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慶應志木高校の国語(2022最新分析)

〇毎年この時期に伸びる記事

毎年1月になると早慶附属高校の分析をした記事が伸び始める。
この記事に関してはすでに20,000pv近く伸びている。

そして各学校別の分析も。慶應志木ももうすぐ10,000pvに達しそう。

とは言え、二年前の分析でありそこそこのクオリティだが、最新版にアップデートしようかな、と思っていたので直前になってしまったが挙げてみます。

このシリーズ、早大本庄までは作成できると思うものの残りは実際の試験後に書き上げることになるかもしれないのはご了承を。公的な(お仕事の)解答速報や講座収録、直前講習などがここから二週間程度続くので……。

〇この記事の前提

私は高校入試の現場を離れてすでに2年の月日が経つ。
前回の記事を執筆した当時のように科目を超えて「どのような生徒が合格するか」を見抜く感覚は鈍っている。
なぜなら、当時は最前線で生徒に向き合いその中で合格への道筋をつけることが出来たからである。このスタイルで多くの受験生を早慶附属高校に導いたのがかつての自分の高校受験指導であり、その足場のない言葉は妄言でしかないのと思うからだ。
一方、国語・現代文の講師としてはこの2年で様々な経験を積み、その分析力は格段に上がったと自負している。よってここでは「国語」について論じていくことを前提とする。

〇受験生向け~直前に確認すべきこと

ひょっとしたら、この記事を今晩(2/6)または当日(2/7)に見てしまう受験生、保護者の方もいらっしゃるかもしれない。
その場合はこの章をだけを見て試験に臨むことをお勧めする。大したことを書いていないが、それでも必ず当日の受験生に寄与するだろう。


<形式>

・「一定の形式がないのが慶應志木」と考える。
→ 2019、2020年は「評論」+「小説」だったが、2021年は小説1題。この高校に一定の形式など存在しない。
2022年は……ふたを開けてみないとわからない。むしろ勝手な予想せず、出くわしたものに対処する精神で臨むべきである。

・60分の使い方を考える
→ 試験開始直後に以下のものを確認する。
① 大問数
② 記述問題の数
③ 特殊な問題(図を書く、絵を描く、俳句を作る等)の有無

その上で、全体の時間配分を大まかに決定することが大事である。
ただし、一見すると簡単そうに見えても実は手間がかかったり、その逆もしかりのものもあるので、その見極めには注意することが大事である。

<問題内容>

・取れる問題を確実に取る
→ 年度にもよるが、基本的には高得点勝負にならないのが慶應志木なので(問題が平易な年は分量がものすごく多かったりする)、確実に点数が取れるものを見つけて、各個撃破を。これを見誤りすべての問題を取りに行こうとすると、だいたい墓穴を掘ることになる。

・「知識問題=平易」ではない。
→さすがに他の早慶附属高校は知識問題で落とすと苦しい、という問題が多い(慶應義塾と慶應女子でもその傾向にある。やや難しいものもあるけれど)中で、慶應志木の知識はそれなりに難しいものも多い。知らないものは知らないと割り切ることが大事

・「聞かれていること=設問の指示」を確認する
→ この姿勢が最も大事である。慶應志木の問題は特殊な問題(絵を描く、俳句を作るなど)においても、その見た目とは裏腹に「設問指示」を守らないと得点にならないものが多い。2021年の夏目漱石「文鳥」においても設問の指示が多く、恐らくこれを守ってい医療答案が続出すると思われる。
「答えるもの」が何かを冷静に確認する姿勢がとても大事。

以上、あとは武運を祈る。

〇慶應志木の国語の特徴

① (一見)派手な問題の出題

慶應志木と言えば古くから「派手」な問題の出題が多く見られた。その一例を挙げる。

・(平成10年ごろ) 「箸」を「箸」という言葉を使わずに説明する
・(平成10年ごろ) 「私の尻」という題で作文
・(平成10年代中盤)「サザエさん」の四コマ漫画を文字で説明
・(平成26年)   「ひしゃく」「いちょう」などの絵を描く
・(平成27年)   「浮世絵」を描く
・(平成29年)   小説の中の配置関係を図示する
・(平成30年)   「冬の食べ物」というテーマで俳句作り

