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noteで学べるシステマ講座 第34回「システマ式セルフケアガイド」

セルフマッサージのススメ

コロナ騒動の中、システマ創始者ミカエル・リャブコがソーシャルディスタンス環境でも可能な、もっとも有効なトレーニングの一つとして挙げたのが、自分で自分をリラックスさせる各種のセルフケアでした。

自分自身の身体に潜む緊張を探り、触れ、ゆるめていく過程を通じて、人の身体に触れる感性と力加減を身に着けていくことができます。

これは自分というサンプルを徹底的に深堀りすることで、人間そのものへの理解を深める「人間の質的研究」と言うことができるでしょう。

(※質的研究:少数のサンプルを深く精査することで普遍的な傾向を掴むリサーチ法。これに対して一般的なアンケートなどのように多数のサンプルを集める方法は「量的研究」と呼ばれる。質的研究と量的研究の違いについてはこちらが分かりやすいです。)

鏡の法則

これは書籍「EDGE」でも解説されている考え方です。自分のことがわかれば、相手のことが分かるという法則です。相手の身体や心理をいくら読もうとしてもうまく読めるものではありません。でも自分の身体や心理状況をつぶさに観察していくと、少しずつ他者のことも理解できてきます。つまりシステマで重視される「自分を知る」ことが「他者を知る」ことにそのまま繋がるのです。

「自分のことも分からないのに、他人のことなんて分かるわけないだろ」

確かミカエルだと思いますが、システママスターがそう言っていました。これはひっくり返せば「自分を知れば、他人のことも分かる」ということです。これは実際にそうで、私自身も未熟なレベルながらこのことを痛感しています。

システマでいう「緊張」について

システマではしばしば「緊張」や「テンション」という言葉が用いられますが、これは必ずしも「筋肉のこわばり」だけを意味するわけではありません。システマのトレーニングを難しく感じる理由の一つに緊張を「筋肉のこわばり」、リラックスを「筋肉の弛緩」と、無意識的に脳内変換してしまうことが挙げられます。それによって、解釈の齟齬が生まれて「理解できない」「難しい」という感想になるのです。

システマでは筋肉に限らず、硬くなること全般を緊張と総称します。

だからミカエルが「お酒を飲むと肝臓が緊張する」というのは、アルコールによって肝臓が腫れて固くなった状態を指します。「バーニャ(ロシア式サウナ)にいけば血管がリラックスする」というのは、加熱と冷却を繰り返すことで血管がマッサージされて柔らかくなることを指します。

だから肝硬変や動脈硬化なども緊張の一種です。身体は異常が起こると、だいたい固くなります。医師や看護師が触診で見つける異常も、だいたい柔らかくあるべき部位が固くなっていることでわかります。(それについてはフィジカルアセスメントのテキストを読んでみると勉強になります。)

だから皮下脂肪層のセルライトは「脂肪の緊張」ということができます。だからシステマのリラクセーションは筋肉に限定せず、皮膚、内臓、関節、皮下脂肪などあらゆる領域をゆるめるつもりで行います。

マーシャルアーツ&ヒーリング

セルフコンディショニングによって自分への理解を深めれば、他人のことをコントロールしやすくなります。それはつまり相手を癒すことも制することもやりやすくなるということです。だから「癒やし=ヒーリング」と「制圧=マーシャルアーツ」は一体のもの。人を導くという意味では、車の運転でハンドルを右に切るか、左に切るかという違いでしかありません。だからシステマでは活殺自在が普通のかたち。ヒーリングだけ得意、マーシャル・アーツだけ得意といったことはありえません。車の運転で「右折が得意」とか「左折が得意」とかありえないのと同じで、適切なプロセスでシステマのトレーニングを積み重ねていれば、自ずとすべてが進展するはずなのです。

基本となるテクニック

押す

緊張にプレッシャーを与えます。手で押すものと足裏で踏むものの大きく2種類あります。指先、拳、手のひら、足の裏など、接触面積と重さで様々な使い分けができます。

叩く

緊張を叩きます。軽く握った拳や手のひらを用います。いずれも手の重さを利用して、柔らかく叩くのがポイントです。

揺する

体をゆすります。セルフでは手でゆすりますが、パートナーに施す際は、タオルなどの布で吊って揺するやり方があります。

つまむ

緊張をつまみ上げます。体は骨、筋肉、皮下脂肪、皮膚が積み重なったレイヤー(層)構造になっています。疲れたり筋肉の緊張が継続したりすると、層の間に老廃物が蓄積し、膠のように接着します。筋肉の層に脂肪の層が癒着すると脂肪の層がテーピングのように関節の動きを妨げます。その癒着を剥がすのが「つまむ」やり方です。

各種システマ式セルフケア

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