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TokyoDinnerTicketの思い出

私がフレンバシーに入ったのは2015年の10月で当時2020年のオリンピック招致の流れで訪日外国人が増えるということからインバウンド(訪日外国人向け)ビジネスが流行りつつありました。自分も2012年からほぼ毎日欠かさず朝活で英会話を習っていたので、起業してインバウンドの仕事をやりたいと思っておりました。そんなときにWantedlyでフレンバシーを発見したのでした。

当時TokyoDinnerTicketという訪日外国人に対して和食のレストランを紹介するサイトをまさにリリースしようとしているタイミングでした。

私はその少し前に在日外国人が訪日外国人を観光ガイドするのをマッチングするサービスを作りたいと考えていたので、このアイデアに興味をもちました。自分のアイデアは商売でやる観光ガイドは通訳案内士という資格を持っていないと出来ないように法律で定められているけど、実質形骸化しているということがわかっているので近いうちに制限が撤廃されることを前提に考えたサービスでした。しかもガイドと同じ国籍の旅行者と結びつければコミュニケーションギャップが発生しないから喜ばれるだろうという発想でした。しかし、観光ガイドのための集客サイトの構築の大変さ(特にコンテンツ面)やガイドの調達の難しさや発生頻度で不安を感じておりました。

TokyoDinnerTicketはレストラン情報を検索でき、必要あれば電話しないで予約が画面入力だけで自動に行われるというものでした。Twillioという電話に関するAPIを一式持っているサービスを利用することで画面上に入力したレストラン予約情報を自動に音声に変えて飲食店に電話するというものです。自動音声で予約情報を流すので(しかも日本語で)外国人と電話でやり取りしなくても予約ができるのです。画期的だし、食というフリークエンシー(頻度)の高い側面に焦点を当てているのも筋が良いなと思ったのでこのプロジェクトに参加させてもらうことにしました。まだ前職の在職中に表参道の飲食店で播とランチしながらアイデアを聞いたときにワクワクしたのを思い出します。

Wantedlyの募集で週に1度定例ミーティングに集まってきた人が様々な意見を交わしました。エンジニアの人、コンサル系の人、マーケティングの人など出自は多様です。

自分は何回か副業や自前でのサービス構築経験があったのでサービスを軌道に乗せるためにやらなくてはいけないことの勘所は掴んでいました。

ミーティングに参加して1ヶ月位経ったところで開発中のTokyoDinnerTicketがついにローンチしてサービス開始となりました。

さて、これをどうやって広めるのか。課題は山積しています。

  • 訪日外国人の集客はどうするのか

  • レストランの加盟をどのように増やすか

  • アウトソースしているシステムは社内でどのように巻き取るのか

などなど。そもそも集まってきた皆さんのバックグラウンドが違うので仕事の進め方の意見調整も大変です。SlackやTrelloなど何でタスク管理するのかでも意見は割れたりします。週に1度のミーティングで全部を解消するのは不可能で停滞感が漂います。

自分はこの事業になんとか軌道に乗せたかったので本業の仕事の合間に出来ることはいろいろやりました。集客をSNSとか広告打つというアイデアが社内メンバーから出てこない(そもそもCEOがIT業界出身でないのでそういったことに馴染みがなく発想が出てこない)ので、最初はベタにTokyoDinnerTicketのサービスのチラシを作成して街頭で配布するということをやってました。私も街でチラシ配りをしておりました。受け取ってもらえたりもしますが、このレストランはどこにあるの?と聞かれて、「これはWEBサイトで、レストランを検索するんです」と説明したり、なんともはや・・・という感じでした。

さて何週かミーティングをやると継続して参加していた人も「忙しい」と言いながら不参加がちになり、やがて抜けていきます。最後まで残ったのは私とマーケティング担当の人と翻訳やってくれる大阪在住のアメリカ人観光ガイドだけでした。基本的にボランティアベースなのでミーティングにも対価は発生しないし、大体話はいいっぱなしでアクションに結びつかないものばかりでした。

