鬼滅の刃で中学英語#52〜「お前たち」って英語でなんて言う?
英語で、「あなた、君、お前」に相当するのはもちろん「you」ですけど、「あなたたち」「君たち」「お前たち」は何?
「you」の複数形だから、「s」をつけて「yous」ですか? 聞いたことのある「yours」ですか? 違いますね。
学校では、「you」の複数形は「you」、と習いますね。
学校英語では、「人称代名詞」(アイマイミーマイン…のやつ)を覚える中で、「you」は単数も複数もあるということを扱いますから、そこでいきなり登場することも少なくありません。
しかし、「you=あなた」で覚えたのに、「you=あなたたち」という意味も追加されてしまうと、「you」の意味がなんとなくボヤけてしまいませんか?
それは何も我々日本人だけが思うことではなかったのです。
特定できない「you」
「あなた=you」「あなたたち=you」というのが、すんなり納得できる人はいないでしょう。
テストの問題として、「こうなってるから」と自分を納得させることはできても、「なんで一緒でいいのか?」というギモンは消えません。
まぁそれでも英語を話すことのない日本人が、その辺のギモンを意識する機会はありませんよね。
でも、実際、英語圏の人はどうするんだって話ですよね。
たとえば、先生がイタズラをしてる男子たちを見て
あなたたち、何してるの!?
と言う日本語を「you=あなたたち」で英語にした場合、
What are you doing!?
になります。
でもこの訳は、
あなた、何してるの!?
と同じですよね。
このように、英語の「you」だと、それが1人(単数)なのか複数なのか特定できないんです。
英語圏での一般的な表現は…
しかしこれもおかしな話ですよね。
たとえばイタズラ少年が三人いて、実行犯が一人の場合、「You!」と言われたとしても、「俺のことじゃない」と逃げることもできてしまいます。
一つだと「a ○○」のようにしたり、「数にこだわる英語」にしては、なんだかおかしな事態になりすよね。
ですから、英語ネイティブでは、まとめてこう呼ぶことが多いんです。
You guys!
(あなたたち!)
ここで使われている「guys」は「guy」の複数形です。
「guy」の意味としては、「男の人、若い男」を意味していますが、「guys」で「君たち、君ら、みんな」のような意味になります。
(ウィズダム英和辞典より)
だから、
「You guys=あなたたち」のような意味を表現することができるのです。
実際、英語ネイティブ向けの『鬼滅の刃』翻訳版『Deamon Slayer: Kimetsu no Yaiba』でも、結構「You guys」は使われています。
たとえばこちらのシーン。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.2』/原作『鬼滅の刃』第2巻)
You guys stink like rotten oil!
お前たちは腐った油のような匂いがする
※stink=悪臭がする、という動詞(発音)
炭治郎の初任務で遭遇した、若い女ばかりを喰らう沼の鬼たちに対して、「お前たち=You guys」を使っています。
ただただ「You」の後に「guys」を追加するだけで複数形になるので、とっても使いやすいですね。
冨岡さんのあのセリフも!
「お前たち」で有名なのが、冨岡義勇さんの
俺はお前たちとは違う
というセリフですね。
アニメ派の人にはなんのことやらですが、その真意はコミックスで確認いただくとして、このセリフが鬼滅英語版でどう訳されたのかを見ていただきましょう。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.15』/原作『鬼滅の刃』15巻)
I'm different from you guys.
俺はお前たちとは違う
※be different from~=~とは違う
こちらも「お前たち=you guys」ですね。
この文で「guys」がなくなっても、「俺はお前とは違う」という文になるので、ホント、「guys」をつけるだけで複数とわかるのでカンタンです。
それじゃぁ「お前ら」は?
ちなみに英語は、「I=私、俺、僕、あたし」などのように、日本語のように人によって呼び方を変えない言語です。
当然それは「you=あなた」も、「君、お前、テメエ」などに翻訳できると言うことですが、では、「お前ら、テメエら」みたいな表現はどうするのかというと・・・やっぱ同じなんですね
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.4』/原作『鬼滅の刃』第4巻)
What are you guys doing?!
