【Jリーグ】その思い込み、ほんとですか?【数字から見る思い込みと事実】
リーグも再開して1か月が経過しました。多くのチームのファンが「思うてたんと違う!!! オルンガなんて聞いてへん!」と嘆いていることと思います。私がそうです。ユン・ジョンファン監督ならもう昇格決定くらいしてると確信していました。
さて、そんな失点ばかり積みあがってる昨今ですが、普段試合を見ていると、こう思うことはないでしょうか? 「自分の応援してるチームばっかりこんなひどい目に合うのはなんで?」と。なんでうちばっかりPK取られるの? なんでうちのチームばっかり逆転負けするの? なんでうちのチームばっかり誤審が多いの? なんでうちのチームのGKはゴールを空にしてボールをキープするの?
めまいのするような試合を見ていると、自分のチームばかり損をしているような気になってきます。しかし、それは本当に事実でしょうか? 本当はあなたの思い込みではないですか? 実はあなたは死んでいて他の人には見えないのでは? 気になりますよね!? 調べてみました!
対象は2019年のJ1、J2です。警告数はJ League Dataから探しましたが、その他のデータに関しては得点経過を結果から見て入力する目視作業となりました。専門家の間では「根性マイニング」と呼ばれる最先端の分析手法であり、この手法以外を認めないという根性マイニング一神教を崇拝する集団もあるそうです。とにかく目が痛いです。
で、調べたデータなんですが、「誤審ばかりされる」とか「新人に初ゴールばかり食らう」とか「ジェフユナイテッド千葉に来ると身長が縮むし足が遅くなる」とか「俺が好きになったアイドルは高確率で彼氏がいることが発覚する」などはかなり調べるのが難しいので除外しました。あと「東口の手が四本に見える」は乱視なので、眼科を受診した上で適切な眼鏡あるいはコンタクトを着用してください。
今回は、調べられる範囲ということで「カードもらいすぎじゃない?」「先制したのに逆転されすぎじゃない?」「終了間際に失点しすぎじゃない?」の三本立てでお届けします。それではいってみましょう、それぞれのタイトルを読み上げた後に「なんでうちばっかり……」って付け足すととても真実味が出ていいと思います。
カードもらいすぎじゃない?
カウンター食らって後ろに誰もいないところを思いっきりユニフォーム引っ張って引き倒しておきながら、イエローが当然のように出されると「なんでイエローなんだ! 八百長だ! 出てこいJリーグジャッジリプレイ!」と激高してしまうのではないでしょうか。そして、こう思うのです「自分たちばかりイエローカードをもらっているのでは……?」と。さて、本当のところはどうなんでしょうか。
おめでとうございます、我がジェフユナイテッド千葉が2019のイエローカード取得数ナンバー1でした。試合数で割っても1試合平均1.60枚。2位の福岡の1.55枚と強力ツートップを形成しています。こんなところでタイトルを獲るんじゃない。
その千葉ですが、最も値が低い東京Vと比べるとおよそ倍の差があります。ここまで差があるとだいぶもらうカードに違いがでてきそうな気がします。ただ、それでも1試合で1枚にも満たない数なんですね。そうなると「カードもらいすぎじゃない?」と実感が出るほどには差があるわけではないのかな、と。これに関しては、事実であることは確かなのだけど、カードの枚数にはそれほど影響してないので、思い込みのほうが強い気がします。でも判断の分かれるところですね。
ちなみに昨年のレッドカードキングはJ1で優勝した横浜FMでした。ここから「レッドカードを取りまくれば優勝できる」と早合点して実行するチームがいるかもしれませんが、面白いので特に止めません。あと、柏の58枚のうちブラジルの狂犬ヒシャルジソンが11枚もらっていて、約2割を占めているというのは単なる事実です。最高ですね。今年もがんばっていただきたいものです。
先制したのに逆転されすぎじゃない?
