第28話 運命を変えた無免許運転の話
斯くして彼女と別れ同棲を終えた私は、新幹線に乗って爺ちゃん婆ちゃん家へと戻ってきた。
「出てけー!」と言って私を追い出した祖父が、突然帰ってきた風来坊な私に何と言ったのか、一切覚えていない。
きっと祖母は相変わらず優しく出迎えてくれたんだと思う。
そして17歳の私はよく働くようになった。
内装業に勤め、毎朝7時に家を出て職場へと向かった。
作業内容は力仕事だけかと思いきや、ぼちぼち数学を必要とした。
石膏ボードなどを切る際に寸法を測るのだが、ボードには裏表と右左がきちんとあって、とにかく寸法通りに切るだけでは済まされないのだった。
測った寸法はスケール(メジャー)と鉛筆でボードに印を付ける、この時ボードの裏に書く事になっているのだがこれがなかなか慣れない。
表に書くのならそのまま測れば良いのだが、裏となるともう頭がゴチャゴチャ...。
何度やっても慣れなかった私は、運ぶ・切る・貼る・片付けるという力仕事だけに専念させてもらった。
先輩が測ってボードに書き、私が切って運んで貼る。
バケツリレーみたいなこのやり取りが、テンポが良くて、私は結構楽しかった。
ここから先は
1,582字
/
1画像
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?