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noteで学べるシステマ講座 第19回「リャブコ家とコサック」

ロシア古武術としてのシステマのルーツ

ミカエルが提示する様々な情報から、システマの秘められた歴史が垣間見えます。

戦勝記念日のインタビューではミカエルは自身の戦歴について語ってくれました。ミカエルは非常にオープンな性格で、気が向きさえすればなんでも話してくれます。そこから得られる断片的な情報が、システマの哲学や成立の背景を理解するうえでの重大な情報がぽろっと漏れてくるものですから、一言一句聞き逃がせません。「断片的ミカエル・リャブコ伝」ではそれまで明かされなかったミカエルの戦歴が明らかになりました。

あまりに価値ある情報だったので「なんでいままで教えてくれなかったの?」と逆ギレ気味で聞いたら平然と「誰にも聞かれなかったら、言わなかっただけだ」との返事。そうなんです。ミカエルは基本的に質問されたことに対してはとてもオープンに答えます。それは裏を返せば、「聞かれないことには沈黙を守る」ということなのです。だから今までにない答えを引き出したければ、そういう質問をしないといけないのです。

これが非常に大変なのです。

然るべき質問を、然るべき人物が、然るべきタイミングでする。

この3つの条件が揃わなければ(あるいはそろっても)、得たい情報が得られないのです。

北川はもともとフリーライターとして、色々な人にインタビューをしてきました。その中でミカエルは極めて異質です。とてもオープンであると同時に、クローズドなのです。禅に啐啄の機という言葉がありますが、その人のレベルで理解できる範囲のことしか、決して話さないのです。

だからミカエルからより深い情報を引き出したければ、それだけ深くミカエルを理解しないといけません。それはDVDや動画でも可能ですが、さらに深めるにはミカエルの思考の背景にまで理解を深める必要があります。端的に言えばロシアの文化や歴史について。中でもミカエルに大きな影響を与えたであろう事柄について、知っていくのです。

今日、探っていきたいのは「ロシア古武術」として見た場合のシステマのルーツについてです。

多種多様な「コサック」

リャブコ家がルーツを持つのがコサック。これはミカエルがしばしば公言していることです。「コサック」というのは実はフランス語のカタカナ表記なので、ロシアでは「カザーク」と発音されます。このコサックには色々な種類があります。ウィキペディアで調べても見ても、ウクライナ・コサック、ザボロージャ・コサック、ドン・コサック、クバーニ・コサックなどなど様々なコサックが出てきて面食らうことでしょう。さらには日本語で検索される情報はわずかなもの。英語やロシア語で検索してみると、大変な数の情報がヒットします。

ではミカエルに縁があるのは、どのコサックなのか。それを突き止めるために、これまで得られた断片的な情報をつなぎ合わせてみましょう。それらをヒントにして、ミカエルとコサックにどんなつながりがあるのかを、探るのです。

そこで助けとなるのはミカエルにまつわる、コサック由来の品々です。

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