授業も終わって
午後の授業がおわり、トラムに乗って滞在先にもどっていく。雨もずいぶんと少なくなって、けっして天気がいいとは言えないけれど、まずまずといった調子で、雲から晴れ間がみえたりもしていた。まだまだ寒かったけれども。
トラムの中で今日の夕食をどうしようと考える。ある程度のなんとなくの料理の輪郭を頭の中に浮かばせて、その頭のままスーパーマルシェに入っていく。入り口には警備のお兄さんがいて、オレンジジュースのことでお世話になってから、挨拶をするようになった。大きいズッキーニ、パプリカ、トマトなど冷蔵庫になさそうな野菜をかごに入れていく。
レジは夕方前ということもあり、やはり長い列ができている(そのわりにはレジ打ちの人が少ない)けれども、だいたいの人がイライラするでもなく、ぼおっとして立ってならんでいる。そこに僕も同じようにぼおっとして並ぶ。
バゲットをパン屋で買って、滞在先にもどり、紅茶を飲んでひといきつく。そして、キッチンで料理を作り始める。
トマトを湯むきし、オリーブオイルをひいた鍋に、にんにくを入れトマトと炒めるようにして、そのまま煮込んでいく。フライパンでズッキーニ、ナス、パプリカを炒めて、色がかわってきたところで、それらを鍋に放り込む。塩、胡椒、スパイスを適当に入れて混ぜて、しばらくのあいだ弱火で煮込む。
バゲットを切りバターをお皿に添える。そうこうしていると、授業を終えた瑠衣さんが帰ってくる。
鍋の中では、野菜がしっかりと煮込まれている。お水も入れてないのに、よくこれだけの水分がでてくるなぁ、といつも関心してしまう。あんなに、大きかったズッキーニとナスが、しっとりと柔らかくなっている。出来上がったラタトゥイユをお皿にとりわけてハーブをのせる。
早めの夕食をとりながら、その日にあったことなどを話して、食べ終え、片付けを済ませて部屋に戻る。
瑠衣さんは、オートクチュール刺繍の学校での課題にとりかかる。クラスがあがっていくにつれて、針数や技術もずいぶんと増えていって、毎日のようにほとんど夜中になるまでとりかかっている。その横で僕は、旧式の白いマックブックを開いて、ビールを飲みながら、日記をつけたりとしている。たまに1人でムサオのいるバーでビールを飲みにいった。
パリにいるあいだの、平日の夜はこんなふうにして時間が過ぎていった。
そして、帰国する前日まで授業があって、それを終えると、最後の夜ということでオペラ座にバレエを観にいった。冷え込んだ日だったこともあり、その帰り道にはちらちらと雪が降り始めていた。そんな中、ステップを踏みながら帰っていった。
夜にパッキングをいそいそと行い、(そしていくつかのものをパッキングし忘れて)眠りについた。
翌日のお昼ごろに、シャルル・ド・ゴール空港からモスクワを経由して羽田空港へとフライトし、そしてそこから東京の自宅まではあっという間だった。あっという間に東京に戻ってきた。
♤ムサオのバーってほんといつも、若い人が集まってはおしゃべりしていた。(そして、たまに、その中の1人がやってきては僕に話かけてきた)
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