負けたらただでさえ悔しいのに、先制して喜んでいる状態から負けたら悔しさは2倍どころではなく、「100倍返しだ!」「100億万返しだ!」と中途半端な理解の半沢直樹が出現してしまいます。「なんでうちのチームばっかり逆転負けてしまうん? 何でホタルすぐ死んでしまうん?」と節子の顔で尋ねたくなってしまうかもしれません。では、それは事実なのでしょうか?
まずはJ1です。確かに差はありますね。トップのG大阪、清水と比べて最下位の松本、川崎、大分は0回。5試合も違うとだいぶ体感として違う気がします。また、FC東京は4回と鬼の逆転勝ちの回数を記録。すさまじい反発力の表れとも言えますが、最初からちゃんとやれ、とも思います。
逆転負けと逆転勝ちの合計数が一番多かったのは清水の8回。全体の約4分の1に当たるという大荒れのシーズン記録。清水ファンの方たちで心臓が弱い方はご注意ください。また、川崎は逆転負けも逆転勝ちも0。先制すれば負けることはないし、先制されれば勝つことはないという非常に体に優しい仕様となっていました。公務員ですか。
あと、このランキングは面白くて、上位だった川崎、大分はともかく、なんで降格した磐田、松本や下位だった鳥栖、湘南が逆転負けが少ないの? と思ったんですよ。そしたら、しばらく考えて「そもそも先制できてない」という悲しい事実に行き当たってしまったんですよね……。
次はJ2です。琉球と山口が驚異の6回という逆転負け回数を誇っています。2チームともアグレッシブなスタイルで点を取りに行ってるので、さもありなんという感じです。しかし、それほどアグレッシブに点を取りにいってるわけでもない千葉と栃木が5回で2位というのはどういうことでしょうかマジウケル。
逆転勝ち回数は横浜FCが驚異の7回です。さすが昇格するチームは違うと思いますが、最初からちゃんと(以下略)。大宮、徳島、柏という地力のあるチームが続いていて、そこもまあチーム力ということなのでしょうね。
逆転勝ち+逆転負けの合計数が多いのは、徳島の9回でした。シーズンの20%が逆転勝ち or 負けということで、エキサイティングな試合展開は見る側としては楽しいですし、おじいちゃんおばあちゃんはポカリスエットスタジアムに連れて行かないでください。続いては東京V、鹿児島、柏の8回です。鹿児島あたりはもはや「やけっぱち」という感じですが、けっこう手堅い印象の柏が多いのは意外でした。ネルちゃん、実はドキドキしたいお年頃?
逆に最下位の町田と京都は合計1回でした。ほぼ無風の試合展開です。今年は降格もありませんし、2チームとももっと出入りを多くしてほしい! 特に町田はサイバーエージェントのエンタメ力を生かして驚異の20回超えを目指していただきたいものです。藤田社長、お願いします!
さて、最後は収支です。J1はFC東京が+3でトップ、G大阪が-4で最下位でした。これくらい差がついていたら、G大阪のファンは「うちのチームは先制してもやられてばっかりだし、先制されたら逆転勝ちできない」と言う資格があると思います。思い込みではなく、事実でしょう。
J2はもっと顕著で横浜FCが+7の堂々たる記録を見せているのに対して、琉球・山口のドンパチブラザーズは-5。先制して華々しく散る華麗な花火師として今年も期待しています。なお、琉球は今年の9節までで逆転負け1回、逆転勝ち1回と好調な出だしです。そして、入らんでいいランキングにやっぱり入ってくる千葉マジウケル。
終了間際に失点しすぎじゃない?
