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鬼滅の刃で中学英語#17~動詞に+αして炭治郎の想いやりを表現する~

前回はシンプルに、「I+動詞+you」の例をご紹介しましたが、今回はさらにその応用編です。

「I+動詞+you」を日英で比較する

「I+動詞+you」は、英語ならではの表現です。

日本語は英語みたいに、毎回「I(私)」を使うなんてことはありませんし、なくても意味が通じます。でも、英語はそうじゃないとダメだという明確な理由があります。

ちょっと、『鬼滅の刃』原作と、英語版を比較して見てみましょう。

『鬼滅の刃』第2巻の、炭治郎の初めての任務で、若い女ばかり喰らう鬼(沼鬼)を倒すためにたどり着いた街で、男の人(和巳)が憔悴(しょうすい)した状態でさまよっていたんですね。

一般の人には「鬼」という存在は知られていませんから、一緒にいたはずの婚約者(里子)が一瞬で「行方不明」になったということを、ここに登場している和巳さんは誰にも信じてもらえなかったんですね

だから炭治郎にも「信じて貰えないかもしれないが…」と卑屈になって言った時に、炭治郎が「信じます!」と何度も伝えるシーンです。

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別におかしく感じませんよね?

これを英語版(Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.2)でどう表現されているかを見てみましょう。

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I believe you!
(信じます!)
I absolutely believe you!
(信じますよ!)
※believe=信じる、言うことを信じる、という動詞(発音

出ましたね、「」と「you」。

これもさんざん紹介してきた「I+動詞+you」の表現で、この場合は「信じる」を意味する一般動詞「believe」を使って「(自分はあなたのことを)信じます」と伝えているわけですね。

“動詞だけ”じゃダメ

日本語では「俺」も「あなた」もなくて、ただ「信じます!」となっていますが、英語で同じように動詞「believe」だけで書こうとすると、

Believe!
(信じろ!)

というように、命令的になってしまい、意味が変わってきちゃいます

日本語は動詞の語尾の変化(活用*)で命令形を表すんですが、英語は全然違う方法でやるんですね。
*信じる⇒信じろ(上一段活用)

そのため、日本語と同じような方法で考えていたら絶対に正しく伝わらない。

だから、日本語では「私」という言葉がどこにもなくても、英語では「I」が使われます(命令形をのぞく)。

たとえばここで、「I believe!=(俺は)信じます!」だけでも使えないことはないのですが、それだと「誰を?」「何を?」というものが聞きたくなるのが英語の性質で、だからその後に「you」という目的となる語(目的語)を入れているわけです。

このシーンでは、「信じて貰えないかもしれないが…」と卑屈になる和巳自身を、炭治郎が受け入れますよというニュアンスを伝えるために、「you」が入っているんですね。

つまり、

I believe you.
(あなた/あなたのことを信じます)

という意味なんですね。

だから、ここでは「I believe you」という表現が正解なんですね。

一般動詞でも「副詞」が追加できる

be動詞の時にもご紹介しましたが、文の意味を強くしたり弱くしたりするのに「副詞」を使いますが、一般動詞でも同様に副詞を使うことが出来ます。

先ほどのシーンの下段にそれが登場します。

ibelieve - コピー (2)

I absolutely believe you!
(信じますよ!)

同じような「believe」という「信じる」という意味の動詞を使った表現ですが、「absolutely」という単語が追加されていますね。

「absolutely(発音)」は、「絶対に、まったく」という意味の副詞で、動詞の意味をより強くする働きがあります。

この場合では「absolutely believe」とすることで、believeの意味をかなり強くして「絶対に信じますよ!」という意味にしてくれています。

I absolutely believe you!
(俺は絶対にあなたのことを)信じますよ!

そもそも、『鬼滅の刃』原作の文章ではシンプルに、「信じます!」「信じますよ!」と書かれているだけなのに、なぜこんな「副詞」を追加されているかですね。

それは、2回目の「信じますよ!」は炭治郎が相手(和巳)に向かって強く訴えるために和巳の方をまっすぐ見ていますし、文字サイズもじゃっかん大きくして、強めの意味を表しているんですよね。

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そして、それを英語で表現しようとしたときに、「absolutely」という「絶対に○○です」という意味のある言葉を追加して、それを(英語圏の人に)わかりやすく表現したんでしょうね

ちなみにこの「absolutely」は、そのまま「Absolutely!(当然だ)」とか「Absolutely not!(絶対ない)」というような使い方もするくらい、かなり強めの副詞ですので、「信じて貰えないかもしれないが…」と卑屈になる和巳の言葉を強く否定する意味もあるんですね。
(下記はDemon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.8より)

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ちなみにこんな使い方も

ちょっと上級編です。

「I absolutely believe you!」の後のコマのフキダシに、炭治郎が鬼の匂いが残っていないか確認する土下座みたいな姿勢になって、下記のような言葉を叫んでいましたね。

ibelieve - コピー (2)

Truly!
(信じる)

この部分は、原作では「信じる」で、英語版では「Truly!(発音)」という言葉を使っていますが、この英単語そのものに「信じる!」という意味はありません*。
*truly=本当に、偽りなくという副詞

ではなぜここでこの言葉を使ったかですが、「truly」は、語尾の「-ly」を見ていただいてもわかるように、これは「absolutely」と同じ副詞です*。
*ただし、形容詞でも-lyを使うことがあるので百パーではない

副詞をこうやって使うこともできるのですが、あくまでもこの「truly」は、「absolutely」の延長線上の表現で、

I truly believe you!
(俺は本当にあなたのことを)信じてます!

ということを、「absolutely」という副詞に、さらに「truly!」という副詞を重ねて使って、もうとにかく全面的に信じているんだ、だから安心してほしい、ということを伝えようとしているわけですね(おそらく)。

また、そうすることで、相手に対してとても配慮のある、想いやりの強い炭治郎の性格をしっかりと表現しているんですね。

このように、ただ日本語⇒英語に訳しているのではなく、キャラクターがどういうキャラクターで、どんな言葉で表現すると「らしさ」が伝わるかを苦心して英語版が作られてるってことがよくわかりますよね。

本日のまとめ
・I believe you.=(あなたのことを)信じます
・I absolutely believe you.=(あなたのことを)絶対に信じます
・I truly believe you.=(あなたのことを)本当に信じます
・「I+動詞」の形は大事

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