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氷上の妖精(の見習い)が舞った日

11月24日(金)は世の中では稼働日だったかもしれませんが、飛び石連休に有給休暇をぶつけて単なる連休にし、普段はあまり行く機会のない娘のスケートレッスンを見学・応援しに行って参りました。


娘はロシアにいた時分に知り合いのロシア人トレーナーにスケートを習い始めたのですが、縁あって日本でも継続しています。最近ようやく本人も楽しいと感じられるレベルに滑れるようになってきたと見え、まだまだフィギュアスケートではなくスケートの域、妖精ではなくヒトの子の域ですが、コーチの先生方と色々話をしながら前向きに取り組んでいるのは何よりです。


日本でもフィギュアスケートファンの方はとても多いと思いますが、スケート大国ロシアではそこらのショッピングモールに行けばたいがい屋内スケート場があり、老いも若きもスケートを楽しんでいる程です。今ではウクライナ侵攻の影響等でロシア人選手が国際大会で滑走するのを見ることが出来なくなってしまいましたが、ロシアでは次から次へと若き才能ある選手が誕生し、有名選手の枚挙には暇がありませんでしたよね。


(冒頭の写真:モスクワ郊外にあるイリーナ・スルツカヤスケート学校のリンク。コーチがついていれば予約して一般でも練習が出来ました)


そんなわけで、今日はフィギュアスケートやフィギュアスケーターが出てくるアネクドートを読んでみました。



Ягудин пошел в пещеру искать сокровища. Он нашел старую медную лампу, теранул ее, а оттуда вылез Джинн и говорит:
- Я исполню три твоих желания, но учти, чтобы ты ни пожелал, твой извечный соперник Плющенко получит вдвое больше! Итак, первое желание?
- Хочу, чтоб у меня был огромный замок на берегу моря.
Исполнено. У Плющенко - два замка.
- Хочу, чтоб у меня был счет в банке на 100 млн. долларов!
Исполнено. У Плющенко - 200 млн. долларов.
- И последнее… напугай меня до полусмерти...

privetpeople.ru

пошёл:пойти (歩いて)行く の男性過去形 | пещера:洞穴、洞窟 | искать сокровища:宝物を探す | нашёл:найти 見つけるの男性過去形 | медная лампа:銅のランプ | теранул:терануть こする の男性過去形 | вылез:вылезти 這い出る、出る の男性過去形 | Джинн:ジン、ランプの精 | исполнить желание:望みを叶える | учти:учесть 考慮する の命令形 |  извечный соперник:永遠のライバル | получить вдвое больше:二倍多く受け取る | итак:そういったわけで、ということで | Хочу, чтоб (過去形):(私は)~であってほしい  | огромный замок:巨大な城 | на берегу моря:海岸に | счёт в банке:銀行の口座 | напугай:напугать 驚かす、怖がらせる の命令形 | до полусмерти:ひどく、死ぬほど

ヤグディンが洞窟に宝探しに出かけた。彼は古い銅のランプを見つけ、こするとランプの精が出てきて言う:
「お前の望みを三つ叶えてやろう。だが、お前が何を望んでも、お前の永遠のライバルであるプルシェンコはその2倍を受け取ることを忘れるな!そういうわけで、一つ目の望みは?」
「海岸に巨大なお城が欲しい」
望みは叶えられた。プルシェンコはお城を二つ手に入れた。
「銀行に1億ドルの口座が欲しい!」
望みは叶えられた。プルシェンコは2億ドルを手に入れた。
「そして最後の望みは・・・私を半殺しにしてくれ・・・」

黒澤たけし 拙訳


アレクセイ・ヤグディンとエフゲニー・プルシェンコ、同時期に活躍して「皇帝」と「帝王」なんて呼ばれた程の宿命のライバルなのですね。ロシア程のスケート大国になると、海外勢よりも同じロシア勢こそが最大のライバルでも不思議ではないでしょう。


ロシアのフィギュアスケートを認識しはじめた時期の影響か、私はヤグディンについてはほとんど存じませんでした。一方のプルシェンコはイリーナ・スルツカヤと一緒に"Звёзды на льду(氷上のスター達)"というアイスショーのテレビ番組の司会をしていて、いつだか忘れましたが若かりし頃によく番組を見ていたことを思い出しました(遠い目をする)。


このアネクドートは「アラジンと魔法のランプ」のようなシナリオになっていて色々と勉強になったのですが、最後はきついブラックユーモアではありますね(プルシェンコファンを攻撃する意図はございませんよ、念のため)。とりわけ最後の一文の訳が難しかったです。直訳すると「私が半分死ぬぐらいに驚かせてくれ(怖がらせてくれ)」となり、これを2倍して宿敵プルシェンコをやっつけられることになるのですが、驚かせたり怖がらせたりすることに関するしっくり来る訳が出てきませんでしたので、降参して「半殺しにしてくれ」と意訳致しました。


これはと唸るような訳を思いつかれた方がいましたら、是非ともご教示お願い致します。


Идут две вши. Навстречу им - третья.
- Куда идете?
- К Пете.
- Идите лучше к Васе. У него длинные, грязные волосы. А Петя - лысый...
- Так мы у Васи и живем. А к Пете идем заниматься фигурным катанием.

anekdotovstreet.com

вши:вошь シラミ の複数形 | навстречу (与):~に向かって | идти к (与):~の方に歩いて行く(来る) | грязный:汚い、不潔な | лысый:禿げた、頭髪のない | заниматься фигурным катанием:フィギュアスケートに取り組む |

シラミが2匹歩いている。向かいから3匹目がやってきた。
「君たちどちらへお出かけ?」
「ペーチャのところへ行くのさ」
「ヴァーシャのとこへ行った方がいいよ。長くて汚れた髪をしているからね。ペーチャはハゲだしね・・・」
「俺らもヴァーシャのとこに住んでるんだ。ペーチャのとこにはフィギュアスケートをやりに行くんだよ」

黒澤たけし 拙訳


知られざるミクロの世界のお話・・・流石スケート大国ロシア、アネクドートに出てくるシラミにもフィギュアスケートをやらせてしまうとは・・・(笑)


ペーチャ(Петя)というのはピョートル(Пётр)という男性の名前の愛称、ヴァーシャ(Вася)は同様にヴァシリー(Василий)という名前の愛称です。一つ目のアネクドートでアレクセイ・ヤグディン(Алексей Ягудин)とエフゲニー・プルシェンコ(Евгений Плющенко)が出てきましたが、それぞれのファーストネームの愛称形はアリョーシャ(Алёша)とジェーニャ(Женя)、となります。


こんな風に、ロシア語はヒトでもモノでも愛称で呼ぶことがとっても多い言語です。もう実践されている方もいるかもしれませんが、皆様もお子様や配偶者の愛称を考えてみてはいかがですか?

ここまでお読み下さり有難うございました。







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