2024 共通テスト現代文の分析
〇大問1
【全体所感】
・ 総じて旧センター試験の雰囲気を感じさせる問題だった。
→受験者の減少を気にして、奇を衒った問題を減らしているようにも思える。(現代文は)
・ 問6は2023ならびに2022の追試験に近い形式。
・ 文章量は例年比やや多め。(後述)
・ 理由説明問題の出題割合が高かった。
(参考)問1と最終問題をのぞく問題においての2021-2023本試/追試の出題割合
換言:78% 理由:11% 表現・構成:11%
➤ 2024年は2/4題が理由説明問題。
・難易度はやや平易~標準。
【形式分析】
<出典> 渡辺裕『サウンドとメディアの文化資源学 境界線上の音楽』(2013)
→2017 東洋大学(2/9)等で同一出典から出題。
<字数> 約3,900字
→例年比15%増。共通テスト(本試/追試)以降、評論では最長。
(※参考 共通テスト評論の平均字数 約3,400字)
<設問> 問6まで/解答番号12まで
→例年並み。
【内容分析】
<作問方法>
(問2~5)例年通り
→ 共通テスト評論は文章の内容のまとまりの単位で傍線部が引かれて作問されるが、その傾向が引き継がれた。
(問6) 追試験で頻出だった問題の出題
→ 生徒が作成したレポートについてその表現を修正したり、内容を補足する問題は2022/2023年の追試験の最終問題で出題されていた。その意味で、過去問研究ならびに演習を深く実施していれば特に初見でもない問題であった。
<各問題の分析>
問1 漢字問題
→ 2021年以来、「意味」を問う問題が出題されなかった。
<所感> 以前講座を作った時にスタッフに協力してもらい、ピックアップしたが、そもそも複数の意味を持つ常用漢字は30~40程度しかなく、量産できるものではないと感じていた。追試験でどのように出題されるかを注目したい。
ア 掲載【2000年 国語Ⅰ追試で出題】―掲出【2012年 国語追試で出題】
イ 活躍【おそらく初出】-面目躍如【おそらく初出】
ウ 催し【2006年追試で出題】-催眠【「サイ」は開催で2006年追試で出題】
エ 悪弊【おそらく初出】-疲弊【2012追試・2007年本試で出題】
オ 紛れ【おそらく初出】-紛糾【2014追試・2007年本試で出題】
[所感]エの悪弊に迷う受験生が出てきそう。その他は例年並み。
問2 理由説明 標準
→ 最初のまとまり(1~6段落)から考える問題。
【正答分析】
<根拠> ⑤ …紛れもなく宗教行事
→ <正解選択肢> 典礼を構成する一要素
<根拠> ⑤ …その音楽自体を「鑑賞」の対象としている
→ <正解選択肢> その典礼から切り離し音楽として鑑賞することもでき、
<根拠> ⑥ …典礼をも巻き込む形で全体が「作品化」され、「鑑賞」の対象になる
→ <正解選択肢> 典礼全体をひとつのイヴェントとして干渉するような事態も起きているから。
[所感] やや根拠からの換言が捉えにくいかもしれない。最初の傍線部問題で緊張し、取りこぼす受験生も一定数いるように思える。とは言え、共通テストにおいては標準的な問題である。
問3 換言問題 やや平易
2つ目のまとまり(7~8段落)から考える問題
【正答分析】
<根拠> ⑦ …単に「もの自体」を見せるのではなく、それが使われたコンテクスト全体を見せ/…その背景となった時代全体を主題化した…
→ <正解選択肢> 展示物をその背景とともに捉えることで、
<根拠> ⑧ …かつては「聖域」として仕切られた「作品そのもの」の外に位置していたはずの現実の時空もろとも、美術館や博物館という「聖域」の中に引きずり込まれた状況
→ <正解選択肢> 美術館や博物館の内部で…
[所感] 根拠と正解選択肢の表現がほぼ一致するので、そこまで難しくないと思われる。
問4 理由説明 標準
3つ目のまとまり(9~10段落)から考える問題
【正答分析】
<根拠> ⑩ 「音楽」や「芸術」という概念を繰り返し使っているうちに、それがいつの間にか本質化され、最初から「ある」ような話にすり替わってしまい…
→ <正解選択肢> …それ自体が本質化され、普遍的な価値を持つものとして機能してしまいかねないから。
[所感] 各選択肢の1文目が「ほぼ同じことを言っている」ことに気づけると解きやすいが、気づかないと苦しいかもしれない。ある程度現代文が得意な生徒は難なく正解できたのではないだろうか。
