【エッセイ】ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲
トゲ様による此方の記事を拝読して、古い記憶が蘇るなどしました。折角なので、此処に書き記して供養としたいと思います。
※女性器、男性器に関する話です。男女の身体的特徴を面白おかしくネタにするつもりはありませんが、捉え様では下ネタです。どうか自衛ください。
先に申し上げておくと、高倉は女の子です。股にチンチンはついておらず、おまんこがついています。……やはりこういう単語はちょっと、その、下品というわけではないのですが、あの、打つのが憚られますね。男性器、女性器でいいですか?
高倉家の家族構成は、父母、高倉、高倉の妹、の四人家族でした。男兄弟がいないので、日常的に目撃できる男体は父のみです。父とは比較的仲が良くて、そこそこの年齢まで一緒にお風呂に入るなどしていましたが、父の股間に注目したことはありませんでした。男性器の存在を思い知ったのが、父の実物を見たから、とかそういうシンプルなものであればよかったのですが。
高倉が父を通して理解したのは、「父と私は体のつくりが違う」ということ。そして、「父は私の体の都合をよく分かっていない」ということでした。
幼少期の高倉は外遊びが大好きで、手早く宿題を終わらせてはさっさと外に遊びに行く、結構お転婆な女の子でした。当時住んでいたのは父が働く大学の宿舎、階は三階。同じ宿舎には同世代の子供たちが何人か住んでいました。高倉は毎日近所の子供たちとつるんで、砂遊びやらかくれんぼやら影踏みやらをしていました。……まるで戦後のような遊びチョイスですが、平成の話です。普通にポケモンとかして遊んでる同級生もいました。
父は基本的に仕事で帰りが遅いのですが、たまに夕方頃に帰ってきては、外で走り回っている高倉たちを遠目に見守ってくれていました。夕飯の時間になったら「ごはんだよ、帰るよ」と教えてくれます。
確かあれは夏でした。いつもと同じように砂場で遊んでいると、急におしっこがしたくなったのです。子供の膀胱が小さいからか、単純な意識の問題なのか分からないが、子供は一度したいと思うと我慢が難しい。砂場は宿舎の敷地内ですが、家からはちょっと距離がありました。そうでなくても、三階ぶんの階段を上りきる前に絶対我慢の限界が来ます。
幸い、ちょっと離れた木陰に父が立っていました。友達に「ちょっとタイム」とか適当なことを言ってから砂場を飛び出し、父に「おしっこしたい、トイレない」と縋りつきます。
その時父は、怪訝な顔をして「そのへんで立ってしたらいいじゃん」と言ったのです。高倉は思わず凍り付きました。
これは「立ちションはよくない」という話でなく、男性が用を足すのと女性が用を足すのとでは、必要動作があまりにも違うという話です。
女性が用を足すには、下着を下すところから始めなければなりません。スカートならば脱ぐ必要はないかもしれませんが、ズボンは脱がないと無理です。ズボンを脱いで、パンツを抜ぎます。便器が無い場所で用を足すとなると、和式トイレと同じ姿勢になるのが自然でしょう。しゃがんで、股を開いて、用を足す。少なくとも高倉は「便器に座る」「しゃがむ」以外の用の足し方を知らなかったので、「立ってしたらいいじゃん」があまりにも想定外だったのです。立って?どうやって?足びたびたになっちゃうよ?
当時の高倉は知らなかったのです。男性は立ったまま、男性器をズボンからホースのように出して用を足すことができるということを。
硬直した高倉を見て、父も何かに気付いたようにはっとして、「そうだよね、ごめんね」と高倉を抱えました。何がごめんなのかは分かりませんでしたが、超特急でトイレに連れて行ってくれたことには今でも感謝しています。高倉の尊厳を守ってくれてありがとう、父。
その後、学校の授業で男性と女性の身体的特徴の話がちょっとずつ出てくるようになりました。男性の股間には男性器がついていること、女性のそれとは形があまりにも違うこと、男子トイレの小便器がどう使われているのか、をゆっくり学習していきます。やっと父の台詞の意味が分かって、男性器って便利だな、と思うなどしました。
男性の股間に男性器がついているということは理解したものの、こういう迂遠な学習の仕方をしたものですから、男性器の普段の運用については誤解ばかりしていました。教科書のイラストは可愛らしくデフォルメされていて、あまり事実を教えてくれません。男性の股間に棒が常にぶら下がっているなんて、そんな歩きにくくて仕方がないことがあるわけないと思ったので、男性器は普段股間からぐっと押し込んだ腹の中に収納されていて、必要な時だけ伸びて出てくるのだと思い込んでいました。正直今も、パンツを履いている時の男性器の状態や、歩いている時どうなっているのか、足を組んだら何がどこにどうなるのかよく分かっていません。
加えて、男性器のことは棒としか理解していなかったので、玉もついていることは結構長いこと知りませんでした。当時ブームだった漫画、銀魂を読みながら、「棒なのになんで「金玉」なんだろう」「玉が二個……?男性器は一本では?」と疑問ばかりが残ります。このあたりでやっと、男性器の形状と運用を一般常識レベルには理解することができてきました。高倉に男性器の概略図を教えてくれたのは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲でした。完成度が高くて助かります。
幸い高倉は、学校の性教育が貧弱なことで恥ずかしい思いをしたことはありませんが、必要な知識を銀魂で補完しなければならない程度の教育しか得られていなかったようでした。銀魂は最高の漫画ですが、教材としては些か過激です。
一通りの性知識程度は、どうにか公教育でカバーしてくれるようになることを望みます。
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