日記1120

教壇を円く取り囲むように、階段状に湾曲した机が置かれている。正面には近代化について書かれた巨大なスクリーン。横では最近仲良くなった後輩が熱心にメモを取っている。ふと、私は机上に置かれた真っ暗な携帯の画面に目を止める。頭上のほの明るいオレンジの証明を映し込んで、まるで月のようにぼんやりと光を放っている。遥か遠くの月に対して、私は手の影で半月にしたり、三日月にしたりしながら遊ぶ。

1年ぶりくらいに食堂へ向かう。食べたいものを取り揃えてレジに向かうと、食堂のおばさんが申し訳なさそうに「今、副菜はセットになっていて、この副菜にはこの主菜と取り合わせが決まっているんです」と言う。私は微笑んで、「では、戻してきますね」と言う。コロナの影響でおそらく作った料理をあまり長く人通りにさらさないために制度が変わったらしい。しかし、少食かつ偏食の私には厳しいものがある。おそらくアレルギーのある人にも。再び戻ってきた私に彼女は今度は「箸がない、ごめんなさい」と言って、ぱたぱたと走っていく。私の方が近い位置にいたのに、せわしなく、自分に非があるかのごとく。学生に対して、それほど頭を下げなくても彼女は解雇になったりしない。私はぼんやりと席へと向かう。聖地がその先にあるかのように皆同じ方向に椅子を向けているさまが興深い。結局トンカツが食べきれず、少しだけ口にしたそれを1枚そのまま廃棄する。快楽殺人と何ら変わらない。

大学の喫煙所で女の子にあったことがない。灰が落ちそうになるたびに雨に濡れつつ、おじさんの合間を縫って灰皿へと向かう。

何年大学にいるのか、地下道で道を間違え、引き返す。のたれ死んでいる紅葉の残骸を途中何度も見かけながら。使われているのかいないのかよく分からない研究室を通り抜けながら、文章が書きたいと思う。

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