます。そして、そうした営業のほうがお客様からの信頼も厚く評価が高いのです。

”自分の中での判断基準”というのもよくないと思います。
(別で説明しますが本当はとても大切で重要です)
というのも、雇用するのは会社であるという当たり前の理由と、それが共有されていないことが問題だと思います。

一人ですべての面接プロセスを行うことはできません。
当然に他の社員の方々のお力をかりなければなりません。
自分だけの判断基準をいくら協力してくれる社員に説明したとしても、
そこに納得感がなければ、実際の選考ではその基準には従ってくれません。

”経営層からの指示”というのもあまりよろしくありません。
経営の方々はとても忙しく、多くの案件をかかえておりますので、
新卒で”採用すべき人材”について真剣に考える時間がほとんどない、
という単純な理由です。

よくあるのが、”これからのGlobal化に向けて英語のできる人材”、”同じような新卒社員ばかりなのでユニークな個性を持つ人材”という指示です。
これはこれであいまいなのですが、これこそが真剣に考えていないことの現れとも言えます。

私はそうした人材が不要である、といっているわけではありません。
確かに必要なのだと思います。
が、問題はそれを受け入れる会社が本当にそれを望んでいるのか、
その準備ができているのか、ということです。

”私達は日本のマーケットで十分にうまくやってきた。今後は世界にもそれを発信しようとしている。そのために英語の人材が必要だ。”

もっともなことかもしれませんが、新卒採用では非常に危険な考え方であると思います。

”今後は”、”しようとしている”という言葉は、”今はやっていない”ということと同じ意味です。
英語ができる人材というのは、他の学生に比べて多様な考え方を持ち、
また英語を使って仕事をしたいと強く考えています。
英語は使わないと使えなくなってしまい、それまでの努力が無駄になってしまうからです。

ところが、上記の説明をする会社に入社すると英語の環境など皆無で、
ショックを受け目の前の仕事さえやる気をなくしてしまいます。
英語を使った仕事をしたい、と申し出れば”わがままだ”と言われるます。

その結果、採用した企業は”英語はできるらしいが仕事はできない。やっぱりこういう学生はうまくいかない。”といった判断をするようになってしまいます。これは企業と、特に学生にとって、とても不幸なことです。

”ユニークな個性”も同様です。
多くの会社は、意識することなく同質化を求めます。
とくに中途採用ではなく、新卒採用がメインの企業はなおさらです。
そこに企業にとって異質な”ユニークな個性”がはいったとしても、
同質化するか、はじかれるか、どちらかになってしまうことが多いのです。
これも双方にとってとても不幸なことです。

”議論して合意する”というのは、こうしたことも考慮して行われるべきことが期待されます。
会社の現在と将来を考え、どういったコンピテンシーやパーソナリティが必要で、どういった環境で育てようとするのか。

全てに結論を出す必要はありませんが、きちんと議論することが重要です。

この”採用すべき人材”の定義が生まれてこそ、Promotionの方法や
メッセージ、面接方法と内容、評価基準等の計画を立てることができます。

まずは、自分の同期とその前後の世代を見てみてください。
いきいきと働き、高い成果をだしているのは、どんな社員でしょうか?
そうした社員と話をすることができれば、”採用すべき人材”に近づくことができるかもしれません。

採用は経営に影響を与える仕事で、人事の他の機能と比較すると
そのインパクトは直接的で非常に大きなものになります。
一定レベルの数を確保することも重要ですが、やはり採用される一人ひとりがどういった人材なのか、ということはより重要だと思います。

人材は活躍してこそ、採用の意味があります。

皆様の検討をお祈りしております。

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