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音楽アーティストとAIって実際どうなの?

ChatGPTに代表されるAIの発展は凄まじく、毎日のようにAIを使った新たなサービスがリリースされています。トレンドが早すぎて付いて行けない人も多いのでは。というか私もその一人です笑。
しかしこのAI、従来の働き方だけでなくモノの考え方まで刷新して行くことはどうやら火を見るよりも明らかな状況となってきました。
多種多様なAIがリリースされるなかで、ビジネスパーソンだけでなく音楽アーティストにとっても例外ではないと感じ、少しでもアーティストの役に立てればという思いからこのnoteを書いています。

楽曲生成のAIは正直まだまだかな?

先日、指示文(プロンプト)を入力するだけで、楽曲を自動生成してくれるというAI「Suno AI」が話題になりました。

私も触ってみましたが、わずか数分でリリックを自動生成してくれつつ、楽曲もそれっぽいものを出してきます。
実際触ってみると確かにすげーーー!ってなると思いますのでお試しあれ。

AIが音楽を作れるとなると「アーティストは要らなくなるのでは」という議論が巻き起こりがちですが、果たしてそうでしょうか。
確かに動画などBGMにしたりする消費財としての用途で「それっぽいもの」を求めているユーザーにとっては「アーティスト不要説」は個人的に正しいと思えました。
その一方で、指示文に「LITEのようなMath Rock風のインストロックを生成して」というお願いをしてみたところ、Pearl Jamのような90sアメリカンロックが生成されて「AIもまだまだだなぁ」という安堵と、悔しさの入り混じった複雑な思いをしたのは記憶に新しいところ(笑)。

これは半分冗談ですが、細部にこだわって本気で音楽を作っているアーティストからしたら、楽曲生成のAIは正直まだまだなレベルです。
しかし、笑っていられるのもつかの間かもしれませんね。
おそらく今年中にはLITEを認識したMath Rockを生み出してくる生成AIが誕生するでしょう(本望ですが笑)。
昨今の状況を見ていると、それだけAIの発展は日進月歩だと感じます。

ちなみにLITEの情報はこちらです。聞いてね。(宣伝)

アーティストのAIが必要な背景を考える

私もアーティストである以上、どんなにAIが発展し成長しても、心を揺さぶる音楽や説得力は生身の人間から生まれるものだと信じて疑いません。
というか、自分で作ったほうが楽しいので、正直試しきれていないし、作曲のAIを使う必要性をまだ感じていません。

アーティストはAIとどちらが凄いかを競り合って戦うのではなくて、シンプルに「便利だから使う」という付き合い方で良いのではと個人的には思っています。2000年代にDTMが出てきてProToolsが出てきたときのように、MIDIで打ち込みでデモを作るように、便利なツールとして使えばいいのではないでしょうか。デジタルシンセの音源だって元は誰かが作ったものであって、音源を使って楽曲を作るのが当たり前だとしたときに、AIを制作の一部に取り入れるという行為も至って自然な流れかと思っています。(著作権などの議論もここではおいておきます)

さて、ではどういうシーンでAIを使うのか。
それを考える前に、少し話題は変わりますがインディーズの音楽アーティストが置かれている現状を整理します。

アーティスト活動も音楽を認知される場所がSpotifyやApple Musicなどサブスクが主戦場となり久しいですが、サブスクの主戦場において従来のCDが主戦場だった頃と比べて大きく変わったのは、「アルバムを一つ出すよりシングルを多く出したほうが再生数が増え、結果再多くの人に音楽が届く」という事実です。アルバムよりもシングルをいかに多くリリースするかを考える活動が主流となってきています。

シングルが増えるということはリリース数に応じて「アートワーク」や場合によってはSNSでの告知などのために「ミュージックビデオ(MV)」もあったほうがいいでしょう。年に1回のアルバムリリースだったものが、年10曲10回のリリースになったとしたら。
クオリティが低いものを出すのであればいざしらず、クオリティを担保しつつ10個のアートワークとMVを作るなんて時間的にも資金的にも到底無理ではないでしょうか。

そこで活躍するのがAI!

「クオリティを落とさず、効率的に」

これらはまさにAIのお家芸です。
我々おじさんたちはDTMやProToolsが出てきて作曲やレコーディングが効率的になった時代を思い出しましょう。DTMでの作曲はアートじゃない!と否定する人もいたとかいないとか。

さて、前置きが長くなりましたが、そんな今のアーティスト活動に役立つであろう、私の独断で考える「これからのアーティスト活動に無くてはならないAI」を紹介できればと思います。

AIの具体的活用方法

1.ChatGPT(歌詞)

言わずとしれたChatGPTですが、実際に仕事やプライベートでも活用できている人は意外と少ないのではないでしょうか。
音楽で使うとなると、やはりそこは歌詞だと思います。

「ChatGPTに歌詞を考えてもらう」と書くと、アーティスト魂を売った感がハンパない響きになるのですが、違います笑。
歌詞を考える作業のサポートとしてChatGPTを使うんです。

