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制作会社出身デザイナーが感じた、事業会社で必要なデザインする力

こんにちは。ユーザベースのSaaS Design DivisionでBXデザイナーをしている伊藤です。

自分は今年の2月にユーザベースに入社するまで、キャリアをずっと制作会社で過ごしてきました。今回のnoteでは、そんな自分が、普段ユーザベースという事業会社で働く上で必要だと感じた「デザインする力」について、制作会社との違いも念頭に踏まえつつ紹介していきたいと思います。事業会社のデザイナーに興味がある方のヒントになれば幸いです。


事業会社で必要なデザインする力

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自分が普段意識しているポイントをまとめると、上図のような「7つのデザインする力」が必要になると感じています。

左側が自己視点で意識していること。右側が他者視点で意識していること。それらの全てに関係するのが中央の部分というイメージです。もちろんこの観点が制作会社ではいらないのかというと、そういうことではないのですが、ユーザベースで働いていく上で、以前より意識するようになったのは明らかです。

以下、それぞれのポイントについて解説していきましょう!


1:隙をデザインする力

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事業の隙や余白に気づき、それをデザインする

制作会社では、クライアントから支給される情報、ヒアリングして得られる情報といった、会社の外から得られる表向きの情報しか得られない場合が多いと思います。一方、事業会社では、常に新しい情報やビジネスサイドのリアルな声など、会社の中から生の情報を得られる機会が多くあります。その際に、デザイナーが自身で踏み込めそうな領域や、整理されていないポイントといった「隙」や「余白」に気づき、そこを積極的にデザインで解決していくという姿勢が求められていると思います。

隙の対象として、会社や事業といった規模の大きいものは、入社4ヶ月時点の現状だとなかなか捉え切るのは難しいですが、まず現時点では、プロジェクト・制作物単位の視野で、デザインで解決できる隙がないかを、俯瞰して眺めるようにしています。例えばですが、営業資料の作り方で工夫できる点はないか、オンラインイベントの参加者にちゃんとデザインされたメッセージカードを送ることはできないか、といったように自分のできる範囲の隙が残されていないかを、探すようにしています。

このような隙に気づきデザインで解決することが、社内でデザインやデザイナーの価値を高めることにつながるのではないでしょうか。


2:意味をデザインする力

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今ある仕事に自分なりの意味を見出す

制作会社は受託仕事ということもあり、常にクライアントからの依頼に追われ、金額が大きいからやっている、金額が少ないけど得意先だからやる、というように、なぜこの仕事をやっているのか、あんまり考えることはなかったような気がします。

事業会社では、「なぜ今この仕事をやるのか」「これをやることで、事業にとってどんなことが起きるのか」といった自分なりの意味づけを考えることで、今ある仕事を自分ごと化でき、ただのタスクとなることを回避できると思います。

もちろんこの意味の解像度やベクトルは人それぞれで正解はないので、その人の状況にあわせたもので構わないと思います。例えばですが、「この仕事をすることによって施策にインパクトを与えることができる」といった事業視点の意味づけをしてもいいし、「この仕事をすることによって、事業に関わってる人みんなをハッピーにできる」といった他者視点の意味づけをしてもいいし、「この仕事をすることによって、新しいデザインテクニックを身につけられる」といった個人のスキル視点の意味づけをしてもいいと思います。

大事なのは、その自分なりの「なぜやるのか」の意味をポジティブに捉え、内発的動機として、うまく仕事が進められる推進力になっているかどうかだと思います。


3:表現をデザインする力

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造形としての表現を追求する

制作会社のメリットの一つとして、様々な業種のクライアントがいることで、幅広いデザインに挑戦する機会が多いことが挙げられます。かっこいいデザインからポップなデザイン、シンプルなデザインから派手なデザイン、といったように自分のデザインの幅を広げられることができると思います。

一方、事業会社では一つのプロダクト・ブランドに伴走し、育て上げていくことで、その世界観にあったデザインについて深く表現を追求していくことができます。自分は入社前までは「事業会社のデザイン=決まった表現しかできない」と思っていましたが、ある程度ブランドのデザインをしていく中で、この考えは違うなということに気づきました。

というのも、ブランドの世界観によって、デザインに関しての一定の方向付けはされているものの、その制限された方向の中でいかにデザイン表現を追求・変化していけるかと試行錯誤するなかで、ある程度は自由にデザインにトライできるということに気づいたからです。世の中のデザインを眺めている時も、「この表現なら担当しているブランドの世界観にあうかもしれない」といったように表現の引き出しにインプットし、仕事で実際に試してみるというサイクルができてきました。このような表現の追求が事業会社でデザインをしていく上での面白さの一つだと思います。

そのためには、常に自分たちの事業がどうしていきたいかという「中からの視点」を意識しつつ、競合や業界、社会の動き、デザインのトレンドといった「外からの視点」にも意識をすることで、今そしてこれから、担当しているブランドはどういうあり方でどういう見せ方でいけばいいのかを考え、デザインを柔軟に変化・進化させていくことが、重要になってくると思います。


4:周囲をデザインする力

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プロジェクトに関係者を巻き込む

制作会社は、言うまでもなくクライアント→制作会社といった主従関係になっています。もちろん関係性によっては、クライアント⇆制作会社という対等なパートナー関係を築けることもありますが、基本的にはクライアントは「お客様」です。その関係性によってなかなかプロジェクトがうまく進行できなかったり、こちらの意図が伝わっていなかったりなどの、コミュニケーションに起因する問題が発生しがちだと思います。

