ムースショコラのために
ムサオのバーにいってカウンターでビールを飲んでいた。テラス席ではいつものように若者が集まって楽しそうに話をしながらお酒をのんでいる。そのうちの一人がビールを頼むために、カウンターで注文をしにきた。ビールがつがれているあいだに日本人がそこにいたのが珍しいのか、話かけてきた。
「ニホンいったことある。」「キョートとトーキョー。」
「僕は東京からきていて、近所にしばらく滞在しているんだよ。」
「スバラシイ。」「パリはいいでしょう。」
話をしていると、もう一人カウンターにやってきた。
「コノヒとニホンじん。」「ちかくにスンでいる。」
「コンニチは。」「ボンジュール。」
笑顔で挨拶をして、最初にきた一人を連れてみんながいるところに戻っていった。ビールをのんでしばらくぼんやりとしていると、後ろの方で
〈カンカンカン〉と音がしてきた。
〈カン カン カン、カン カン〉
と一定のリズムで、何度もその音は店内で聴こえている。
ムサオだった。
ムースショコラを作るために、かき混ぜていたスプーンでお皿をたたいていたのだ。それをみつけ、「何かと思ったよ」というと、ムサオは笑っていた。
♤ムサオはサンドイッチもつくれる
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