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グローバルユニコーン企業トップ5社の1年を振り返る

世界をぐるんと変えるような新型コロナウイルスの猛威に社会が見舞われる今、いわゆる「今をときめくスタートアップ」はどうなっているでしょうか。世界のプライベートカンパニーの時価総額トップ5のスタートアップについて、ここ1年でどう変わってきているのかを調査しました。

スタート地点として、CB Insightsのツイッターアカウントが開示している2019年8月時点のユニコーン企業に関するデータをもとにしました。

2019年8月の時点で世界のユニコーン企業のトップはByteDance、2位はDiDi、そして3位はJUUL、4位はWeWork、5位はAirbnbです。

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1位のBytedanceはさらに時価総額をアップ

1位のBytedanceはご存知TikTokの会社。この当時は750億ドルの時価総額とされていましたが、Financial Timesが3月30日に1,000億ドルを超えたと報道しています。とても順調そうです。

Bytedanceの主要事業であるTikTokのダウンロード数はこちらも記録的な状況です。

TikTokはSNSとして過去最速で10億ユーザーに到達しました(こう見るとFacebookは恐ろしい…)。圧倒的なスピードです。もちろんこの背景には、ほかのSNSに広告費を大量投下して引っこ抜いてきたからでしょ、という話もあったようです。

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また、SensorTowerによると、2019Q2を底に再度ダウンロード数が加速しています。特に2020Q1は新型コロナウイルスの影響もあって、3億ダウンロードという記録を打ち立てたようです。

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さらにUSでも好調な伸長が見られているよう。すでに3,720万ユーザーにのぼり、eMarketerの予測では4,500万ユーザーに到達すると予想されています。

米国では海軍ではTikTokをスパイアプリとして認定して海軍配布のスマホではインストールを禁止したりもしていますが、勢いはまだまだ止まりません。

2位のDiDiは「移動」ポートフォリオを強化。2020年は反転攻勢へ

2位のDiDiは当局の規制と戦いながら、「移動」を軸としたポートフォリオ強化を進めています。

2019年の年初はDiDiの配車サービスの中での殺人事件やレイプ事件など、問題が相次ぎ、そこからのリカバリーに時間を要していました。また、全社員の15%にあたる2,000人のリストラもしました。ただ、このリストラは非コア事業からの撤退など、筋肉質な事業体になる過程としてのものだったようです。

そして、2019年8月時点という上記のランクインの際には、トヨタ自動車から6億米ドルの投資に合意した直後でしょうか。直近、4月17日にはこれまでの安全第一の戦略から新たな成長ステージへの移行を宣言。そして、自転車レンタル事業はコロナショックを追い風に好調で、この事業のために10億ドルをあらたに調達するなど、息を吹き返している様子です。

がっつりお金を投資して膨張させるときは膨張させる、そして膨張させた後に、しっかり筋肉質な事業体にすべくスリム化する。この繰り返しによって強靭な企業をつくるという思想は、ゴリゴリマッチョな感じがしますが、筋は通っているように思えます。(社員の立場ではどうか分かりませんが…)

DiDiのバリュエーションは不明ですが、横ばいから微減とみる向きが多そうです。

3位のJUULは劣勢。規制強化との戦い

3位のJUULは電子タバコの会社。元々はPloomという会社でJTに買収されましたが、スピンアウトしてJUULを設立、米国で電子タバコ市場でシェアトップとなりました。しかし、規制強化にあって現在は苦境に。上記ランキングは2019年8月のものですが、「2019年9月以降、暗黒の日々から抜け出せずにいる」なんて、リストラのニュースもあります。

欧州でも同様に規制強化を喰らい、5か国で撤退という話が。欧州では米国ほどそもそも流行っていなかったようですが、キツくてしょうがない…。

スタートアップ界隈で、よく大麻マーケットなんかも話題になりますが、この辺は政府のサジ加減でいかんともなるので、エリートといえど難しそうですね。このJUULはアルトリアグループ(旧フィリップ・モリス社)がガッツリ128億ドル投資していましたが、これはもう3分の1以上の価値を引き下げて45億ドルの減損をだしています。CEOもこのアルトリアグループから来た人に交代した模様。つまり、もう2019年8月当時の時価総額はなく、少なくとも1/3は毀損したことになります。

4位のWeWorkは…

知っての通り。少なくとも2019年8月時点のバリュエーションは維持できていないでしょう。

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すごいことに、ウィーワークの創業者はソフトバンクGを訴えたそうです。1,000億円もらえそうだったタイミングでいろいろなものが瓦解してしまったわけで、1,000億円もらえるか何もナシでフィニッシュかの分かれ道なので、創業者も本気ですね。。

5位のAirbnbはコロナ直撃。堅実に防衛中…

5位のAirbnbはコロナ影響ありそうですが、4月頭に1,000億円以上の調達をしていて、さらに数日後に1,000億円のローンも獲得しているなど、堅実さを感じます。

CB Insightsの2019年8月の記事では293億ドルでしたが、一時ピーク時には350億ドルともいわれていた同社でも、この苦しい流れの中で得た後者の1,000億円には、180億ドルでの転換権がついているとのことで、やはりこちらも値を落としたようです。

(2020.5.6追記)Airbnbが約25%の社員のリストラを発表しました。
あわせて創業者兼CEOが非常に真摯に、本決定の理由を語り、今後の方針を語り、退職者へのサポートを語っています。やはり非常によい経営者だと感じられます。惚れますね。

ちなみに「今年の収益は2019年の半分未満になる」から「20億ドル調達したし、コストも下げた」けど、耐えられないので実行する。
退職者への条件面は
・7,500人の従業員のうち約1,900人・約25%をカット
・14週間の基本給+1週間/在籍年数の追加給与を支払
・退職者全員に株を付与
・全社員で転職をサポート(とPCの貸与)
非常にサポーティブな内容が書かれています。健康保険についてもしっかり書かれていて、ただただすごいなぁと思います。

1年でトップ5の3社が苦境に陥るという「諸行無常」

8月時点のものから1年も経たずに、5分の3が苦境に立たされているというのは、スタートアップの「諸行無常」感あふれる世界を感じます。

しかも、コロナの影響といえるのは3社のうち1社でしかありません。そのほかの2社は違う要因によって評価を落としています。

個人的にはDiDiのようにポートフォリオをしっかり意識した経営かつ膨張と筋肉質な事業体へのスリム化を繰り返す成長スタイル、そしてAirbnbのような堅実なスタイル、ともに好感がもてます。

あるメディアによると今のトップ10は以下のようなランキングだそうです。このトップ10は1年後にどうなっているんでしょうか?

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