レパルスとメル、ふたたび。
レパルスとメルは、このところずいぶんとなついてくるようになった。水槽に近づいてのぞいてみると、「きたぞ、きたぞ。」と近寄ってきて、その長い首をのばしながら目をみひらいて僕の顔をみつめてくる。
そして、首を右左にうごかして「食事をとりたいよ。」という合図をしてくる。
しかし食事をあげるには、まだ少し早すぎた。
「きのう食べたばかりじゃないか。」と僕は首をふった。
「申し訳ないのだけれど、これいじょうあげることはできないんだ。家主に食事の時間のことはきつく言われていてね。」
レパルスとメルは目をみひらいたままだった。
「それいがいのことだったらなんだってしてあげるのだけれど、食事だけはだめなんだ。そこにはしっかりとした間隔というものがあって、それをいままできちんと守ってきた。それでいままでやってきてこれたじゃないか。」
レパルスは納得したように、すこしだけ首を甲羅のなかに入れた。
もともと彼は食事にたいして、それほど熱心に何かをもとめたりはしないのだ。気がむいたら食べるし、気がむかなかったらたとえ目の前に食事があったとしても食べない。そこにあればあるだけのものを欲しがるタイプじゃない。
ただメルはちがった。
「おまえが近づいてきたから、食事の時間かとおもったじゃないかよ。」
と、執拗に首を右にゆっくりとのばしてきた。
「気になって水槽をのぞいただけなのに、そんなあてつけがましいことを言われても困るよ。」「それに、そんなに食べたりしたら身体ばかり大きくなっていくだろう。まだ甲羅がおいつかなさそうじゃないか。」
と言うと、長い首をのばしたまま目をそらして水槽のむこうにいってしまった。
メルにとって甲羅のことは、デリケートな問題だったみたいだ。
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