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2023年大学入学共通テスト【現代文】 分析

明けましておめでとうございます。
今年初めての更新は2023年の共通テストに関する分析です。

各大問についての分析をし、その後総括をさせていただきます。

◇大問1

⑴基本的な形式は2022年と同じ

文章は複数のものを読ませるが、設問は問6以外「横断的な読解」を要さない。おおむね2022年の踏襲と言える。

出典は【文章Ⅰ】が柏木博の『視覚の生命力――イメージの復権』
2019年の早稲田大学法学部と同一出典。相変わらず難関大学の過去問と出典を合わせているのか?
【文章Ⅱ】は呉谷充利の『ル・コルビュジェと近代絵画――二〇世紀モダニズムの道程』

設問についての概略は以下の通り。
問1の漢字問題は3題(同じ漢字を選ぶ)+2題(同じ意味のものを選ぶ)で2022年の踏襲。
問2~5は傍線部解釈問題。昨年とは異なり表現技法の問題は出題されず。(2021年以来2年ぶり)
問6の討論会問題は2022年追試の小説の問6を彷彿とさせるもの。(あの問題よりも作りが雑だが。)

⑵難易度は「標準」(設問ごとの言及)

問1漢字関連
→(エ)「琴線」が正答率が低そう。あとは確実にとりたい。8点死守。

問2換言問題 やや平易
→最初の意味のまとまりである①~③段落からの問題。2段落の具体例を挟んで3段落の換言箇所を押さえる。
選択肢の「余計な情報」に惑わされない。「選択肢だけを見る」みたいな作業をしていると戸惑う。「迷ったら本文または傍線部!」が実践できたか。

問3理由説明問題 標準
→2つ目の意味のまとまりである④~⑥段落からの問題。答えの根拠そのものは直前にある。
あとは「根拠と選択肢の対応」である。
東進ハイスクール/東進衛星予備校で担当している『大学入学共通テスト対策 現代文』の講座でも、夕陽丘予備校でもIRLでも水戸駿優予備学校でも博耕房でも言ってきたことだが、「同じ意味の別表現」を意識すれば解ける問題である。
(今回の問題で言えば、「フレーム=範囲を定める/二次元→平面化/スクリーン=映し出す」という対応である。)

問4換言問題 やや難
→3つ目の意味のまとまりである⑦~⑩段落からの問題。「論のまとまりを意識する」ことも上記講座の中でひたすら伝えてきたことだ。その意味で受講生が高得点をとることが可能な材料は全て提供できたと自負している。あとは彼ら彼女らのパフォーマンスに期待したい。
なお、換言問題としてはよくあるものなのだが、珍しく「引用箇所」を正答根拠にする必要がある。旧センター試験からの歴史を考えてもやや珍しいな、と思った。
引用箇所の処理は「読まなくてもいい」という指導もあるようだが、そうなるとこの問題は答えが出なくなる。しかし、全体の分量を考えると、(多すぎて)読み飛ばしてしまう受験生がいることも十分に想像できる。よって「やや難」という評価にした。
なお、解答に至る基本的な考え方は問3と同じ。

問5換言問題 やや平易
→『文章Ⅱ』のみを使う唯一の問題。文章Ⅱの6段落を押さえればよい。正解してほしい。

問6複数文問題 (ⅰ)やや平易 (ⅱ)標準 (ⅲ)標準からやや難
→会話文の空欄を埋める問題。2018年の大問1でこの形式の問題は初めて出てきたのだが、年々空欄の数が増えている印象だ。
しかし、空欄の数の割に会話文の情報が少ない。少ないゆえに受験生が「論理的に推測」する余地が増えるのだが、ともするとこの推測は「当て勘」に変容してしまう。実際にこの問題は、複数文の関係性を見出すことが面倒な割には「なんとなく」で判断しても正解は出てしまう(逆に一生懸命考えても根拠はあいまいになる。特に(ⅰ)はその傾向がある。)。
その意味では褒められた問題ではないと思う。
そして何より「多い」。こんな問題で3問も要らない。

総じて、難易度は平年並み。標準的な評論。

⑶分量は「やや多い」

→文章量は昨年比微減程度。設問は問6が1問多い印象。総じてやや多い
評論が得意な受験生は18分程度で解き切る気がする。標準からやや苦手でも20~22分で解き切りたい。目標/目安は20分かな。