歌詞を書いたことのある人はこんな悩みがあったはずです。

  • 歌詞のベースとなるアイデアそのものが浮かばない

  • 他の言い回しがないかなとネットや辞書で類語を探しまくる

  • 最後の音符に歌詞がどうしてもハマらない

  • この英語の歌詞って文法的に成立しているか分からず不安

そんな人は一度ChatGPTを使ってAIと一緒に作ってみるとだいたい解決するのでは思います。

例えばこんな感じで使えます。

こんな無理なお願いをしてみます。するとこんな詞が返ってきました。

ダサい部分は否めませんが、結構面白いフレーズも作ってくれたりするので、書きかけの歌詞がある場合でも組み合わせたり、ゼロの場合でも出てきたアイデアを元にリライトしたりしていくと良いのではと思います。

下記のように気に入らない部分だけを修正することも指示できます。

「線を引く手」という詞が「輝く筆跡」に変わりました。

ちょっと無理なお願いをしてみます。

ちょっとだけそれっぽくなりました笑。

英歌詞にしてみます。

英語の文法の相談をしてみます。

作詞した詩が全体的に文法が正しいか聞いてみます。
追加でアドバイスもくれました。

いかがでしょうか?
プロセスを見てもらうとわかりますが、作詞のすべてをAIに委ねるのではなく、アーティスト自身が作ったものをベースに相談をしながらフレーズの新たなアイデアを考えてくれたり、部分的な変更の提案のなかから、AIと一緒に作成していくイメージです。

ちなみに、日本語も精度は高いですが、やはり英語で会話をしたほうが精度が高いと感じます。英語への翻訳はDEEPLがいま最も精度が高そうですので、こちらも活用したいですね。

2.DALL-E 3(アートワーク)

DALL-E 3はChatGPT内で画像を自動生成するAIです。ChatGPTの中で動きます。(他にもMidjourneyStable Diffusionなどに代表されるクオリティの高い画像生成AIもあります)

1.で作った歌詞のイメージをアートワークにしてみます。
先程の指示の続きで下記のように指示を出してみます。

下の画像はちょっとだけ使う色を少なくしたり微調整を行って出てきたアートワークです。

色々な画像生成のアプローチがあると思いますが、すでにイメージがあればそのキーワードで。なければサンプルのように歌詞全文から「この歌詞からイメージされる画像を作って」という指示文を作るのもありだと思います。

気に入らなければ指示文を変えたりしながら根気強く何度も繰り返します。
生成される画像は指示文の精度次第です。
ここでもやはり英語のほうが精度が高いと感じます。
また「この部分を削除して」など、対応できないことも多いと感じます。

ちなみに気になる著作権は下記のように整理されており、商用利用も可能とされているようです。

コンテンツポリシーおよび利用規約に従う限り、DALL-Eで作成した画像の所有権はあなたにあります。これには、無料または有料のクレジットを通じて生成された画像に関係なく、再印刷、販売、商品化の権利も含まれます。

https://help.openai.com/en/collections/3643409-dall-e-content-policy

3.Runway(MV)

次はRunwayというAIサービスを使って生成された画像を元にちょっとしたMVやティザー動画を作ってみます。

ゼロベースで画像を作ることもできますし、2で生成した画像を動かすこともできます。これによって、SNSに投稿できるような短いティザーから、短い動画をつなぎ合わせて一本のMVも完成させることができます。

操作はいたって簡単で、画像をドロップして自動で動きを与えるか、画像と指示文を与えて作成するかなど選択が可能です。

今回は特に指示を与えずに画像だけアップロードして作成してみました。

この動画を元に楽曲を乗せれば簡易的なSNS用のティザー動画が出来上がりです。

大事なのはアーティストの表現だよねという話

AIは日進月歩ですので来月には紹介したAIもバージョンアップして別物になっているかもしれませんし、クオリティの高い作曲のAIも生まれているかもしれません。
「ここの部分だけギターフレーズが浮かばない!」とか、「このフレーズを曲に合う音色に変えて」などが実現できる未来もすぐそこに来ていると思います。

今回紹介した画像生成のAIですが、実際のところイメージ通りのものを作ろうと思ってもなかなか難しかったりします。それはプロンプトと呼ばれる指示の精度もありますし、そもそも指示を出す側のセンスの問題もあります。

アーティストがAIを使って何から何まで自分でやってしまうことはできなくはないですが、アーティストの立場で言えば、自身の表現ややりたいことを実現するためのAIというのが正しい使い方かなと思ったりします。
その表現のためにAIが適しているようであれば良いと思いますし、依然としてイラストデザイナーや動画クリエイターの方とコラボレーションすることにより生まれる表現もなくなるわけではないと個人的には思います。
要は使いようということですね。

この記事を見てこんなことが起きてるよ、ということが少しでも伝われば嬉しいです。