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財政破綻が心配な人へ

最近、ずっと考えているんです。
財政破綻が心配な人は、いったい何が心配なのか?ということを。

すると、こんなことが心配なのだ、
ということがわかってきました。

そのひとつが、突然の円の大暴落なんですね。
大暴落というのは、一夜にして起こります。
なぜなら、それは人の心のパニックや
ヒステリーによって引き起こされるものであって、
決してコントロールできるものではないわけです。

そのような人の心理作用によって円が大暴落する危険性がある。
そう考えるから、お金をたくさん発行することに危険を感じるわけです。

とてもよくわかります。

そもそも、なんで大暴落が起こるのか。
そのメカニズムを株で説明してみます。

あなたが今、A社という企業の株を持っていたとします。
そして、その企業がこれから大変な赤字を計上してしまうという
噂を耳にしたとしますね。

あなたは、自分が持っているA社の株の価値が下がるのでは?と思います。

で、あるなら、損をする前に売ってしまおう。
そう考えます。
そして実際に売りました。

そういう人が、他にもいたとします。
すると、A社の株価は安くなっていきますね。
需要と供給のバランスです。
欲しい人よりも、売りたい人が多ければ、価値は値下がりします。

すると、A社の株を持っている大勢の人々が、
少しでも「損を減らすため」に、一刻も早く手放そうとして、
大量の売りが出ます。そうすると、A社の株価の大暴落が起こる。

これは群集心理とか、集団心理のようなものなので、
本当に一夜にして起こりますね。

でも、ここで考えたいことがあります。
この動きはあくまでもヒステリーやパニックが原因で起こります。
それと、株価のようなものは、
売り買いしたときに初めて損や得がでますよね。
だから、市場に動きがあっても、慌てずにいてジッとしていることで、
また冷静さを取り戻せば、
その企業の株価は回復してきたりするものです。

もうひとつは、このような「乱高下」は、
短い時間で利益を出すために、わざと行われているのだ、ということです。
安くなった株は、逆に言えば買い時ですね。
もし株価がずっと真っ平らだったら、
短期の投資家にとって買う意味がない。

つまり、株価の乱高下はゲームの要素であって、
本当の評判ではない、ということもあります。
むしろ彼らは乱高下をすぐに起こすような神経過敏状態にいつもあって、
売ったり買ったりするためのきっかけを探して、
ちょっとした情報にいつも過剰反応することで
ゲームを成立させているわけです。

だから、ちゃんとわかっていれば慌てなくていい、
ということがありますよね。

今、企業の株価を例に出しました。
この場合、売りの理由になるのは、
その企業の今後の業績が信頼できるか、ということだと思います。

これを国家の国債というものだとどうなるでしょうか?

円という通貨の価値が暴落するというのは、
どういう場合でしょうか。考えて見ましょう。

市場が「円という通貨が信頼できるものである」と
判断する基準はなんでしょうか。
それは、国家の財務状況だと考えられています。
企業に例えれば、経営状態ですね。

獲得したお金と、支払うお金、その差し引きが黒字なのか、赤字なのか。
それが「経営状態」ですから、
財政赤字が膨らむと、国家の信用がなくなる。

財政破綻論を信じる人は、こう考えています。

例えば、コップがあって、そこに水を注ぐとします。
コップは「お金を返せる能力」で、水が「借金」だとします。

コップに水を注いで注いで、ついにコップの量を超えると、
水が溢れ出しますね。当たり前のことです。
これが財政破綻です。

そういうことが起こるじゃないか。そう考えます。
もちろん、通常の家計や企業では、こうなります。

しかし、国はお金そのものを作ることができる。
(通貨発行権を持っていますからね)
だから、コップのサイズそのものを増やすことができる。
だから財政破綻という概念そのものがない、ということですね。

そのことを理解していたら、まずパニックが起こりませんね。
ヒステリーも起こらないのです。
でも、その仕組みそのものを理解しているとは限らない。
知らない人がパニックを起こして、円を投げ売りする可能性はある。

そうなると、円の価値が暴落するのだから、
銀行が国債を買わなくなるじゃないか!
そういう心配がありますね。

念のために言うと、
政府が発行した国債を日銀が直接買うことは法律で禁止されています。
だから、いちど民間銀行が買って、それをさらに日銀が買う、
という方法で「通貨発行」がなされます。

つまり、民間銀行が国債を買わなくなった時が
日本政府が財政破綻する時だ!という意見が出るわけですね。

では、日本の民間銀行が国債を買わなくなる、ということを考えます。
通常、民間銀行も営利企業なのであって、
自社の利益に対して合理的な行動をとると思われますね。

当たり前です。

では、日本円という通貨の価値が暴落した時、
日本の民間銀行は、合理的な行動として何をするでしょうか?
考えてみましょう。

民間銀行はどうやって商売をしているか。
それは、民間人に「円という銀行預金」を発行して貸し付け、
返済するときに利子を取る。
その利子が銀行の利益になる、ということですね。

ここで注目して欲しいのは「円という銀行預金」を
発行するということです。
日本の民間銀行は、決してドルは発行できません。
ということは、「円」という経済圏と一心同体であって、
「円」という経済圏がなくなれば、銀行も根こそぎ存在できなくなる。

そういうことです。

では、「円」という経済圏はどこにありますか?
日本ですね。地球儀を見てください。「円の経済圏」つまり、
円という通貨が流通しているのは、この地球上で、
いや、全宇宙の中でも、この日本だけなのですよ。

・・・ということは、民間銀行は、自らの存立のために、
「円という経済圏」の存続を守りますね。当たり前のことです。

「円という経済圏」が存在できなくなるとは、どんなときですか?
それは日本という国家がなくなるときです。

日本という国家がなくなるかも知れない、という
本当の存亡の危機に直面した時、日本の民間銀行が、
自らの存立のために日本という国家を売るということは、
絶対にありません。

なぜなら、先ほども書いたように、
日本の民間銀行は「円」という通貨しか発行できず、
「円」という経済圏と一心同体の運命共同体だからです。

つまり、円の信認が毀損されるような国家存亡の危機のとき、
民間銀行は絶対に国債購入を拒否しません。
しかも、買ったらすぐに日銀が買い取るとわかっているわけですからね。

民間銀行が国債を買わなくなるなんて、
心配しなくていいのです。

通貨の信認、つまり「円の安心感」の根拠は、
日本という国がちゃんと問題なく存在している、ということなのです。

どうしても心配したいなら、
国家の存亡が危うくならないことを心配すべきなんですね。

企業に金を貸すときに、いちばん気にしなければいけないのは、
「お金を返せるか」ということです。
それが企業としての信頼の根拠なわけです。

では、ある国が発行する通貨について気にすべきことは?
「お金を返せるか」ではありません。
「問題なく安定して国家運営されているか」です。
戦争はないか?失業はないか?暴動はないか?そういうことですね。

日本にはすでに1100兆円の財政赤字があるのに、
日本国債の価値がまったく下がらないのはなぜか?
通貨発行権を持ち、国家が安定しているからです。

財政的にではありません。

そこがMMTの要件に「先進国」という条件が入っている理由ですね。
「安定した国が発行したものである」ということが、
人々がパニックにならない最大の理由なのです。

日本政府が発行する国債と、
企業の株を同列に考えることはナンセンスだし、
実際、そう考えていないから、今日もパニックは起きていないのです。

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