前後半とずっと頑張ってきたのに、終了間際に失点してそのまま試合終了。サッカーファンなら必ず経験しているこの状況、チームによって多いとか少ないというのはあるのでしょうか? もしそんな事実があるとしたら許せませんね、法的措置も考える次第です。というわけで、調べました。終了間際というのは「85分以降」ということにしました。後半40分ですね。これ以降の失点を思い出すだけでもなんか具合悪くなってきます。
まずはJ1です。先ほど逆転負けが多かったG大阪が順調にトップを取っています。また、その次の浦和と鳥栖も二桁超えでかなりの数です。最下位の仙台が1点なので、それと比べると10点の差。これはもう思い込みではなくて事実でしょう。G大阪の失点の内訳は、勝ち越されたのと同点にされたのを合わせると、5回となりました。けっこうな数ですね。ただ、さらにひどいのが浦和で、勝ち越され&同点の失点が7回。終了間際の失点の7割でひどい目にあってます。なんかの保険に入ったほうがいいかと思います。
逆に得点の方を見ると、やはりここでもG大阪と鳥栖が強い。特に鳥栖は10回のうち9回は勝ち越し&同点弾という驚異の粘り腰。終了間際のドラマチックさにおいては日本随一ということになります。また、2019年の鳥栖の得点は32なので、約3割が終了間際に生み出されているというハリウッド映画もびっくりのクライマックスシリーズ。やはりマンションを経営するしかありませんね。逆に仙台は終了間際の失点が1なのに、得点だけ10点とやたらと得しています。後述しますが、これはある男のせいなのです。
面白いのが神戸です。終了間際の得点が8回あったのですが、そのうちの6回が勝ってる場合の追加点。日本を代表する死体蹴りのチームと言えるでしょう。スペイン屈指の死体蹴り名人と言われるイニエスタ獲得の効果でしょうか。
得点&失点の合計で見ると、G大阪、鳥栖あたりはかなりの回数になっています。G大阪は2019年の合計得失点が102なので約20%、鳥栖は合計得失点が85なので約23%が、終了間際に生み出されていることになります。それまでの85分は一体何だったのでしょうか。ツネ様のイケメン力が終盤になると切れてしまうという説もあります。お祓いしたほうがいいです。あとマンションを経営しましょう。
逆に合計得失点が最下位なのはC大阪。スプリント回数がやたらと少ない&相手にもスプリントさせないことで有名なC大阪ですが、試合をコントロールできてるので終盤も大荒れにならないということでしょうか。どちらにせよ、点が入った時にはロティーナ監督は苦虫を噛み潰したような顔をしていると思います。
続いてJ2に行きましょう! 1位は岐阜と鹿児島でした。驚異の13回という終盤間際の失点で勝ち越された回数は共に5回。この数字を見るとJ3降格もやむなしという気になってきます。また、8点とそれほど少ないのに勝ち越され&同点が7点という致命率が高いのが栃木。よくJ2に残れたと感心します。千葉も多いですねマジウケル。
横浜FCと柏が少ないのはさすがの昇格チームという感じでしょうか。今季はJ1で終了間際にがんがん失点することを祈っております。1位の13回と最下位の1回では12点も差があるので、やはりJ2でも「終了間際の失点が多い」は思い込みではなく事実であることがわかります。
あと面白いのが、長崎が空砲(相手が得点をしたけど試合結果に影響しなかった 例:3-1から1点返された)を5回も食らってることですね。追加点も1点があるので、10点中6点は虚無の失点が生み出されているわけです。これは手倉森監督のダジャレに通じるところがあるのではないでしょうか。
次に得点ですが、ここは琉球が昇格チームを抑えてトップ。12点中9点が勝ち越し&同点ということで、終盤に全裸でナタもって襲い掛かってくる姿が想像できます。終盤だけで勝点を10以上稼いでることになり、これがなかったら降格していたわけなので、やはり全裸は重要ということになりますね。
J2の死体蹴り王は新潟の5回でした。誰がというわけではなく満遍なく死体蹴りをしているので、チームの方針だと思われます。2019年の新潟のスローガン「ニイガタ流儀」とはもしかしたらこのことだったのかもしれません。
合計を見ると、琉球の活躍が目立ちます。23点はもはや狂喜乱舞ですが、元々琉球は合計得失点137点で得点も失点も多いので、割合としては約16%でしかないのです。岐阜も2割を超えません。やはり鳥栖の23%という驚異的な数値には全く手が届かない。J1の底力というものを見せつけられている気がします。追い付くためにもマンションを経営しましょう。
逆に少ないのは水戸、町田、愛媛あたりです。愛媛なんかは得点も失点も多い印象なのでけっこう意外でした。水戸はJ2で2位の堅守のおかげですかね。きっちりと勝ってたイメージです。町田は逆転勝ち負けの数も少なく、終盤の得失点も少ないというエンタメ性の低さが気になります。そこにテコ入れするためにワンツーでどーんのポポヴィッチ監督を呼び戻したのでしょうか。ちなみに2020年は9節までですでに終了間際に3失点1得点とその効果は抜群に出ています。やったね、藤田社長!