◇大問2

⑴基本的な形式は2022年と同じだが…

2022年と同様に語彙の問題はなく、最初から傍線部解釈問題が始まった。
また、この傍線部解釈の問題は2021年の共通テストになってから「心情問題」しか出題されていない
ここまで昨年と同じなのだが、問題量が多い。傍線部解釈で問6まで続く。多すぎない?ただし、問題は後半にかけて易しくなっている。
問7はポスターとの融合問題
。この形式も2022年と同じ。大問1よりはいい問題かな。
また、表現問題は出題されなかった。

出典は梅崎春夫『飢えの季節』

⑵難易度は標準からやや難(設問ごとの言及)

問1心情問題(様子の説明) 標準からやや難
→「あわてている」ことの原因を探す。
最初の場面(看板広告の構想を練っているシーン)を踏まえて考える。選択肢「だけ」見ていると多分とても迷うだろうと思われるので「やや難」の評価も入れておくが、基本的には「標準的」な問題。

問2心情問題(心情の理由) 標準からやや難
→「腹が立った」ことの原因を探す。直後の内容を押さえればいいだけなのだが、選択肢ばかり見ているとこれも難しく感じられるのだろう…。その意味で問1と同じ評価。

問3心情問題(心情変化の説明) 標準
→物乞いの老爺とのやり取りを反映している選択肢を選ぶ問題。場面と選択肢をじっくりと対応させる作業が必要。

問4心情問題(心情の説明) やや難
→直前の内容を踏まえるだけなのだが、そこから選択肢への対応がやや難しいと感じた。この問題で時間を掛けすぎると残りの問題に悪影響が出そうである。個人的感想だが、「解きづらい」と感じた

問5心情問題(様子の説明) やや平易
→給料に関する課長とのやり取りの場面から考える。問4までに比べて選択肢が選びやすくなっているように思える。つまり、どのように解いても答えは出るかな、という印象だ。

問6心情問題(心情の説明) やや平易
→こちらも、最後の場面を読めば選択肢が簡単に絞れるタイプの問題。焦らずに解いてほしい。

問7複数文問題 (ⅰ)標準 (ⅱ)やや平易
ポスターを絡めた問題。空欄補充なので大事なのは【文章】の情報
(ⅰ)はポスターの情報(【補足】の部分)を参照する必要がある。それが出来ないと厳しいかもしれない。
(ⅱ)は本文の最終部分の「焼けビル」を根拠にすれば答えられる。

⑶分量について

→文章量は昨年より増えた。設問はとにかく多い
個人的には評論も小説も解答番号1つ分多い印象だ。22-23分程度かかる可能性がある。
一つ一つの設問はこれまでのセンター試験から変化はないが、総量が多すぎて結果として作業が雑になる可能性がある。これはテストの性質を考えると再考の余地があると思われる。

◇総括

⑴「デカ盛りグルメ(味は凡庸)」

単調な味が大盛り、いやデカ盛りであるため、受験生とすれば「食べきれるかが心配」となったのではないか。
皆が皆ギャル曽根(=処理力の高い受験生)ではないので、たくさん食べられるわけではない。実際、現代文で43~44分かかってしまうのではないか。
タイムマネジメントに苦心する受験生が多くなるのは良くないと思うのだが、大学入試センターの先生方はそう思っていないみたいですね。
味(内容)も傍線部解釈問題はまあまあだが、最終問題がお粗末。(特に大問1)
とにかくもう少し問題量(マークシートの数)を減らした方がいい。

⑵2025年までは(つまり来年は)この形式なのかな

2025年の新課程対応の入試になると国語は大問が一つ増える。時間も90分になる。そこまでは据え置きなのかな…という空気を感じた。

⑶2022年の追試に近い?

問題形式はさておき、分量は2022年追試に近い印象。
追試験も過去問演習の中には入れるべきですね。

◇武川担当の共通テスト対策についての自己評価(宣伝?)

先述の通り、東進で担当した講座(『共通テスト対策現代文』)も、ライブ授業で扱った共通テスト対策も、共通テスト対策としてはかなり有効だな、という自信を深めた。(もちろん、受講生がそれを発揮できているかはまた別の話であり、そこが上手くできていないならまた改良していかねばならないのだが。)

非受験学年の皆さんは共通テスト現代文の対策は東進ハイスクール・東進衛星予備校や上記私の出講先(水戸駿優以外。来年度は出講しません。)までどうぞ。

最後は宣伝でした。

それでは。






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