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不動産 親族間売買での適正価格は・・・

親族間の売買のお手伝いをさせていただく際、一番注意を要するのは売買価格です。
親子間・親族間であれば、価格はいくらでもよいのではないか?
と思われるかもしれませんが、残念ながらそうはいきません。

親族間の不動産売買のケースは様々です。
相続を視野に入れて親名義の不動産を子供名義に変更したり、共有持分の状態になっている不動産を他の共有者から購入したり、親族間で売買することはよくあります。
なぜ価格設定が大切なのか・・・
それは、身内だからと安易に低い価格設定で取引すると、それが贈与とみなされるからです。
贈与とみなされるとどうなるか・・・ご存知のとおり贈与税が課されます。
贈与税の税率は、所得税などに比べても高いため、安易に低い価格で取引するリスクはここにあります。
あとでトラブルになる要因にもなるからです。

それでは親族間の売買の適正価格はどうやって決めればいいのか・・・
まずは、通常の不動産取引での適正価格から考えます。
通常の不動産取引の適正価格は、売却活動期間で最大で6カ月を目安に、買主が見つかる価格を指します。
しかし、親族間売買の場合は、最初から買主は決まっています。
そのため、親族間売買での適正価格は、通常取引のときとは少し意味合いが異なります。

親族間売買の適正価格は何かと言えば、それは贈与とみなされない価格なのです。

当事者間で合意した金額であれば問題ないだろうと思われがちです。
親子間や親族間での不動産売却ですから、目的は売却益を得ることではなく名義変更がほとんどです。
その結果、売却価格はできるだけ負担をかけないように安くしたいのが本音でしょう。
しかも、売買取引自体は、双方の合意があれば成立しますので、仮に市場価格5000万円の不動産を100万円で売買することも自由です。
その価格の取引自体を禁止する法律はありませんので、取引自体は有効です。

しかし、残念ながら、税金においてはそれが許されません。
市場価格よりはるかに安い価格で売却したときには、市場価格との差額分は「贈与した」とみなされ、贈与税の対象になります。

そのため、親族間の不動産売買でまず実施することは、その不動産の市場価格を調査することです。
固定資産税評価額や路線価、公示価格など公的なものを参考にしながら、エリアや規模など類似性のある不動産取引の事例を考慮して算定する必要があります。
公的なものについては、ネット等でも分かるのですが、市場価格と乖離が大きい場合もあります。
そのため、類似性のある取引事例の収集なども踏まえると、売主・買主が決まっている親族間売買であっても、不動産業者に依頼をされるほうが安心です。

「著しく低い価額」で売却したかどうかが贈与とみなされるかどうかのポイントになりますが、「著しく低い」というのは、具体的には市場価格の80%前後です。

そもそも、不動産というのは個別要因が強く、全く同じ不動産というのはないため、いくらの価格であれば100%正しいということは、誰にも言い切れません。
しかし、それでも税務署は、贈与かどうか判断しなければなりません。
そのときの目安となる基準、それが、市場価格の8割です。
実際、私がお手伝いした不動産も、ご親族にこれらの説明をしてから、市場価格の8割で取引を行い、贈与税がかかることはありませんでした。
8割の元となっているのは過去の裁判結果、いわゆる判例ですが、市場価格の8割程度で取引をする分には、贈与税がかかる可能性は極めて低いといえます。
そのエビデンスとして、類似性のある取引事例などがあると、なお良いので、親族間売買をお考えの場合、専門の不動産業者に相談されることをお勧めします。

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