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【英日対訳】NZアーダーン首相が語る「確実に失われる命を減らすこと」を目指す #ゼロコロナ戦略 |米AP通信インタビュー(2020.12.16)

はじめに

新型コロナ対応で,中国、台湾、タイなどの国と並び、数少ない成功を収めたと評価されているニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(Prime Minister Jacinda Ardern)。そのアーダーン首相をドイツの国際メディアDW(Deutsche Welle)が投稿した1分ほどのひじょうに短いスポット動画が,アメリカ科学者連盟(FAS)臨時上級研究員で臨床疫学者のエリック・ディン医師(Dr. Eric Feigl-Ding)のツイート(2021/1/27付)により話題になりました。

ディン医師はアメリカの科学者として前トランプ政権のコロナ対策を批評しつつ,各国の動向をつぶさに観察しベストプラクティスとして有用な情報をアメリカ国民だけでなく世界中のユーザーに共有してきました。そのディン医師が,ことアーダーン首相の対応については手放しで称賛するのですから注目が集まるのも無理はありません。

"ZERO COVID is the way. New Zealand PM explains why it was the only way to save lives and prevent hospitals from being overwhelmed. It was the decision that made NZ the greatest pandemic conquering nation on Earth. "

「”ゼロコロナ”こそが正しい道。なぜそれが,命を救い医療の逼迫を防ぐための唯一の方法だったのか,ニュージーランドの首相が語る。この決断が,NZを最もコロナを克服した国の一つに押し上げた」

心あるユーザーの情報により,地元紙「ニュージーランド・ヘラルド」の報道から,この動画のインタビューが行われたのは去年の12月だったことがわかりました。取材自体もドイツDWではなくアメリカのAP通信が行ったものだったようです。おそらくAP通信のものをDWが転用したのでしょう。国際通信社はそうして素材や情報を共有するものですから,これは何ら不思議ではありません。それだけ世界の注目が高いことの証左でしょう。

Twitterでは抄訳をまとめてスレッド化もしましたが,この短い,素晴らしいメッセージを抄訳で済ませるのはあまりに勿体なく,かつ,申し訳ないので,やはり全文を書き起こし翻訳することにしました。

以下はその全文+アルファのおまけです。

本編

Jacinda Ardern
New Zealand Prime Minister

ジャシンダ・アーダーン
ニュージーランド首相

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"We knew that 'flattening the curve' was not sufficient for us."

「カーブの平坦化(ピークカット)」では十分ではないと,我々は分かっていました。”

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"The only two debates for the time were, those countries who were contemplating 'herd immunity', and those countries that were talking about 'squashing the curve'.

”当時各国で行われていた唯一の議論は,「集団免疫(herd immunity)」を検討するか「カーブを潰す(squashing the curve)」ことを検討するかのいずれかに二分されていました。”

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"And originally, that's where we started, because there just simply wasn't really much of a view that 'elimination' was possible, Not too many countries were talking about that.

”我々も,当初はそこから検討を始めました感染を根絶(eliminate)することが可能だという見方は,ほとんどなかったからです。けっして多くの国で検討される考え方ではありませんでした。”

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"I remember my chief science adviser bringing me a graph that showed me what 'flattening the curve' would look like for New Zealand and where our hospital and health capacity was, and the curve wasn't sitting under that line.

”NZで「カーブを潰す」ことがどういう意味を持ち,病院や医療のキャパシティはどうなるのか,首席科学顧問がグラフで説明してくれたことがありました。カーブは限界線を下回っていませんでした

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"So we knew that flattening the curve wasn't sufficient for us."

だから我々は,「カーブの平坦化(ピークカット)」では十分ではないと,分かっていたのです。”

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-- Did you worry that it was an impossible goal?

不可能な目標ではないかと,不安になりませんでしたか?

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"You know, either you set this goal [elimination] and you don't achieve it, but in the process you certainly are reducing the number of lives lost. The alternative is to set a lesser goal, and then still misfire,"

”選択肢は,この目標 [感染の根絶] を設定して,目標を達成はしないけれども、その過程で失われる命を確実に減らすか,それとも、より低い目標を設定してそれでも失敗するかのいずれかでした。”

付録 1分の動画に収まらなかった内容

「NZヘラルド」の記事には,このインタビューの続きが掲載されていました。動画はありませんが,その内容からインタビュワーの設問を想定してコロナ関連の部分のみを抜粋してインタビュー形式に編成してみました。

Border closures and a strict lockdown in March got rid of the disease, and New Zealand went 102 days without any community spread. But then came the August outbreak in Auckland, which remains unexplained but likely originated abroad.

