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2030年ガソリン車問題と水素燃料

2030年ガソリン車問題について、自動車ライターとして思うところを前回に少し書きました。

2030年、新車はどうなるのか?

上のブログでは、ガソリンスタンドに充電スポットが設置しにくい理由と、EV、PHV車が、ガソリン車の実用性まで追いついていない点を話しました。

今回は、進歩すべき走行用バッテリーが、今後どういう進化をしていこうとしているか?企業がどういうプロジェクトを考えて、活動しているかという点で話を進めます。

2030年のガソリン車問題を前向きにとらえた場合、インフラ問題や雇用の問題が多く言われていますが、もっとも重い課題はEVのエネルギー元となるバッテリーです。

現在主流のリチウムイオンバッテリーは、およそ400kmの走行が可能なものが多いですが、ガソリン車はおよそ倍の600kmから800kmの走行可能距離を前提に、燃費や燃料タンクのサイズが作られています。

リーフがおよそ400km走行可能なのも、ボディサイズに余裕があり、ある程度のバッテリーが搭載できているからです。逆にいえば、リーフを400km走らせるためのバッテリーがこのサイズありきで、ボディが設計されたといっても過言ではないでしょう。

したがって、小回りの良い軽自動車や、コンパクトカーに同じ容量のバッテリーを搭載するためには、室内空間の犠牲や、荷室空間の犠牲を余儀なくされます。

例えば、EVのi-Miveの最大航続距離は120kmです。ちょっと近所の買い物くらいの距離感の移動であれば十分ですが、日帰りドライブや、旅行では難儀な距離です。

かといって全員がリーフや、テスラなどちょっとサイズが大きめの車に乗れる、とも限らないので、考慮に入れなければなりません。

そこで、バッテリーの進歩が必要になると考えることになります。

目標は、「小型化かつ大容量化」です。大容量化というのも体積を大きくするわけでは無くて、「バッテリーのサイズは小型化しつつも、蓄えられるエネルギーが大きい物」といえます。

まるで、猫型ロボットの四次元ポケットのような話ですが、2030年にそういったことを実現するためには、それ相応の技術の進歩が必要という訳です。

そこで、経済産業省や、トヨタ自動車などが研究を進めている「水素」について、勉強する必要が出てきます。単純に、ガソリン車がダメならEVだというのは簡単ですが、そこに至るまでに、どういった研究がされているのか、水素を中心に考えたいと思います。

今回の2030年のガソリン車問題に関連するワードとして、カーボンフリーや温室効果ガスの話が発端になっていて、CAFEなどの企業平均燃費など多くの関連ワードがあることは、少し調べたことのある人ならご存知でしょう。

中でも、経済産業省が進める水素エネルギー化は、その根底に近いものがあります。

水素社会実現に向けた経済産業省の取組

内容は、「水素エネルギー利用は、90%以上の一次エネルギーを海外化石燃料に依存する日本のエネルギー供給構造を変革・多様化させ、大幅な低炭素化を実現するポテンシャルを有する手段」となっていて、車のみならず、発電や、機械産業、運輸の分野まで網羅している内容です。

そう考えると、今回の2030年ガソリン車問題はその一部として捉えることができます。要するに、「水素燃料を利用した、脱炭素化で、EV化していきましょう」ということです。

PDFには、2017年の「水素基本戦略閣僚会議」の内容や、シナリオが描かれています。

私は、自動車ライターですので、車を中心に話を進めますが、今回の2030年問題を政府がどうとらえているか、読み取っていこうと思います。

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この閣議決定から読み取れることは、水素燃料電池を使いたいという点です。現状のリチウムイオンバッテリーではないことが分かります。

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また、セルの高効率化・高出力密度化というのは、根本的に今のリチウムイオンバッテリーでは、性能が足りないので、「水素燃料電池をつかって、小さくて力持ちなバッテリーを作りましょう」ということに他なりません。

あまりニュースでは報道されませんが、2020年予定だった東京オリンピックでは、水素を燃料とした聖火や、トーチの運用も考えられているようです。

おそらく、「日本は水素化社会の施策をこんなに進めています」という外交アピールに使おうと考えていたのでしょう。延期はされていますが、おそらくこの燃料で行われるのではないかと思っています。

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少し余談でしたが、今回のEV化というのは、水素燃料化ともいい換えることができるわけです。

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現状、水素燃料を利用し一般販売やリースされる車は、トヨタ「ミライ」と、ホンダ「クラリティ」、ヒュンダイ「ネクソ」くらいなもので、まだまだ少ない印象。

それくらい水素の取り扱いは難しい物と思われます。

しかし、国がこれだけ力を入れているものなので、その対策も講じていたようです。

水素ステーション関連規制の見直し進捗状況について

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水素は元素周期表で一番最初にある、最も小さい原子であることは、理科の教科書で知っている方も多いでしょう。そのため、金属分子の隙間に入り込み、水素脆化という問題が発生します。

そのための素材研究が必要だったこともあり、使用できる金属にも規制があったようです。そして、「少ない容量で、力持ち」であるということは、すなわち「少ない量でも、爆発的な力」が発生します。

水素は、核融合(水素同士がくっつく時)に大量のエネルギーが発生します。原子力に用いられる、ウランやプルトニウムは、核分裂を起こす時にエネルギーが発生するので、仕組みとしては真逆です。

小学生か中学生のころ、水の電気分解で、水素を発生させ火をつけた時に爆発させ、水素って爆発力凄いとなり、もっと水素を集めれば大きな爆発が起こるのかな?という想像は、大きな誤解であることが分かります。

水素を融合させるために必要なのは、「熱」と「圧力」で、「1億度以上の温度」と、「大気圧の1千億倍の圧力」です。

もはや、太陽な訳です。

水素爆弾は、この状況を造り出すために核分裂を起爆に利用しています(要するに核爆弾の一種となるわけ)。結局、原子力よりもエネルギーの大きなものを取り扱おうとしているわけです。

当然、この見直しをするにあたって十分考えている事とは思いますが、ガソリンスタンドを改装して、水素ステーションを増やすって本当に大丈夫なのか?という疑問は残ります。

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この辺りが、主にユーザーに関連する部分となりますが、取扱に十分な知識と注意が必要であることが伺えます。

この情報が、有益なものになればと願うばかりです。

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