2020年高校入試分析⑤ 慶應志木高校

どうも。新宿の街でウィルス性胃腸炎にかかり、連続更新記録が途絶えました。しかし、回復してきたので律儀にも書き続けます。偉い。(自分で自分を褒めるタイプ)

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一昨日の慶應義塾高校の分析はやり甲斐のあるものでした。何よりも、大学入試共通テストオマージュであること。興奮と感動すら覚えました。

しかし、その際にも書いたのですが、ここ最近の慶應義塾の入試問題をどこかで私は小馬鹿にしてました。
問題のテーマ性もあまり感じられず、知識と文法ばかり聞く。しかもまあそれを強調している(むしろ頼り切っている)担当の多いこと。
早慶附属校の中で最も「軽視」していた入試問題からあんな名作が生まれるなんて。本当にごめんなさい、と日吉に向かって頭を下げています。

さて、その慶應義塾と対照的にわくわくする問題を提供し続けてくれていたのが慶應義塾の兄弟校、慶應志木の問題でした。

①入試データ
※2020年度は未公表。
受験者が1,300名ぐらいで、1次ラインは500名強、そこから毎年合格者が350名程度。1次ライン突破後は2次試験の面接に来ない受験生がいることを考えても、おそらく450名程度の中から350名が合格者するという計算になると思われます。
この選抜ラインは早慶附属校の中で一番安定しているような気がします。慶應志木に合格する生徒はある意味で読みやすい。これも経験則でしかないわけですが。

〇繰り上げ合格について
慶應志木は2次試験に進出した受験生を「不合格」にすることはありません。(少なくとも私の観測範囲では)そして、補欠を1番グループ(数名)から人数ごとに8番、13番……と番号が振られていきます。
→例年、補欠1番は2次試験の発表当日である2/12に繰り上げ合格が通知されます。よって、「補欠1番は実質合格」と言えるのです。

②これまでの慶應志木の入試問題
→慶應志木高校の国語の入試問題は賛否両論がある。まず何より、普通の入試問題というスケールに収まっていない。しかし、よく考えるとそれは「読解力」が試されているという深い作りになっている。以下に一例を挙げていこう。

〇H30年〜黒歴史メーカー?
北大路魯山人の文章を読ませた上で「冬の食」に関する「俳句」を作らせるという出題。季語を外さずに作句すれば良いのだが、出来上がった作品はもはや大喜利のような様相に……。

〇H29年〜情報読み取り能力が試される
トーベ・ヤンソンの『自然の中の芸術』を読ませた上で、その作中の舞台の見取り図を書かせる問題。本番においては捨て問だが、文章から情報を読み取り、それを図示できるかという能力は記述問題とは異なる表現力が試される。

〇H27〜お絵かき問題と思いきや……
寺田寅彦の浮世絵の解説を元に実際に浮世絵を書かせる問題。受験生は絵の巧拙を問われているように勘違いするが、冷静に文字情報を拾い、それを具現化すれば解ける問題。実は浮世絵がどんな絵かわからなくても普通に解ける。

→このように、読解力を一般的な国語の問題の枠にはめず、更に高い視点から問うてきたのが慶應志木の特徴でした。私は毎年わくわくしながら問題を解いていました。それが……

③2020年の科目分析(概観)
大問1 『学生と音楽』天野貞祐
【文章内容】難易度★★★☆☆

→文章内容は音楽を学ぶ学生達に向けたある種の檄文。標準的な難易度か。

【設問について】難易度★★★☆☆

→漢字問題25問。ハッキリ言おう、他の問題が以下に優れていてもこれだけで台無しである。どんなに低く見積もっても1/4が漢字の得点になる入試がこれまであったのだろうか。しかも、予想される合否ラインが50点前後であれば、漢字さえ出来ていればあとは1/3程度の得点でもそこに到達する……そして、漢字が25問ある割に問題数が多い。つまり、捨て問がかなり多い。これでしっかりと選抜できるのか、甚だ不可思議である。

◇所要時間 35分

大問2 『雨』林芙美子
【文章内容】難易度★★★☆☆ 

→戦争からの引き揚げ者の悲哀を書いた作品。上位の受験生って戦争関連の話ってわりとよく演習するのでは?と思ったのでそんなに難易度が高くないのかな、とも思ったり。

【設問について】難易度★★☆☆☆
→極論、漢字を25問のうちある程度やっつけて、大問2に取りかかれば合格ラインを悠々越えられるのでは?と思わされる。こちらは良問。最後の象徴だけ入らない気もする。

◇所要時間 20分

<総括>
うーん。あんまり面白くないです笑
やはり漢字25問出して、変に重たい問題を出して、それで学力が測れるのか……?と疑問が止みません。せめてH31のような正統に重い問題を出してほしいものです。

それでは。

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