(背景)[2020年]3月に行われた国境の封鎖と厳格なロックダウンによりコロナは撲滅され,NZは市中感染が102日間観測されなくなった。しかし8月にはオークランドで再び大発生が起こった。

"We thought we were through the worst of it. And so it was a real psychological blow for people. And I felt that, too. So it was very, very tough," Ardern said.

アーダーン首相「最悪を乗り越えたと思っていたのであれは本当に精神的にも人びとを苦しめました。私自身も,そう感じました。本当に,本当に,辛い時期でした」

She said they'd modelled different outbreak scenarios but the one that eventuated "was about the worst that you could even possibly imagine."

アーダーン首相「(さまざまな大発生のシナリオを想定したが結局実際に起こったのは)想像を超えた最悪な事態でした」

That's because the outbreak had spread across multiple groups in densely populated areas, she said, and some who caught it had been attending large church gatherings.

アーダーン首相「(というのも,今回の大発生は,人口密集地で複数の感染者層にわたって生じたからでした。そしてたまたま,感染者の中に大規模な教会の集会に参加していた者がいたのです)

But after a second lockdown in Auckland, New Zealand again stamped out the disease.

(背景)ところがNZはオークランドに対しても厳格なロックダウンを行い,感染を抑え込んだ。

Ardern said she felt confident about her responses despite sometimes feeling a touch of imposter syndrome in her role as leader.

(背景)首相は時々,自分が自分でなくなるような感覚を覚えながらも,自らの行った対応に自信を持つことができたと語る。

"You just have to get on with it. There's a job to be done," she said. "Any self-doubt I ever have, just as a human being, doesn't mean that always translates into doubt around what needs to be done."

アーダーン首相「とにかくやるしかないんです。それが仕事なのだから。人間として,自信を喪失することがあっても,それは仕事への自信を失うことにはつながりません」

Two months after the second outbreak, Ardern faced an election campaign. She won a second term in a landslide, with her Labour Party winning a majority of all votes, something that last happened in New Zealand's multiparty system in 1951.

オークランドでの二度目の大発生ののち,アーダーン首相率いる労働党は憲政史上,1951年来初めて全席で過半数の票を取得するという地滑り的な圧勝を果たし,再選を成し遂げた。

参考記事 - 日本でも推奨される「ゼロコロナ戦略」

群星沖縄臨床研修センター長で臨床疫学士の徳田安春医師の談話

上記記事が有料のため抜粋要約したもの👇

参考情報 - 98カ国コロナ対策ランキング

国別新型コロナ対策ランキング (2021/1/9時点)

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🇦🇺豪ローウィー国際政策研究所が以下6項目で評価
①確定陽性者数
②総死者数
③百万人当たり確定陽性者数
④百万人当たり死者数
⑤検査実施数
⑥検査当たり確定陽性者数

1位🇳🇿ニュージーランド 👈
2位🇻🇳ベトナム
3位🇹🇼台湾
4位🇹🇭タイ
5位🇨🇾キプロス
6位🇷🇼ルワンダ
7位🇮🇸アイスランド
8位🇦🇺オーストラリア
9位🇱🇻ラトビア
10位🇱🇰スリランカ
13位🇸🇬シンガポール
20位🇰🇷韓国
35位🇦🇪UAE
37位🇸🇪スウェーデン
45位🇯🇵日本 👈
55位🇩🇪ドイツ
59位🇮🇹イタリア
61位🇨🇦カナダ
66位🇬🇧英国
73位🇫🇷フランス
76位🇷🇺ロシア
78位🇪🇸スペイン
82位🇿🇦南アフリカ
86位🇮🇳インド
89位🇨🇱チリ
90位🇺🇦ウクライナ
91位🇴🇲オマーン
92位🇵🇦パナマ
93位🇧🇴ボリビア
94位🇺🇸米国 👈
95位🇮🇷イラン
96位🇨🇴コロンビア
97位🇲🇽メキシコ
98位🇧🇷ブラジル

※🇨🇳中国を除く(検査数未公表のため) 

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