これらの問題は一見すると国語と無関係のように思えるし、力のない講師であればそのように断じてしまう問題である。

しかし、これはれっきとした「読解力」と「記述力」を試す問題である。

たとえば、上記の「サザエさん」の問題を実際に授業で扱ったことがあるが、最終的に合格する受験生でも秋口であればほとんどが正解しない。
主に二点の障壁にぶち当たる。
ひとつは漫画という視覚情報を「読んで理解する」(=読解)ことができないことだ。四コマ漫画なので「オチ」を理解しなくてはならないのだが、その「オチ」がイマイチわからない、という生徒は正解に至らない。
ついで、「内容を表現する」能力である。仮に内容、オチを読み取れたとしても、それを指定字数の中で表現しきることが出来ないといけない。これは「他者に伝わる文章」を書く練習が必要だ。

また、「浮世絵」や「ひしゃく」の絵を描くのは国語じゃない、と思われるかもしれないが、これも慶應志木一流の国語力の聞き方と言える。

「ひしゃく」の問題は広い意味で教養を問うている問題ではあるのだが、それとともに「天地を正しく書き、斜め上から見下ろすように」書くという指示がある。これを見落とす受験生はとても多い。
そして、この「設問指示」を守ることは上記の通り、慶應志木においては伝統的に問われる能力の一つである。
また、浮世絵に関しては授業等で扱うとへんちくりんな絵がたくさん生まれてくる、ある意味では「鉄板」の問題なのだが、こちらは教養ではなく「文章読解」の力が問われる。文章内で浮世絵の「配色」(黒の位置)が述べられており、ここでは絵の巧拙などどうでもよく、その内容を読み取って再現することが試される。要は「文で書くか絵で描くか」なのである。

総じて、聞き方は特殊であり、見た目には楽しい(と思えるのは指導者だけ)問題だが、れっきとした国語の問題なのである。

② 「受験対策」へのアンチテーゼ

これはある年代の卒業生から聞いた話なので、眉唾物かもしれないが、こんなことを慶應志木の先生が言っていたと聞く。

・科目によっては大手塾の教材には載っていない形式の問題を出して、ワンパターン学習の受験生を蹴散らそうとしているらしいですよ。

文言は、ボカしにボカした。

しかしこれは大手塾の対策の無意味さを意味しているのではなく、初めて出会うであろう問題に対して自分の持ち札から適切なものを選んで対処する力が問われている、のだ。ワンパターン処理ではなく、その問題の本質をつかむような能力がある生徒を欲しているという姿勢がよくわかる。

実際に国語でも2021年に「手紙内容の推測」や「文章表現の面白さ」と言った、他の高校入試ではあまり出てこない問題も出題された。しかし、ここら辺は、文章読解の「深度」(これははっきり言うと講師の力量による)が問われる部分である。ひょっとしたら中学校の授業にてしっかりと扱っている先生の方が多いかもしれない。
単純に「記述は~」「選択肢は~」といった短絡的な作業しか経ていない効果の薄い授業に対して明確に「No!」を突き付けているのが慶應志木の問題である。

〇 慶應志木対策としてやるべきこと

さて、上記を踏まえて慶應志木対策としてすべきことは以下の点である。

① 設問要求を捉える
→ 「何を答えればよいのか」という感覚を磨くことが大事。
② 学校の授業もよく聞く
→ 短絡的な受験対策にしない。
③ 知識・教養を深める
→ 国語の知識はもちろん、三科目校だが、理社も学校の授業はよく聞くこと。

以上、近日中に早大本庄も書きます。

それでは。







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