ここからは個人賞です。じゃあ誰が終盤間際に得点してんのよ? ということですね。けっこうな人数になってしまうので、複数得点をあげた人だけを出します。
J1から見ると、なんと1位はハモン・ロペスでした。85分以降に6点も取ってます。そして、このハモン・ロペスの2019年のJリーグでの全得点が6点なのです。つまり、ハモン・ロペスの2019年のJリーグの全得点が85分以降に生み出されたということになります。インザーギはオフサイドライン上で生まれたとよく言われますが、ハモン・ロペスは85分以降に生まれたのではないでしょうか。さらに、6点のうち追加点つまり死体蹴りが4点なのです。空砲の1点も合わせると5点が無駄な点。なんという虚無を飼っていたのでしょうか、仙台は。もはや呪いのアイテムです。去年で手放して正解でした。
逆に頼りになるのは、鳥栖の豊田と磐田を途中退団したルクセンブルク代表のジェルソン・ロドリゲスです。豊田は全3得点が同点or勝ち越しという勝負強さ。頼りになりますね。また、ロドリゲスも15試合総得点5のうち4点が終盤で、そのうち3点が同点or勝ち越しとかなりのタフガイっぷり。どういう理屈かわかりませんが、なんとなく終盤に強そうな顔と髪型はしてます。
なんかレンタル先で揉めて磐田に戻ってくるかもみたいな噂がありますが、今季のJ2でイマイチ調子に乗り切れてない磐田なので終盤の起爆剤としてはありなんじゃないでしょうか。なんか爆発してはいけないところまで爆発させそうな気もしますけど。
続いて、J2です! 1位は甲府の佐藤洸一と押谷祐樹です。しかし、その内訳は対照的。佐藤洸一が4点のうち3点が同点なのに対して、押谷は3点が死体蹴り。終盤に投入されてなんとか死地から生還させる佐藤洸一のかっこよさが光ります。J2出場368試合、93点というミスターJ2的な記録は伊達ではないということでしょう。そんな佐藤洸一は今年JFLヴィアティン三重に移籍しました。まだまだJ2とかJ3なら全然やれそうなので、終盤にパンチ力が足りないチームは獲得を検討してもよいのではないでしょうか。死体蹴りをしたいなら押谷ですが。
また、上原慎也の勝ち越しor同点が3点なのも光りますね。長く札幌で活躍しましたが、キャリアの終盤にきて終盤力をつけてきているというのは何か理由があるのでしょうか。終盤力に定評のある藤井聡太2冠にヒントを得たのでしょうか。たぶん違います。いま、私はめちゃくちゃ適当にこの部分を書いています。
さて、いろいろな思い込みをデータと共に見てきましたが、けっこうおもしろいですね。「うちのチームだけ誤審が多い」「うちのチームだけダジャレが多い」「うちのチームだけハムストリングスの肉離れが多い」など、Jリーグにはまだまだいろいろな思い込みというかオカルトがあります。どうせ夏休みにどこに出かけられるわけでもないので、それをデータを集めて本当に事実かどうかを調べてみるのもよいのではないでしょうか。
レッツ根性マイニング!!