「憂国のモリアーティ」考
Netflixで繰り返し「BANANA FISH」を視聴していたら、BL好き認定されたのか、しきりに彼(サイト)に勧められたのが表題のコミック原作「憂国のモリアーティ」だった。ジャンプSQで連載中の人気コミックのアニメ化で、2020年、2021年にアニメ化されているのだが、この漫画とアニメの存在を知ったのは先月。
まあ、ハマりました。アニメは「BANANA〜」と同じく繰り返し視聴し、原作は全巻、電子コミックで買い、最新刊に至っては、紙版で購入。
この作品の優れているところは「登場人物がジャニーズのグループのようにみんな種類の違うイケメンで、誰か一人はタイプがいる」「基本、ダークサスペンスなので、主人公をはじめ皆、ちょっと憂いを帯びたアンニュイ系。でも大元が超有名推理小説(シャーロック・ホームズ)なので、その底堅さ、骨太さ、格式の高さがストーリーを安っぽくさせず、そこそこ読める」「19世紀イギリスの街や文化、歴史が垣間見える」など、幾つもあるのだが、まあ何と言っても「腐女子が喜ぶBL要素が満載」なところを狙いに狙っているところが売れている一番の要素だ、と私は思う。
BLは20代前半の頃にまあまあ読んだ身であるものの、連載されているのが「ジャンプSQ」ということもあり、最初はそこ(腐女子)をターゲットにした作品だとは思わずに観て(読んで)おり、そのうちに「むむ? これはもしや主人公のウィリアム、狙ってこの人物造形になっている・・・?」と気づいた。
現在の(というか昔も大して詳しかったりはしない)BL市場にはかなり疎いので、的外れなことを書いているかもしれないのだが、私が驚いたのは「原作者が腐女子市場をかなり意識して、というかサービスして、人物の姿形だけでなく、ストーリーすらも描いている!」ということだ。
普通は「原作は王道をゆき、それをもとに腐女子が自由に妄想する」という図式になると思うのだが、この作品の場合、原作者も思いっきりその道に合わせちゃってる気がする・・・。
最新刊では「えっとこの超BLとも読める展開、二次創作ですか?作者の方、最初からこの展開、考えてました?」と、その美しい絵に魅了されつつも、かなり面食らった。
この作品は、作者が楽しんで描いていること、高みを目指して描いていることが伝わってくる(絵・ストーリーとも推敲を重ねているのがわかる)し、このクオリティなら安心して、この先もずっと楽しみにしていられるはずだ。
しかしながら、それでも、「BANANA FISH」とはやはり何かが決定的に違う。その違いは何だろう・・・? とこのところ思っていたのだが、それは多分、「作者が出した答えを描く」ことよりも、「読者が好きな答えを描く」ことを優先した作品になっている、ということではないかと今のところ思っている。つまりそれは「エンタメ至上主義的な物づくり」とも言えるかもしれない。それ自体は決して悪いことじゃないし、表現に正解はないのだが、やはり前者の方が、読者が受け取るものが、深く重く、感動することが多いのではないだろうか。
とはいえとはいえ、集英社の「ジャンプSQで女性読者ごそっと取りまっせ、マーケティングした売れ要素全部盛りしまっせ」の戦略には十分ハマって楽しんでいるし、今はコナン・ドイルの『恐怖の谷』も併読しているくらいだし、まだ、あと3巻くらいは出てほしいなあと願っている。ちなみに一番好きなのは、もちろんシャーロックです。
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