中小ベンチャーCFO業務の全体像(その4)
数字とロジックで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO®、高森厚太郎です。
前回の記事「中小ベンチャーCFO(社内、社外を問わず)業務の全体像(その3)」の続き、残りの⑦Exit、⑧事業再生・承継です。
■⑦Exit
Exitとは、ベンチャー企業や企業再生において創業者や投資家が株式売却により利益を得、投資資金を回収することを意味します。主なExitの方法に、IPO(新規上場)やM&Aによる第三者への売却(バイアウト)などがあります。
起業家なら誰しも、一度はIPOを考えたことがあるはずです。キャピタルゲインが得られそうだし、自分の会社を社会に還元していく意義のようなものを感じられそう……。しかし現実的にはIPOはきわめて狭き門です。日本国内の新規上場企業数は、年間100社もありません。Exitではもっと現実的に、M&Aで会社を売却したり、大企業の傘下に入って事業を伸ばしたりしていく企業も少なくありません。無理にExitせず、中小のままキラリと光る存在(優良中堅)でいつづける方向を選択する企業もあります。
Exitは、CFOが担当しうる業務のなかでも、特に醍醐味と面白みのある業務ではないでしょうか。会社全般の経営のみならず、株主など会社を取り巻くステークホルダーとも相互に大きく影響する出来事であり、かつ、ファイナンスや法律に関する非常に専門性の高いスキルが必要とされるので、CFOが担当するのが一般的です。ただしその手を超えて高度な知識が求められることも多いので、IPO請負を生業としているような外部の専門家とタッグを組み、彼らと会社の間でコーディネーター的に動いていくようなケースも考えられるでしょう。
■⑧事業再生・承継
事業再生・承継、特に再生は、企業経営における究極的な局面です。事業再生・承継は日常的に発生する案件ではありませんが、担当企業がそういう状況になる、あるいはその事態に陥った企業から急な依頼があるといった場合に備えて一通りの知識を持ち、心構えはしておくべきです。なぜなら、本来的に中小ベンチャーは危ない橋も渡りながら多少の背伸びをしつつ成長していく事業形態で、思わぬところで落とし穴に落ちる可能性を常に秘めているからです。成長と再生は常に表裏一体です。
事業再生・承継は、Exitと同様、会社全般の経営及び株主など外部ステークホルダーに関わる事象であり、ファイナンスや法律に関する専門性の高いスキルが必要とされる業務です。かつ、非常にセンシティブな局面であることから、強いスキル・マインドを併せ持つプロフェッショナルCFOが求められる分野です。
■中小ベンチャーのCFOとして
社内にCFOとして常駐している場合でも、社外にプロCFOとして非常駐でいる場合でも、より多くの業務について正確な知識を持ち、自分なりの推進や解決のノウハウを持つことが、皆さんのビジネスチャンスを広げる武器となるはずです。依頼された業務以外でも、改善や新規検討の余地があると思う分野があれば積極的に進言していくことが、CFOとしての皆さんのスキルを上げ、引いては担当企業の成長につながっていくことと思います。
初回から今回までで、テーマ「中小ベンチャーの成長マネジメント」における、中小ベンチャーの経営とCFOについて、あらましを語ってきました。次回以降は、具体的にCFOが会社の成長マネジメントをするにあたり、経営者とどう議論していけばいいのか、「中小ベンチャー経営者とのディスカッションスキル」について考えていきます。
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