問5 文章構成の問題 やや平易~標準
[所感]2022年の追試験以来の出題。上記の通り、「まとまり」を意識して解いているとわかりやすい問題である。
問6 レポート作成の問題 ⑴ 標準 ⑵ 標準 ⑶ やや難
[所感]空欄補充ではない脱文挿入が出題されたのは、センター試験以後おそらく初めてではないか。最後の結論問題は追試験でも頻出だった。慣れていないと少し手間取る生徒が多いので、やや難とした。
〇大問2
【全体所感】
・ 受験生と同時代・同年代(に近い)の人物の作品は2021年の第二日程で出題された津村記久子『サキの忘れ物』以来。最近の傾向(受験生と異なる時代背景/年代)とは少し異なる出典。
・ 一方で「フーライボー(風来坊)」や「やもめ」など注はありつつもあまりなじみのない言葉も多く、その点でやや読みづらさを演出している(のかもしれない)。
【形式分析】
<出典> 牧田真有子『桟橋』(2017)
<字数> 約3,000字
→例年比16%減。共通テスト(本試/追試)以降、評論では最短。
(※参考 共通テスト評論の平均字数 約3,600字)
<設問> 問7まで/解答番号13~22(10問)まで
→例年並み。
→文章のボリューム、設問数と構成は2023年の追試験に近い。
【内容分析】
<作問方法>
(問1) 語彙問題
→ 本試験では2021年以来だが、2023年の追試験で出題されている。
(問2~5)比喩換言問題の出題
→ 問2で文章中の比喩を換言する問題が出題された。これは共通テストにおいては初、遡っても2018年追試中野孝次『鳥屋の日々』の問4で出題されて以来である。その他は例年通り場面ごとに考える人物の心情・様子に関する出題であった。
(問6) 表現問題
→ 本試験では共通テストになってからは初だが、追試験では2022年以降、毎年出題されている。その意味では追試験の研究は大事なのだろう。
(問7) 資料問題と会話文問題
→ 2022年の追試験の最終問題と同様の形式の問題。
<各問題の分析>
問1 語彙問題 ア 標準 イ 平易 ウ やや難
[所感] 先述の通り、2023年追試験で出題されているので、この問題の復活に驚きはない。しかし、ウ「やにわに」は分からないのではないか。
問2 比喩換言問題 やや平易
第一場面(~19行目)に関する問題
[所感] 先述の通り、数年ぶりに比喩換言問題が出題された。この手の問題は「傍線部そのもの」の解釈が大事になるので「傍線部の前後」ばかりを見る受験生にとっては時間がかかるかもしれない。
問3 様子の理由説明 やや平易
第二場面(21~46行目)の前半に関する問題
<根拠> 29~32行目
[所感] 心情・様子の問題はその原因となる出来事を根拠とするのだが、今回は傍線部の直前が根拠となる。ポイントは29行目の「おばさんと話すのは億劫?」という会話文から答えを考えることであろう。
問4 様子の換言 標準
第二場面の後半と第三場面の冒頭に関する問題
<根拠> 前半 30~32行目 後半 43~46行目
[所感]問3と手順は同じである。「糸屑を拾う」の行為の原因となる出来事を考える。根拠が問2とやや重複している。センター試験・共通テストを通じて設問解答上の根拠が重なるのは珍しい。
問5 心情の換言 やや難
第三場面(34行目以降)に関する問題
<根拠> 60~64行目
[所感]基本的には問3.4と同じ手順で考える。おそらく、選択肢③と迷うのだろう。直前のみを見ていると「おばとの生活」に関するものなのだが、実際は60行目以降の「おばという人物」に関することが原因となる出来事となっているので、正解選択肢は②となる。
問6 表現問題 標準
表現問題は本試験では2020年のセンター試験以来の出題だが、2022・2023年の追試験では出題されている。選択肢の構造(表現の説明+その効果の説明)を捉え、「効果」で正誤を判定すれば正解に至る。
問7 資料+会話文問題 ⑴ やや平易 ⑵ 標準
先述の通り2022年の共通テストの最終問題と同様の形式をしている。
⑴はXであっさりと決まる。
⑵は前後の文脈と【資料】をもとに考える。
【総評】
やや平易~標準的な問題であった。(完)
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