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この世でいちばん美しいものは、いつかは消えてなくなってしまうのかもしれない。

人生ではじめて作品撮りというものに挑戦したので、できたら色んな人に触れてもらいたくてnoteを書いています。(どうか伝わりますように。)

シネマトグラファーの大江純平(以下ペー)とモデルの嶺結さん(以下みゆちゃん)と一緒に作らせていただきました。

テーマは「記憶」。

ナレーションもあるので、
ぜひ音ありでみて欲しいです。

2分26秒の映像です。



ここからは少しだけ、映像の背景にある話を書かせてください。

日々生きていると、忘れたくないなと感じる瞬間に出会うことがあります。それは場面かもしれないし、心情かもしれない。でも人間っていう生き物は難しくて、その瞬間をいつかは忘れてしまうということも、頭のどこかで分かってしまっている。

だからこそ儚いものや、失われることが分かっているものに、一種の美しさを感じるのかもしれない。

そんな話を3人で、夜更かししながら話していたことを今でも覚えています。

(会話の一部)
人は人を声から忘れるんだって知ってましたか?記憶って海馬に記録されるっていうじゃないですか?海の馬ってなんだか記憶を表現しているみたいでいいですよね。漂っているのか。走っているのか。走馬灯にも馬って漢字が入るし、人間の記憶や残したいものには馬が関係してるんですかね。全てを覚えておくことはできないけど、残しておくことはできるよね。モデルも映像も言葉も、表現は違うけど残す術なのかもしれないって、最近よく考えてる・・・

記憶という言葉に思考をめぐらせながら辿りついたのは、10代のみゆちゃんが綴った一つの日記でした。そこにはみゆちゃんが忘れたくないと思った感情や記憶についてのメモが残っていました。

その日記をもとに、1ヶ月後に20歳をむかえるみゆちゃん自身を主人公に据えて「 - kioku - 」というテーマで作品を撮ることを決めました。

これまで感じてきた 忘れたくなかったり、これからも大切にしていきたい感情や記憶を映像のなかに閉じ込めました。

当たり前かもしれないけれど、10代では感じられなかったことを、30歳になった僕は感じているし、10代の頃に感じたことを、今は感じることはできない。たとえ思い出そうと思っても思い出すことは難しい。

でも、当時の映像を見たり、写真を見返したり、日記を読むと、少しかもしれないけれど、時間を超えて当時の自分に触れることができます。

いま、この3人が捉えている記憶というものを、この作品に込めたいね。観てくれた人が自分の大切にしたいと思った感情を何らかの手段を使って残したい、残そうって思えるきっかけにしたいね。忘れたくない瞬間や感情に出会った時に、丁寧に扱えるようになってほしいね。そんな想いと願いを込めて作りました。

きっと ぺーは、記憶というものを映像という側面から解釈して、分解して、記録と記憶のような哲学的な問答を繰り返しながら、表現してくれました。

きっと みゆちゃんは、自分の記憶をたどりながら、紐解きながら、記憶の概念をとらえて、多彩な表情や仕草、佇まいで記憶を表現してくれました。

そして 僕も、記憶の根源をたどったり、みゆちゃんの話を聞きながら、日記を読みながら、その中から言葉を探したり、すくったり、少し形を変えたりして、言葉を紡いで表現しました。

映像だけでも、演技だけでも、言葉だけでも表現しきれなかった記憶というものがこの作品の中にあります。

タイトルにも書いたように、
記憶は、この世でいちばん美しいものの一つであり、いつかは消えてなくなってしまうものかもしれないものです。

ただ、こうして自分たちが持てる表現を用いて、記憶の結び目のようなものを作っていくことはできます。

人間は時間の経過とともに忘れていく生き物だから、いつか過去を振り返った時に、結び目をほどいて、語り合って、過去を紡ぎなおしたりして、また結び目が強くなっていく。そんな表現を増やしていきたいなと思っています。

表現というものは一つだけじゃなくて、生きている人の数だけあります。僕は言葉の領域に軸足を置きながら世の中と関わっていきたいなと、この作品撮りを通して改めて、そう感じることができました。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

以下、ナレーション文です。

この世でいちばん美しいものは
いつかは消えてなくなってしまうのかもしれない

わたしは今年 二十歳になる
人にはたくさんの面があることを知った

忘れたくないなと ふと気づく瞬間がある
同時に 忘れてしまうことにも気づく

だから わたしはわたしを綴る

桜の花言葉は「わたしを忘れないで」
そう教えてもらった日のこと

四月の胸をギュッと締めつける感じも

涙が頬を伝う感覚も

夜中三時の 外の静けさと月の明るさも

いつかは終わってしまう
親友と過ごす愛おしい時間も

忘れてしまうかもしれない

いつかの 何度目かの わたしへ

この世でいちばん美しいものは
いつかは消えて なくなってしまうのかもしれない

今のわたしは 世界をそんな風に とらえている

 - kioku -

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