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ボッチが怖くてサークルを立ち上げた話

「ヤバい…このままじゃボッチだ」2004年4月、大学入学後のゴールデンウィーク直前。テニサーなどのネアカな人々には絡みづらい。もっとネクラだけどちょうどいいサークルはないものか。そう考えて、サークル新歓を回ったものの、しっくりくるサークルがないままGWを迎えてしまった。GWを超えると新歓もなくなり、サークルへの加入タイミングがなくなると聞いていたから僕は焦っていた。


発想を転換する

「居場所が見つからないなら、居場所を作るしかない」追い込まれた僕は、そう発想の転換を行い、ボッチ回避のためサークルを立ち上げることにした。

よし、何をするサークルにするか。僕は居場所がほしいのだ。であれば、人がそれなりに集まってくれればそれでよい。自分の好みなど関係はないのだ。だから、変にコアなものにするのでもなく、大市場にチャレンジする必要もない。とりあえず活動できそうで、あとは居場所をつくるのに十分な人数が集まるものならいいのだ。

「5人いれば試合に出れるという少人数制であること」「場所も必要な物も少なくて済む」という活動のための最低ラインが低いことがベースにあり、その上で「フットサルをするサークルは増えていたが、サッカーサークルがフットサルもしますというところが多く、フットサル専門はなかった」という将来性が一定見込めたことから、フットサルサークルにした。サッカーも経験のない僕が。

最初は自由度を武器に、無理やり立ち上げる

ここからは居場所つくりのための仲間探しだ。僕はサッカー経験はない。ということで同じ大学にいた高校の同級生(元サッカー部)に声を掛ける。すると、もうサッカーサークルに入ったとのこと。オーケーオーケー、想定の範囲内。高校でサッカー部に入るような奴は剣道部なんてマイナー部活に入る俺とは当然に違う。でもサークルなんて何個入ってたっていいだろう?活動する曜日は君のサッカーサークルと違う曜日にするから大丈夫。今から決めるだけあって、とんでもなく自由。よし、君をキャプテンに任命する。

とにかく身の回りにいた友達を誘って、サブのサークルとして入ってもらって6人集めた。活動日は最もみんなが集まれる曜日を最大公約数的に決めた。

GWを終えてから、同じようにサークル選びの波に乗れなかった学生を狙って勧誘活動を開始した。Webサイトを立ち上げて、自分の大学の学生がみる掲示板にURLを貼って回った。友達にもサークルを立ち上げたことを話した。

すると、何件か問い合わせが来た。当然全員ウェルカムだ。1回生が終わる頃、所属人数は12人になっていた

先駆者をパクり、採用を加速する

2回生の春。「今で充分楽しいんだから、このままでいいやん」一部のメンバーは、新歓時期を前に、新歓をすること自体に反対した。しかしそんなことはない。ここで新入生を確保しなければ、僕の作った小さな居場所はなくなる。勢いが大事。守るためには攻めねばなるまい。攻撃は最大の防御。説き伏せる。どうせこいつは別のサークルにも所属していて、このサークルがサブ。だから、ここ以外にも居場所はある。俺はここがメインの居場所なんだ。コミットメントが違う。

自分たちのような弱小サークルがどのようにメンバーを確保するのか。どうしたらよいものか。ベンチマークする。そう、先駆者をパクる。人数を集めるサークルといえばテニスサークルだ。あいつらはすごい。チラシも女子の手書きで、なんかかわいい。多くのサークルがA4のチラシを配る中、彼らはA3、しかも色付きのA3で目立っている。紙面が広く取れるおかげで、新歓カレンダーも載せられるし、集合場所のマップも分かりやすい。こういうのをやればいいのね、了解。

A3で配ってるやつらはテニサーくらい。テニサー以外はほとんどA4。やつらは出し抜ける。テニサーの友達に聞いて、どこでいつチラシを配ればいいのかを知る。字のかわいい女子に手書きを依頼。イベントをいくつか用意し、カレンダーに掲載。Webサイトを立ち上げ、そちらでもスケジュールを公開。ビラはもちろんカラーのA3だ。

そしてテニサーがなぜ全員がテニスをプレーするコートもないのに、たくさんのメンバーを集められるのか。それはテニスをプレーするというよりは、仲間が集まる場所がテニスコートだというだけだろう(知らんけど)。うちの大学は男子校みたいなもん。ということで、女子が確保できれば、男子は勝手に寄ってくる。まずは女子メンバーを集める必要がある。

