【エッセイ】引っ込み思案の美少女は「パチンコのパを抜いたらー？」とか言わない

　ギャンブルは馬鹿の娯楽だ。

　という暴言を毛布のようなオブラートに包んで、家訓の如く唱え続けてきたのがうちの母だ。母は堅実な人だが、ちょっと思想が偏っている。斯くいう高倉はというと、母の教えに忠実に、そして合理性を検討した結果として、金を賭け事に使うことはまず無い。
　金は使えば減るものであり、使って増やすなどというのは夢物語もいいところなのである。数百円で買った宝くじが一晩のうちに七億に化ける、などというのはサハラ砂漠で砂金を見つけるようなもので、もしかしたらラッキーを引き当てる人間もいるかもしれないが、それに期待して投資するのは費用対効果が低過ぎる。

　金を払えば確実に目当てのものが手に入る、そういう取引こそが正しくて信用できる。そうでないものには必ず裏があるし、絶対に金を使いたくない。馬にも玉にも金は出さないし、ソシャゲ課金なんてもってのほかだ。ガチャほど不毛な娯楽はない。
　食玩やガチャガチャも、できる限り回避したい娯楽だ。同じ金額を払ってハンドルを回しても、シュモクザメが出てくるのかジンベイザメが出てくるのかホホジロザメが出てくるのか分からない。ホホジロザメを期待してネコザメを引いた時の感情ってどうやって片付けるのが正解なんでしょうか。ネコザメも可愛いんですよ。可愛いんですけども。
　そんなわけで、ギャンブル関連の情報は全く知らないし知りたいとも思わない。パチンコ店の「新台入れ替え」に一体どれほどのどんな価値があるのかなんて興味もない。

　にも関わらず、パチンコとは無縁だった筈の女の子がパチンコ沼にズブズブクズクズに嵌っていく漫画「ぱちん娘」をうっかり一気読みしてしまった。ギャンブル潔癖の高倉が「パチンコって面白いんだなぁ……」と一瞬でも考えてしまったのだから、この漫画は間違いなく面白いし、プロの漫画家はやはり凄い。
　パチンコが好きな各位も、パチンコのパの字も知らない各位も、パチンコからパを抜いたらなーんだ？などと下賎なことを考えてしまう各位も、「ぱちん娘」を読めばきっとパチンコっていいかもなーって思っちゃうこと請け合いです。お時間、興味ございましたら是非是非でございます。このクオリティでまさかの完全無料です。

若林稔弥

　それにしても、近頃は何でもかんでも「娘」にするのが流行っているのだろうか。「ぱちん娘」はパチンコ台を擬人化する物語ではないからいいものの、「ウマ娘プリティーダービー」だの「艦隊これくしょん」だの「城姫クエスト」だの、擬人化、というか美少女化コンテンツは次から次へと湧いて出てくる。そしてどいつもこいつも結構成功している。既存の畑に娘を放り込むだけでこんなにも豊かになるものか……。

　もしや高倉も、「ペンより強い娘、眞木高倉！」とかになればバチクソ人気コンテンツになれたりしちゃうのだろうか。包丁を振り回す達磨が書いた文章よりも、娘が書いた文章ということにした方が読んでいる方もなんか、なんかウキウキするのでは？……えっこれ、結構、ナイスアイデアかもしれない。実はこの達磨の中身は引っ込み思案のスーパーキューティー美少女だったということにして、いっちょ乗ってやるか、このビッグウェーブに……！