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2022入試 問題研究⑮ 富山大学の現代文

◇前回までのおさらい

先週はジブリパークのお隣、愛知県立大学の分析でした。

なぜか同時に名古屋大学の記事も読まれていました。

◇富山大学の国語(概論)

今週は北陸地方の大学の分析をしていなかった…と思ったので、富山大学の分析を行うことにしました。

富山大学の国語の特徴は以下の通り。

⑴「現代文+古文」の2題構成
⑵ 現代文は客観問題も出題される。
⑶ 記述問題は年により分量が大きく異なる。(直近では2021が最多)
⑷ 2022年は最後の記述問題の字数が二〇〇字から一二〇字に減少した。

私大で言うと同志社と立命館を合わせたような、そんな印象です。

◇出典確認

安田敏朗 『国語・日本語・帝国―言語的暴力を覆い隠すもの』
2005年の論文です。

◇設問解説

問一 漢字  難易度 やや平易

(ア) 強迫  (イ) 契機  (ウ) 露骨  (エ) 空疎  (オ) 即物的

全問正解を目指しましょう。例年に比べても2022は平易の部類。

問二 選択肢問題 難易度 ★★★

正解 オ

<ポイント解説>
傍線部の「排他的」の意味することに注目。
ここでは、「その言語を話すこと」「排他的」に求められるので、「言語使用」について言及しているものが正解となる。

問三 抜き出し問題 難易度 ★★

正解 誹謗中傷

<ポイント解説>
②・③段落の関係に留意する。
②段落は冒頭の文にあるように「一般論」である。これは「言語表現」としての「暴力」について論じている。そこから③段落せ「主張」、「ナショナリズムと結びついた言語の暴力」が論じられている。
傍線部は「言語表現の暴力」なので、②段落から考える必要がある。そこから「誹謗中傷」を抜き出そう。

問四 空欄補充 難易度 ★★★

正解 イ(欲望)

<ポイント解説>
四つの空欄があるがどれも検討しづらい。しかし、全部当てはめるという方法をとっても正解できそうなので難易度は★3つ(標準)
強いて言うなら一つ目。直後の「あるいは」のあとが「将来の子供のため」という内容であり、これと同じような内容が空欄にも当てはまる、として考えるべきであろう。
そこから「欲望」を入れることが出来るか…ということである。現実的には消去法(全部あてはめ)になっても仕方ないかな、と思う。

問五 理由説明問題 難易度★★

<タケガワ解答>
国際共通語としての英語が強要されることは、国内の標準語の場合と比べて強制する主体が曖昧なものと言えるから。

<富山大学公式解答>
・「国際共通語」を強制する主体が曖昧であるから。
・言語使用の強制主体が曖昧であるから。

<解答の考え方>
⑴ 主語(=原因)の明確化
→ まず傍線部(述語)の主語(=原因のスタート地点に相当する)を探す。すると、「国際共通語としての英語の立場」となる。これは「国際共通語として英語が強制されている」ことを示している。
⑵ 因果関係の構築
→ では「国際共通語としての英語」が「グローバリゼーションの暴力性を見えなくさせている」のはなぜか。
それは、「標準語」(=国内の言語強制)よりもその強制主体が曖昧だからである。(標準語の場合は「国家」が強制している主体である)

【所感】
終わってみれば「直後をまとめる」というやや安直な問題で、公式解答もあっさりしているので、「強制主体が曖昧」という内容の有無で〇✖がつくのであろう。

問六 抜き出し問題 難易度★

正解 言語問題の政治化(⑥段落)

<ポイント解説>
これは前の一文に「言語をめぐる政治的問題」という語があり、それについての「楽観的な見方」なのでこれに類する語を探すと、同じ段落の⑥段落に「言語問題の政治化」という語が見つかる。平易。

問七 換言問題 難易度★★★

<タケガワ解答>
植民地において日本語は一部のエリート層にのみ与えられたのではなく、天皇の一視同仁に基づき、現地の人々に平等に与えられていたということ。

<富山大学公式解答>
・「国語」が植民地に強制されたことを 「強制」ととらえずに、天皇の「一視同仁」に基づいて平等に与えられる 「恩恵」ととらえたところ。 
・「国語」を話す 「権利」を限定せず、あらゆる被支配者に平等に与えたところ。

<解答のポイント>
⑴ 指示語換言問題
→ 「そこ」の内容だが、傍線部の前後から情報を集める。すると帝国日本の統治の「優秀性」への言及であると分かる。
⑵ 帝国日本の統治の優秀性とは
→ 直前にある内容をまとめる。植民地の人々に日本語が「平等に」(=一視同仁)与えられたことである。欧米諸国は「エリートのみ」だったのだ。基本的にこれが書けていればよいはずだ。

【所感】
しかし、公式解答を見ると並立のもう片方である、天皇の一視同仁に基づき言語が与えられたこと(=強制ではなかったこと)も可としている。並立の構造を考えるこちらは正解ではないと思うのだが、、。

問八 空欄補充 難易度★★★★

正解 下賜(かし)

<ポイント解説>
下賜の意味も読みも定かではない受験生がほとんどであろう。
下賜とは「天皇などの身分の高いひとが低いひとに何かを与えること」である。ここでは「国語」を与えたのだ。

問九 空欄補充 難易度★★

正解 暴力

<ポイント解説>
空欄のある段落はこの文章のまとめに相当する。よって言語と「暴力」の話をしている文章なので、「暴力」が入る。
正直、「なんとなく」でも入ってしまうだろう問題。

問十 換言問題 難易度★★★★

<タケガワ解答>
人間が使用し、人間社会を支え動かすものである言語が、政治・経済・社会・文化等において何らかのイデオロギーや思惑が強く反映される必要がある際に、他者に対して特定の言語を強制したり、その言語を話せない者を排除する力として作用してしまう場合。(118字)

<富山大学公式解答>
外的要因により特定の言語の使用が強制される場合。 社会的、歴史的に形成されるイデオロギーによって特定の言語が価値を持ち使用者が無意識のうちに強制されることもあれば、戦争など国家間の力の差により使用者の意思に反して強制されることもある。 (116字)

<解答の考え方>
富山大学の最終問題は「要約」を意識した問題となることが多い
2021年は要約、2020年は傍線部を踏まえた理由説明問題だが、ある程度本文全体を踏まえないと解答が出来ない。
2022年は言語と暴力の関係であり、以下の3点をまとめていこう。
⑴ 「言語の暴力とは」(⑨段落あたりが使いやすい)
→ 「強制力」のことである。これは「イデオロギー」が強く反映される際の力として作用する。
⑵ 「暴力の中身」(③~⑧をうまくまとめる)
→ 「言語使用の強制」や「言語を使用できないものを排除する」ことを「暴力」と呼ぶ。

以上になります。
また来週。

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