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淡い光の中で僕はシャッターを切る

夜が訪れ、街が静かに輝き始める頃、僕はスマホを手にして歩き出す。ミラーレス一眼も持っているが、スマホで手軽に写真撮れる利便性に慣れてしまうと「こっちで良いや」となってしまった。

帷が降りるこの時間帯、間接照明の淡い光が街全体に温かな雰囲気をもたらし、昼間とはまったく異なる顔を見せる。光と影が織りなす風景は、写真家にとって絶好の被写体となる。

ホテルの一室にて


街灯が石畳に落とす陰影、ビルの窓から漏れる淡い光、そして店のネオンが道路を彩る様子。これらの要素が一つに融合し、街はまるで生きているかのように変化し続ける。

特に間接照明は、被写体に柔らかい輪郭を与え、写真に深みをもたらす。それは、見る者にとって穏やかな安心感をもたらし、同時にどこか神秘的な雰囲気を醸し出す。

僕はシャッターを切るたびに、街の息づかいを感じる。

道端のベンチに腰かけるカップル、ペットと散歩を楽しむ老人、そして一日の疲れを癒すために帰宅するサラリーマン。

それぞれの瞬間が、私のスマホに収められていく。彼らの姿は、まるで一枚の絵画のように、静かにそして確実に街の物語を紡いでいるようだ。

街は常に動いている。日中の喧騒が収まり、夜の静寂が訪れる瞬間こそ、僕にとっての宝の時間だ。静まり返った街角に佇む古びた建物は、過去と現在が交錯する瞬間を語りかけてくる。古びた団地が土地の歴史を、窓辺に置かれた鉢植えの花々が見知らぬ住民の生活を、そのすべてが一つの物語を語る。その瞬間を捉えることで、僕は時間の流れを止めることができるのだ。

光が織り成す風景は、見る者に無限の解釈を与える。

間接照明の淡い光が道端の小さな草花を照らし出すと、それはまるで舞台の主役のように輝く。

一方で、薄暗い裏路地に立つ街灯の光が、そこにある静寂と孤独を強調する。光の当たり方一つで、同じ場所がまったく異なる表情を見せるのは、写真の面白さでもあり、難しさでもある。

私はシャッターを押す瞬間、何を捉えたいのかを常に考える。それは単なる風景ではなく、その場の雰囲気、人々の営み、そして時間の流れを感じさせるものでなければならない。

街の姿は一瞬一瞬で変わり続けるが、その一瞬一瞬が全て集まって一つの物語を形作る。写真を撮ることは、その物語の一部を切り取ることであり、それを未来に残すことである。

間接照明が作り出す陰影の中で、僕は街の声を聞く。

スマホカメラの画面越しに見る世界は、現実とはまた異なる一面を見せる。街が語る物語を、一枚一枚の写真に刻むことで、僕はその瞬間の美しさを永遠に残すことができる。

写真を撮ることは、単に瞬間を記録することではなく、その瞬間の感じたすべてを未来に伝える手段であり、僕にとってはかけがえのない創造の旅なのです。

こうして薄ぼんやりとした写真がまた増えていく。記憶と共に。


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