何してんだァ お前ら
口の悪い伊之助の「お前ら」も「you guys」になります。
なお、この「What are you guys doing?」は、最初にあげた「you=あなたたち」で使った例文が「you guys」になっているだけですね。
この方が、特定の人(たとえば炭治郎)だけじゃなく、炭治郎たち「みんな」であることがわかりやすいから、ネイティブではよく使われる表現なんですね。
「guys」の問題点
そんな便利な「you guys」がなぜ学校で教えてもらえないかというと、辞書的には「you=あなたたち」で正解だから、というのが一番大きいと思います。
また、そもそも「guy」という言葉自体、あまり「綺麗な英語」ではない(スラング)と言われて来た歴史があるから、というのもあるでしょう。
そもそも「guy」は男の人を指しており、それを使った「男の人たち、野郎ども」を指す「guys」が生まれ、それがもっと幅広く使われるようになって、今や性別関係なく「guys」が使えるようになったわけですが、学校は「教科書英語」を教えるところなので、意味がカッチリ決まっていない言葉は教えづらい、ということでしょうね。残念。
ちなみにこの「guys」は、イギリス発祥の「英語」ではなく、アメリカで生まれた「米語」です。
しかし、今やボーダーレスの時代。
アメリカで作られたハリウッドドラマや映画でよく「you guys」が使われているせいなのか、イギリスでも「you guys」が通じるようになったりしているそうです。
(イギリスでは元々「you lot」を使うらしい)
別の表現もある
英語の「you」に単数と複数両方があるようになったのは、歴史の過程で現在こうなっているだけで、以前は違ったそうです。
なんで「you」が単数と複数どちらでも使えるかというと、それでもネイティブの人でも「わかるから」だそうですが・・・
しかし、英語は今や国際語。
当然それだと使いづらい、わかりづらい部分が出来てしまうので、「you guys」「you lot」という日常会話表現があるのでしょうし、だからこそ、色んな国の人に見てもらうドラマや映画、鬼滅の英語版も「you guys」を使っているのかもしれませんね。
とはいえ、英語には他にも、もっとわかりやすくするために、こんな表現を使うこともあります。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻)
Are you two human?
お前ら人間か?
「you」のあとに、「two=2人」が入っていますね。
つまり、
you+人数
で、「あなたたち」とすることができるわけです。
一気に、「数にこだわる英語」っぽくなってきましたね。
ちなみにこの表現、「you+人数」ですが、たとえば上記の「you two」ならば、「お前ら二人」「あなたたち二人」という風な訳も当然オッケーです。
実際、他の巻には、こんな表現もありました。
(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.10』/原作『鬼滅の刃』10巻)
I decide who shines brightest and takes priority.
俺は派手にハッキリと命の順序を決めている
You three come first... then reliable assistants... and then me.
まずお前ら三人 次に堅気の人間たち そして俺だ
※come first=第一に優先する
英文翻訳が原作からすると一部ちょっとおかしい気もするけど、とりあえず「お前ら三人=you three」になっているところはわかっていただけたかな、と思います。
英語と日本語は、まったく異なる歴史で成長してきた言語なので、すべてを日本語の感覚で理解しようとはせず、「あなたたち」というのは、「you」でも表せるけど、「you guys」や「you+人数」でより特定して表せるよ、ということを理解しておくことが大切、なんですね。
本日のまとめ
・「you=あなたたち」
・複数をわかりやすくするために、「you guys」という表現もある
・「you+人数」で「あなたたち」もしくは「あなたたち○人」になる
・当然「あなたたち、君たち、君ら、お前ら、テメエら」は英語では同じ
*ちなみに冒頭に出てくる「yous」ですが、アイルランド英語では「you」の複数形を表すらしいですよ!
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