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noteで学べるシステマ講座 第28回「強いリラックスと弱いリラックス」

リラックスを分類する

リラックスには種類があります。

まずは「動的なリラックス」と「静的なリラックス」

前者はスポーツや武道など、体をアクティブに動かす際に用いられるリラックスです。緊張しすぎていると動きがギクシャクし、エネルギー効率や動作の精度が大幅に低下するので、余分な筋収縮を減らすことで動きの効率を高めます。

もういっぽうの「静的なリラックス」は、体を休養させて回復するためのもの。寝転んですっかり筋肉をゆるめるようなリラクセーションがこれにあたります。

ただマーシャルアーツ的には、これとはまた別の分類が出てきます。

「強いリラックス」と「弱いリラックス」です。

「強いリラックス」と「弱いリラックス」

相手が勢いよく攻めてくるときに「リラックスしろ」と言われても、「そんなのムリ!」というのが普通のリアクションです。敵を前にして力を込めて身構えていけないなんて怖いに決まっています。

そう。リラックスには恐怖心が伴います。その人が力みに頼って生きてきた場合、ここぞと言う場面ほど力みの力を最大限に利用しようとします。危機的な状況でこそ、もっとも頼りになる状態に頼る。ごく普通の反応と言えるでしょう。

ヴラディミア・ヴァシリエフは先日のウェビナーでこう言っていました。

「リラックスすると恐怖心が生じる。それはリラックスすると、力を失う気がするからだ」

だから力が満ちるようなリラックスを身につけます。システマでの最優先事項はサバイブです。リラックスではありません。たとえガチガチに力んでいても、生き延びられればいいのです。だからガチガチに固まるよりも力が増し、パフォーマンスが高まり、なおかつそれが実感できるリラックスである必要があります。

つまり力を失い、恐怖心が増す「弱いリラックス」ではなく、生きる力を増す「強いリラックス」をシステマのトレーニングで鍛えていくのです。

強いリラックスと弱いリラックスの違い

強いリラックスと弱いリラックス。両者の違いは漠然とイメージできるかと思います。「そりゃそうだよね。なに今更いってるの?」と思う人も多いのではないでしょうか。

でもこの2つに「力み」を加えた3つの区別があいまいなままでいる人をけっこう見かけます。「強いリラックス」と「力み」の区別がつかないのです。ここで曲者なのがマーシャルアーツのトレーニングです。どちらにしても練習の場で思い切りやればそれなりに技が通ります。自分を心底騙し、「自分はリラックスしている!」と自己暗示をかけて力いっぱいやればそこそこ技が成立しますし、見ている人もそれがリラックスの力であると信じてしまうことでしょう。

ただそれは練習の場での話。本当に追い込まれたときにはそんな誤魔化しは通じませんし、練習以外の日常に活かすこともできません。

「弱いリラックス」「強いリラックス」そして「力み」

その3つをどう区別するのか。感触としては分かっていてもより普遍的な原理として言語化するのはなかなか難しいものですが、先日、練習中にはたと気づくことがありました。

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