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【レビュー】ミヒャエル・エンデの"モモ"おすすめします!

めちゃくちゃ評判は聞いていて、
読んでみたいなと思っていた
ミヒャエル・エンデ作の『モモ』。

かなり長い作品でしたが、
買ってよかったと思ったので
その理由をレビューしますね。

私はペーパーではなく、
オーディブルで購入しました。
試したことが無い方は
無料でお試しできますので
聞いてみてください。

10時間以上の作品で聞き応えは抜群です。
朗読はあの高山みなみさんです。
所々でコナンぽかったり、
ラピュタのパズーぽかったり…
一人で何役できんの!?
っていうくらい声色豊かです。
そんな楽しみ方もできる作品でした。

これ、強烈な風刺です。ドキッとします。

主題は現代社会へのアンチテーゼ、
私はそう解釈しました。

効率、能率をいかに上げるかが評価されがちな
『今』において一石を投じる内容でしたね。

でもこの作品の出版って1973年なんですよね…
今から50年も前にはすでに
こんな風に世の中を見ていた人がいるんです。
もしかしたら色々な価値観が急速に変化する
転換点を生きたエンデだからこそ、
その変化を肌で感じていたのかもしれません。
失われていく古き良き在り方に思いを馳せます。

今の価値観に毒されてるなーと思います。

社会通念と言いますか、
常識と言いますか、
物事ってそれまでの在り方を否定することで
次に進んできたような気がするんですよね。

「こんなやり方はダメだ、
 もっとこうすればより多くのことができる。」
「できる限り低いコストで
 最大限の結果を得ることこそ正義!」
みたいな。
これは言い過ぎかな…?
でもそんな風に思います。

お金を稼ぐという究極の目的に適わないもの、
成果に直結しないものには
価値を置きづらくなって久しいと思うんですよ。

んで、
それを幼い頃から教育しよう
みたいなこともありますよね。
学校では画一的な教育を施し
サラリーマン予備軍を養成してると思いますし、
家庭では毎日習い事を詰め込まれ
将来のためという大義名分の下、
子供の意思に反する時間の浪費がある…

私はこんなちょっとへそ曲がりな
ものの見方なのですが、
それぞれの人によって社会の見方には
バイアスが掛かるものですよね。
でもそんな自分固有の考え方っていうことですら
意識しないと認識できないよなーと
書きながら考えてます。

知らず知らずのうちに
常識に毒されていると思います。
どんどん考えることを
しなくなりそうで怖いんですよね…

意識して生きないと
資本主義の大きな流れに
ただただ飲み込まれてしまうと思うんです。
極論ただ生きることになると思うんですね。

与えられたことだけ、
良しとされることだけをやっている、
主体性のかけらもない人生です。

ものは溢れているんですが、
心は全然豊かでは無いのが
今の社会だとモモを聞いて思いましたね。

灰色の男たち

ネタバレになるので
あまり具体的な内容に突っ込んだ話は
避けようと思いますが、
本編の中には序盤から
人間の形をしているけど人間に在らずな
灰色の男たちが登場します。

これがいわば、
現代社会の価値観、
資本主義の闇的なポジションですかね。
効率至上主義的な考え方の権化です。

人から時間を盗んで生命を保ってます。
現代にも周りの人から搾取して
潤っているように見える会社、
自分が搾取されているのに
そうだと気付かない個人は
一定数いると思ってます。
その風刺ですね。

作中の登場人物も
初めて灰色の男たちの価値観に触れて、
数字という無慈悲な武器を
使われてこれまでの自分を否定されるんです。
これだけ時間を無駄にしているんだぞ!
って詰め寄られるわけです。

その中には確かに生産的では
なかったかもしれないけど、
人生を豊かにするためのふれあいだったり、
英気を養うための休息だったりが
あったはずなんですが、
全て否定され洗脳されるんです。
そして登場人物たちがふと気が付くと
それが局所的な現象じゃないんですよ。
街中がそうなっているんです。

客観的に見ると怖いです。
でも限りなく今自分たちが生きている社会って
こんな感じなんですよね。

今の価値観が全てじゃない

そんな中で異彩を放つのがモモの存在です。
決して常識に染まらないんですね。

周りとは明らかに違う時間軸で
生きている感じです。

モモは不思議な力の持ち主でした。

始めはモモのところに
たくさんの人たちが訪れて
話を聞いてもらい、
問題が解決されて…っていう
いい循環があったはずなんですが、
いつの間にかそれが無くなってしまうんです。

二言目には”忙しい”、”暇がない”で
全く誰も寄り付かなくなってしまうんです。

でも、
その忙しい本人はどこか虚無的なんです。
ただ忙しいだけで中身がないんですね。

これ、あなたの生活でも覚えが
あるんじゃないかと思います。
私はめちゃくちゃありますよw
全然豊かじゃないですよね。

そんなモモが灰色の男たちと
どうやって渡り合っていくのかが
描かれた作品です。

とても全てを書ききることはできないので
ここから先はあなた自身で
読み進めてみてください。
きっとたくさん感じることがあるはずです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

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