事業会社では、その仕事に関わっている関係者のほとんどは社内にいることで、気軽にSlackなどでコミュニケーションを取れる機会があります。このスピード感は事業会社ならではの特徴だと思います。そのコミュニケーションが取りやすいという前提の上で、関係者をプロジェクトにどう巻き込んでいけるかどうかが重要になってきます。

その一つの方法として、デザインリサーチの工程に、他のメンバーと関わるフェーズを組み込んでいくことは非常にオススメです。例えばですが、ロゴデザインのプロセスとして、事業メンバーがブランドに対してどのような印象を抱いているのか、アンケートを実施したり、営業資料をデザインする上で関係者に現状の資料の使い方などをインタビューをしたりといったことを行いました。またそのようなヒアリングだけでなく、ワークショップなどで、プロジェクトの関係者の感性や言語化できない思考などを吸収する仕組みもぜひ取り入れたいところです。

つまり、デザイナーが解決する課題をデザイナーだけで終わらせないフローを組み込むことで、多角的な視野を持つことができ、様々なメンバーがデザインに関与するような環境を構築できることでしょう。


5:景色をデザインする力

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他者を理解し、尊敬する

制作会社の場合、同じ会社に所属する人の多くはクリエイティブ職、ビジネスサイドの人でもある程度デザインに関する知識を持っていることが多いと思います。そこにはある程度共通化された価値観やクリエイティブに関する考えなどがあると思います。

事業会社では非デザイナーの方が圧倒的に多いです。つまりデザイナー以外と会話する機会が多くあり、デザイナーにとっては当たり前の共通言語も通用しないため、デザインの意味やデザインの価値を分かりやすく翻訳・説明していくコミュニケーションが求められます。

特にユーザベースは、職種や経歴、志向や価値観もバラバラでとても個性的な集団です。ユーザベースが掲げている7Valuesで「異能は才能」というバリューがあるのですが、これは入社後に一番実感し、かつ一番好きになったバリューです。

もともと個人的には「一人一人個性があり、違いがあるのは当然だ」という考えは持っていたのですが、それは単純に「みんな違ってそれでいい」というところで終わっていたと思います。大事なのは「それでいい」ことを受け入れ、どう歩み寄っていくか、対話していくことです。

事業をより良い方向に進めるため、今取り組んでいるプロジェクトを進めるために、お互いの考えていること、つまり景色を理解し交換し合うことで、健全な自由闊達な議論ができるようになると思います。


6:学びをデザインする力

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チームで学びの機会を創出する

制作会社では会社のカルチャーとしてデザインに関するナレッジが溜まっていたり、様々な案件を大量にこなす中でデザインのスキルが向上していったりすると思います。

事業会社では、デザイナーとして手を動かすこと以外に時間を使うことが増え、デザインのことだけを考えればいいという時間は低下すると思います。またどうしても一つの事業に専念する中でデザインや考え方に偏りが生じやすくなるのは否めないと思います。

そのため、いかに限られた時間で、成長につながる学びの機会を創出するかが大事になってきます。自分たちのデザイン組織では同じBXデザイナー同士がお互いの知見をシェアし合う機会を定期的に設定していたり、各クオーターごとにデザイナーが自分の成果をポートフォリオにまとめて発表し合う機会が設けられているため、非常に学びに満ちています。

またユーザベースでは360度フィードバックというものがあり、デザイナーとしてのスキルだけでなく、同じ事業に向かうメンバーとしてどうだったかのか、率直な意見を聞ける機会があります。フィードバックの詳細については弊社CDO平野さんのnoteに記載がありますので、ぜひご参照ください。

このようなノウハウやデザインプロセスの共有、フィードバックを通して個人のスキルを高めあうことで、チームのデザインスキルを底上げすることが重要になると思います。


7:意思をデザインする力

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自分のWillを思い描き、実現に向かう

ここまで紹介してきた1〜6の全ての根底にあるのがこの「意思をデザインする力」です。会社に所属する中で、事業のこと、プロジェクトのこと、仲間のこと、成長のことなど、色んなことがありますが、そこにどう向き合うのか、どう向き合いたいのか、最終的には自分自身の意思が全てです。目の前の仕事や環境を最大化できるかどうかは自分次第です。

ユーザベースは個人がどうしたいのか、多くのシーンでWillを問われる会社です。その分、個人のWillが強ければ強いほど周囲の人はしっかりとついてきてくれる会社だと思います。

事業やプロジェクト、デザインに対する自分のWillをしっかりと意識し、自分なりのビジョンを思い描くことが全てに繋がっていくはずだと思います。そのためには、普段から目の前にある仕事だけに集中せずに、一度足を止めて日々の取り組みやこれからをしっかりと内省し、気持ちや考えを整理する時間が大切になってくると思います。


まとめ

今回のnoteを書きながら、これらの「デザインする力」について意識はしているものの、なかなかうまくできていなぁと再認識することができました。まだユーザベースに入社して4ヶ月時点で感じたことなので、しばらく経ったらまた違うことを感じているかもしれませんが、しばらくはこのポイントを改めて意識し、具体的な行動につなげていきたいと思います!

おわりに

自分が所属するユーザベース SaaS Design Divisionは「DESIGN BASE」という名で、日々様々なデザインに取り組んでいます。ぜひそんなDESIGN BASEの各メンバーが自由に書いたnoteをチェックしていただけると幸いです!

Cover Design: Kurumi Fujiwara

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