残ったメンバーで広めるためのアクションを模索していましたが、一つのアイデアとして当時広まりつつあった民泊とのシナジーというのを考えていました。AirBnBで貸し出している部屋のWIFIの初期画面にTokyoDinnerTicketを出したら使ってもらえるのではないかというものです。これも提携してくれる民泊の会社と話をしたりしてましたが薄利だからか一向に進展せず行き詰まりました。

年明けて2016年の1月にメディアを立ち上げようという話になりJapan GourmetpediaというサイトをWordPressで簡易的に立ち上げました。日本の食についてや飲食店のマナーとかそういった情報を載せていました。

Japan Gourmetpedia

そうして頑張っている中でも一向にユーザーの利用が増えず、焦りが出てきたところに1本の電話がありました。テレビ朝日の平日夕方のニュース「スーパーJチャンネル」という番組で「訪日外国人のはじめての鍋体験」というテーマで取材したく、TokyoDinnerTicketのユーザーでまさにそれを体験するところを取材させてほしいという話でした。

そんなユーザーはいないとは言えなかったのですが、絶対にチャンスを掴まないといけなかったので取材を引き受けることにしました。何としても取材を実現するため、浅草にTokyoDinnerTicketを使ってくれるユーザーでテレビの取材にも付き合ってくれる人を週末に播と2人で探しに行きました。自分たちのメディアの取材という体裁でビデオ回しながら日本で鍋を食べたことがあるかという質問を何人もの外国人観光客にして回りました。これで仲良くなった人に正式に取材協力をお願いしようという戦術です。恐らく5、6時間位はやっていたかと思います。午前から初めて夕方に差し掛かった頃、とあるフランス人のカップルが話を受けてくれることになりました。相当不審だったと思いますが、もうミラクルでした。

鍋料理の店もTokyoDinnerTicketの掲載店で選び、取材の準備も完璧にアレンジした上でフランス人カップルをアテンドしました。テレビの取材の滞りなく完了、あとはオンエアを待つだけという状態になりました。
これはもしかしたらオンエア見た人からサーバーアクセス集中してTokyoDinnerTicket落ちるかもしれないとサーバー側の準備も考えました。

オンエアは10分ほどの内容にまとまり、サービス名も出してもらいました。これでユーザーがどーんと増えて一発逆転!のはずと期待してました。
しかし、まるでサーバーへのアクセスにつながらず相変わらずTokyoDinnerTicketの予約も行われません。それは当然のことでした。ユーザーのターゲットと視聴者の属性が違うので考えればわかることです。

このあとTokyoDinnerTicketとして何かトピックス的なことといえばスタートアップ情報サイトのThe Bridgeが開催したBridgeFesというスタートアップ向けイベントにブース出展したことくらいでしょうか。ここでも何人かはサービスに興味持ってもらえますが、集客イベントではないのであまり次につながりはしませんでした。

そうこうしているうちに資金は大分減ってきて、最後に一縷の望みを託してユーザーインタビューを敢行しました。なぜ使ってくれないのか、UIに問題があるのかわからないので操作状況を動画にとってインタビューすることにしたのです。結果的にこれをやったことでTokyoDinnerTicketをたたむという決断に繋がりました。HARD THINGSに書いた通り、そもそも食べられないものが出るので日本食にそこまでこだわりがないなどTokyoDinnerTicketを使わないといけない強い動機がないことに気付かされたからでした。ここからVegewelにピボットしていくのですが、スタートアップを初めてピボットに至る流れとして多くの人が通る道だったのではないかと思います。

結局TokyoDinnerTicketを終了させ、会社存続のために渋谷のマンションに借りていた一室は解約してコワーキングに移転することにしました。このコワーキングから捲土重来、次のVegewelでの飛躍を託していくことになります。

この話、これからスタートアップを始める人の参考になれば幸いです。

お知らせ:7/20(水)19:15よりシアトルコンサルティング主催のTwitterLiveに出演します。色々喋りますのでお楽しみに!


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