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#2 成果を生まないクリエイティブは存在意義がない(私的な想いのパブリック化について)


1.クリエイティブはアートではない(おさらい)

クリエイティブとアートを混合させる人がいるが、それは間違った考え方であるとvol.1で書きました。

クリエイティブとは、
情報を与えて、態度 or 意識 or 行動変容を起こす行為や制作物
https://note.com/tkcgraffiti/n/n66d711c24947

別の整理の仕方をすると下記のようになります。

クリエイティブ=左脳80点+右脳ジャンプで100点、120点を目指す行為
アート=右脳100%の創造行為

今回はこの部分をもう少し丁寧に書きたいと思います。

2.クリエイティブとアートの違いは目的の有無

上記のように定義したクリエイティブに対して、
アートも「情報を与える行為や制作物」と定義することができると思います。

2つに共通する項目は「情報を与える」の部分です。
ただ、出発点は同じでも、その後が大きく違います。それは「目的の有無」です。

クリエイティブの目的は、「相手の態度(意識、行動)変容を促すこと」ですが、アートの目的は、「情報伝達そのもの」であると考えます。

仮に、「Aが美味しい!」という情報を伝えるとします。

クリエイティブの目的は、それを伝えることによって、今までAのことなんて気に留めていなかった伝えたい相手が、『Aって美味しいかも!(意識)/ Aって食べてみたいかも!(態度) / Aを食べに行く!(行動)』と変容することです。それが目的ですから、目指す成果から逆算をして、情報伝達の方法は決まります。

対して、アートは、情報伝達自体が目的ですから、同じく「Aは美味しい!」という情報を伝えますが、大切なのは相手の変容ではなく、「伝え方=表現方法をどうするか?」がメインになります。

ここで、映画は目的があるじゃないか!とツッコミを受けそうです。コメディ映画は「笑わせたい」とか、ホラー映画は「怖がらせたい」とか目的があるじゃないか!とか。映画はアートじゃないのか!とかそんなツッコミです。

補足します。

観客のいるエンタテインメントはここでいうアートではない、という前提でこれは話しています。商業的、という意味では少なからず、目的が生じているので。位置付け的にはクリエイティブとアートの中間でしょうか。

ここでいうアートとは、純然たる情報発信(表現)。とにかく作りたいから作るんだ、というピュアな想いだけで作っているものです。

クリエイティブとアートは、
情報発信行為は共通しているが、目的が大きく異なる
クリエイティブは態度変容、アートは発信自体が目的。

3.なぜ死後に評価されるアーティストは存在するのか?

クリエイティブとアートの話に、新しくエンタテインメント(コンテンツ)が入ってきたので、その辺りを整理したいと思います。

ところで、アーティストの中には、死後に評価される方をご存知でしょうか?
シューベルト、フランツ・カフカなどを僕は思い浮かべます。なぜ彼らが死後に評価をされるのか?評価されるタイミングが死後にやってきただけの話です。なぜ時間が経ってから評価されるのか、そもそも評価されるとはなんなのかを整理したいと思います。

情報発信という行為自体は、とても私的なコトだと僕は考えています。

クリエイティブにせよ、アートにせよ、「Aが美味しい!」を伝えることは、とても私的な想いからの発信だと思います。(クリエイティブでも、その企業の想いからスタートしています。うちの商品はおいしい!を伝えたい、だなんてとても私的な想いです。)

ただ、私的な想いをそのまま表現しても、よほどのことがない限りは、世の中には何も伝わりません。ふーんそうなんだ、で終了してしまう可能性が高い。
(ごく一部の才能あるアーティストだけがその表現自体で魅了はしてきました)

しかし、その私的な想いが、パブリックに表現されると、多くの人の共感を得られる=世の中に広がり、目的を達成することができるのです。

それがクリエイティブのもう一つの整理の仕方だと考えています。
クリエイティブは目的を達成するため、私的な想いをパブリックに表現しているのです。パブリック化できるか否かが勝負の分かれどころとも言えます。

一方で、私的な作品も、パブリック化されない限り評価されません。
アートは私的な想いをプライベートに表現しているだけなので(パブリック化するために行っていないので)、パブリック化するかどうかはある種の運任せなんです。結果論とも言えます。

だから後から評価されることが発生します。作品は死なず生き続けますので、どこかのタイミングでパブリック化された、というわけです。

私的な想いをパブリック化表現することがクリエイティブ開発
私的な想いをプライベート表現することがアート

4.エンタテインメントはクリエイティブ?アート?

