2022入試 問題研究⑧-2 大阪大学(文学部)の現代文【大問2】
こんにちは。
今回は前回の続きです。
※前回
◇第二問解説
〇問一 心情問題
<解答のポイント>
阪大の文学部の答案は要素を積み重ねることが求められる。これは毎年の解答例を踏まえてのものである。特に傍線部分につながる論理関係の構築は必須作業であろう。
A.「左の手首」について
→ これは「時計」を連想させるものである。この場面では「時計を一週間前から失くしていて、そのことを父に叱られることを恐れていた」とある。まずはここを書く。
B.傍線部になった「原因」を考える。
→ いわゆる「原因となる出来事」の指摘である。これは父に「お前、何か失くして…」と言われたこととなる。ここは短く「父の言葉」でいいと思われる。そして、それにより時計を紛失したことが露見した(バレた)のではないかと「不安が募った」のだ
C.頼りなく軽い
→Bの心情「不安」が「頼りなく軽い」の換言ともいえるが、ここでは「時計が無いことをより痛感した」ということを書いておこう。傍線部解釈は例年の大阪大学文学部の模範解答を踏まえても、必須に近いと言える。
最初にAの「時計をなくしたことで父に怒られることへの恐怖」を指摘し、
そしてBの「父の言葉で不安になる」という要素をいれて、
最後にCの「時計の不在」への言及をする。
一つ一つを丁寧に追いかけて答えを作ることを意識しよう。
〇問二 心情問題
<解答のポイント>
これは難問の部類であると思われる。いわゆる「言語化しづらい」問題ではないか。
なんとなく(=非言語的に)ニュアンスは分かるが、それを文章化することが難しい…というか。しかし、自分の持っている言葉でそれを何とか書いていくことでしかこの「溝」は埋められないものであるということも理解されたい。頭の中の情報を整理しつつ書いていこう。
A.原因となる「出来事」の確認
これは「山に向かって叫ぶ行為」である。まずはこれを確定させる。
その上でこれにまつわる情報を集める。
以上2点が挙げられればいいだろう。
B.「自分が嫌になった」理由
これはAを踏まえての反応である。
山からの反応を期待していたが、「反応が無かった」のである。
それにより「馬鹿にされた気がした」「なにかいけないことをした気がした」とある。(傍線部直前)これらを解釈すると、
となるだろうか。その上で「自分が嫌になった」のは「自分の行為(=時計をなくしたこと)がより一層愚かに感じられた」からと言えるだろう。
要求レベルが高い。
私の答えとの相違点は「本当のことを父に打ち明けずに失せものの名前を隠したまま山に呼びかけた自分の行いに」の部分である。「いけないこと」の解釈であろう。なるほど。
しかし、この部分まで受験生が書けるかというと…正直厳しいであろう。
よって、上記のA・Bの内容が指摘できていれば十分に合格答案と言えると思われる。
〇問三 表現意図
<解答のポイント>
相変わらずの難問である「表現意図」の問題だが、今年は例年に比べると手がかりがあるように思われる。
A.「弱い獣ののように」
この直喩は「五郎の不安」を表している語だろう。
ではその不安はどこから来るのか。ここで「時計を…」とするのは誤りである。この場面から考えるとあくまでも「父が帰ってこないこと」である。
B.「ピンと立てた」
この擬態語は「敏感に反応している」ことなので、何に対して敏感に反応しているのかを確認する。これはAを踏まえて父が帰ってこない不安から「小さな音にも反応している」のである。
Aの部分を詳細に説明している印象。
この問題は例年に比べると得点しやすい印象である。
〇問四 心情問題
<解答のポイント>
難しい。
公表解答を見るまで方向性が正しいかどうかすら不安があったレベル。ちなみに予備校の解答も確認したが、ほぼすべてバラバラ。そしてほぼ模範解答からはズレている。それだけの難問なので、受験生にとってはかなり苦しい問題だろう。テストだと割り切るならば、この問題は後回し確定。
とは言え、基本的な作業から考える。心情問題で考えるべき作業は「原因となる出来事」を確定させることである。
ここでは「今までの父とは何かが違う」原因である。
それは「馬」の比喩の理解である。「馬」とは「探し物」の比喩である。そこから考えると「父も何かを失っていて、それを取り戻すためにこの山にやってきたのではないか」ということになる。
そしてそのような「父の新しい一面を知ったこと」が「これまでの父とは何かが少し違う」と感じた理由であろう。
ここからわかるのは割と単純な因果関係が求められているということだ。
文学批評ではなく、因果関係なのである。これをしっかりと理解して解答を作っていこう。
今週は以上です。
また来週。
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