日輪崇拝・ジツシャについて
某地域にこのような都市伝説がある。
日が暮れた頃、向日葵人間が現れる。向日葵人間とは読んで字のごとく頭が向日葵の人型をした何かである。
出会ってしまったら襲ってくる、呪われる、というたぐいの話は聞かない。ただそこにいて、立っていて、ときおり不可解なポーズを取る。基本的にはそれだけの無害な存在であり、一言二言であれば言葉も通じるそうだ。
彼、ないし彼女は「ジツシャ」と名乗る。
あなたは何者ですかと問うと、日輪崇拝のジツシャですと答えるそうなのだ。
その声はかすれていて低いらしい。
人間ですかと問うと、それがいいですと答えるが、やはりここでよくある相手を襲って成り代わるなどはしない。
ジツシャは本当にただ現れて、気づいたら消えてしまう存在なのだろう。
90年代になぜか距離の離れた複数の地域で一斉に噂された都市伝説だが、2005年を境にぱたりと情報が途切れた。
一説では成仏したとも、忘れられたため消えたとも言われている。
なぜジツシャは消えたのか。
なぜジツシャは日輪崇拝と言いながら日が暮れてからしか現れなかったのか。
ジツシャは、妖怪なのか幽霊なのか、あるいはそれ以外の怪異なのか。
なにひとつとして真実は分からない。
ただ、ひとつだけ、ジツシャについてやってはいけないことがある。
ジツシャは触られようが話しかけられようが無抵抗だが、絶対に彼、あるいは彼女の向日葵を触ってはいけない。ましてや本当に頭が向日葵なのか確かめるべく境目なんて首に探してはいけない。
うなだれたジツシャはその相手に対し、はっきりとこう言うそうだ。
「お前は首に紐かけ吊るす。」
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