この部分に関して、King Gnuというアーティストの常田さんという方が、情熱大陸でこんなことを語っていました。

「日本で売れているものを(曲)を見ればこういうのが売れるというのは間違いなくあって。メロディーの付け方 ボーカルの歌い方。魂を売って『こういうの売れるんでしょ』とはまた違いますけどね。自分との共通項を探す作業はしました。」

だからと言って彼がアーティストではないとはもちろん言いません。
ただ、何かしらヒットを生み出す=成果を出すには、パブリック化が必要だとという話を彼はしているのだと思います。

このアーティストの私的な想いのプライベート表現をパブリック化する、ことを、
僕はプロデュースと呼んでいます。
エンタテインメント、コンテンツとはまさにこの立ち位置であり、だからプロデューサーが重責を担っているのだと考えています。

後、もう一つ、私的な想いがパブリック化される方法があります。
作り手が評価された後に、評価されるという現象です。中身自体がパブリック化されていなくても、発信者自身がパブリック化さると、中身もパブリック化される、ということはおきます。得てして発生すると思います。つまり、「誰が」発信しているかもパブリック化においてはとても重要、とも言えます。

死後にアート(アーティスト)が評価をされるのは、そのタイミングで、
A たまたま時がきてパブリック化された a.k.a 時代が追いついた
B たまたま時がきてパブリック化するプロデューサーが現れた
C アーティスト自身が有名になりその他作品に派生した
のどれかが起きたんだと想像します。

アートをパブリック化することがプロデュース=コンテンツ化

5.そのクリエイティブが「良い」か「悪い」かわかりますか?

話をクリエイティブの目的に戻します。とある有名な地方創生系の映像があるのですが、とてもバズりましたし、再生回数も数百万回数を超え、広告賞も受賞しました。個人的にも無茶苦茶面白いと思いましたし、とても大好きな映像です。ただ、その映像が「良い」のか「悪い」のかは正直わかりません。

クリエイティブの「良い」「悪い」を判断してくれるのは「目的」です。「あれいいCMだよね」とか気軽に言ってしまいますが(僕もよく言います)、よく考えたら、そんなに気軽に「良い」か「悪いか」なんて僕らには判断できないんです。だって、「目的」を知らないから。

逆に言えば、「目的」を知っていれば、「良い」か「悪いか」の判断ができるわけです。先程の地方創生映像は、とてもバズって面白い映像なわけですから、その地域の認知向上目的なら「良い」映像です。しかし、移住目的なら、移住者が増えなければ「悪い」映像になります。バズ目的で作られた映像ならば、どれだけ丁寧に移住目線を描いた映像で実際移住者が増えたとしても、多くの人に届かなければ「悪い」映像になるわけです。

「目的」があるからクリエイティブは「判断」ができる

6.クリエイティブ開発=想いのパブリック化の判断軸

クリエイティブを開発するにあたって最も大事なことは目的の設定です。なぜこのクリエイティブを開発する必要があるのか、その目的をしっかり定義し、全ての価値判断をそれに基づき行うことが大切だと考えます。とても当たり前のことを言っているのですが、ここがあやふやになっていることがとても多いと感じています。

企画開発、表現開発、キャスティング、撮影、細かい編集、テロップのデザイン、ありとあらゆるタイミングで、感覚的に「良いね!」「悪いね!」と判断することはないでしょうか。作り手や発注者、担当者の主観(好み)で「良い」「悪い」を決めてはいないでしょうか?それは間違いだと僕は思います。その判断、論理的に説明できるでしょうか。

「良い」「悪い」の判断は「目的」がするべきです。そうすれば大きな軸が大きくずれることはないのです。でも、それだと、なんだか窮屈でつまらないものしか出来なさそうだな、、、と感じられるかもしれません。その通りです。説明できるクリエイティブなんて無茶苦茶凡庸でつまらないと思います。でも、それで良いと僕は考えます。だってそこまでで80点ですから。そこで終わりではなく、100点120点にするために、そこから右脳の力を借りるわけですから。そのためにクリエイターが存在するのだと考えています。

クリエイティブ開発のファーストかつ最重要ステップは「目的」の設定。
「目的」は全ての価値判断が基づく大事な軸。

7.誰に、いつどこで、誰が、どうやって、伝えるか。

目的を設定し、目的に基づきながらクリエイティブ開発を進めるわけですが、その時によく語られるのが「誰に伝えるか」「どこでいつ伝えるか」「どうやって伝えるか」の3点です。これに加えて、「誰が話しているか」、も加えた4つのポイントを整理することまでは左脳の役割だし、僕がクリエイティブを整理する大事なコトだと考えています。

次回#3は「誰に伝えるか」の話、#4で「どこでいつ」の話、#5でひとつとんで「誰が」の話、「どうやって」はそのあと少し先で書きたいと思います。

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