マネージャーをしてくれている女子に聞くと、正直マネージャー業は暇だからこれ以上はいらないという。ならば、普通に一緒にプレーすればいいだけだ。テニスだってそう。そしてフットサルにはミックスルールという、男女混合チームの試合もあるのだから。

軽く調べてみると、女子がサッカーやフットサルをプレーできる環境は案外ないらしい。どこも女子マネージャーは募集しているが、女子プレイヤーを募集していない。よし、女子プレイヤーを募集しよう。女子プレイヤー募集と大きく書いて、自分の大学、そして近隣の女子大にチラシをまく。

基礎をつくる

女子プレイヤーOKと明確にしたことや大学を自分の大学に絞らなかったことで、女子プレイヤーがやってくる。彼女がまた近くにいる“プレーをしたい女子”を引っ張り込んでくれる。女子プレイヤーをかっこいいという女子があらわれる。男子は勝手に集まる。メンバーがメンバーを呼ぶ。自転する。

2年目、僕らのサークルは30人を超えるところまで来ていた。

後輩たちは最初からそこにあるサークルにやってきたメンバーだ。だけど、先輩は少ないし、決まりごとも少ない。何をすべきなのか、1回生の主要メンバーも含め、年間スケジュールを考える。

他サークルでは夏休みには合宿する。調べるとフットサルしほうだいのホテルがある。学祭では場所を確保して、出店をみんなでやろう。対外試合は民営のフットサルコートで定期的に開かれているらしいので、どんどん参加する。同じ大学の中にいくつかのフットサルサークルが立ち上がっていた。ここでリーグを立ち上げて、リーグ戦をできないだろうか。声をかけてみよう。

サークル運営に必要なことは、メンバーがやりたいならどんどんやる。いつしか自分が動かなくても、勝手に組織が動くようになっていた。集合時間を伝えられるとき、1時間前を伝えられるようになっていた。集合時間に家を出るやつだと思われていたからだ。

バトンを渡す

3回生の春。順調に新歓が進み、その時点でサークルのメンバー数は50人を超えた。

「カイチョウさんって珍しい苗字ですね」いや、カイチョウっていうのは苗字ではなくって、役職で呼ばれていたら、気づくとアダ名みたいな使われ方をしているだけだよ。

自分の居場所はすっかり大きくなっていた。誰かの居場所になっていた。ならば自分のすべきことは、その誰かの居場所が長く守られることに力を注ぐべきだ。サステナビリティを確保しなくてはならない。となると、自分が早く後輩にサークルを託すことで、ちゃんとバトンがつながるようにしなくてはいけない。最初のバトンパスをしっかり行うことで、その次のバトンパスもきっとうまくいく。

一番まともでまわりの気持ちを考えられる、だからまわりから尊敬される人間をトップに据える。ただ、みんながカイチョウと自分のことを呼ぶので、2代目のトップは部長にしよう。フットサルの技術が優れた人間をキャプテンに据えるのは変えない。組織とスポーツは分ける。しかし、トップはあくまで組織のトップであって、スポーツのトップはサブとする。誰かひとりがいないといけないという状況は避ける。軸は複数あるほうがよい。

大学の公認サークルになれば、よりサステナビリティは確保されるかもしれない。まだフットサルサークルで大学公認サークルになっているところはない。活動実績などの報告が必要で、歴も一定必要そうだが、狙える。申請を進めた。

4回生になった春、サークルのメンバーは100人を数え、そして大学公認サークルとなった。

20周年を迎えた今

新しい幹部によって、新しい文化が積み上がっていく。

活動日程が変わったり、サークルのユニフォームのデザインが変わるなど。しかし、それはそういうものとして、特にクチは出さない。赤をメインカラーに据えたユニフォームは、何年後かにピンクになったらしい。チャラいな。同じ大学にあるフットサルサークルでリーグ戦をつくる構想は僕の現役時には成立しなかったが、それっぽいものをやった時期もあったようだ。

戦略コンサルにいた頃、新卒採用でフットサルサークルの学生がいたので、僕の作ったサークルってまだあるの?と聞いたら、ありますよと教えてくれた。「でもネアカの人が多くて、なんか怖いっす」そうか、もともとはネクラでサークルに入りそこねた僕が作ったサークルなんだけどな。

僕の作ったサークルはNekthy(ネクシー)。最初に僕の居場所をつくるために集まってくれた6人の苗字の頭文字を並べ替えて、それっぽくしたものです。今もこのサークルは生き残っているようで、GWを終えた5月も新歓をしているそうです。

京都で大学生をやっている方、ぜひ覗いてみてあげてください。

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