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対話は相手の声に真剣に耳を傾ける

人の気持ちは100パーセント完全ということはない。
人の気持ちは変わるんだと思って感動した。
人の気持ちが変わるということに心を動かされた。
それによって僕は対話のもつ力を実感し、対話するという行為を信じられると思った。

この気づきを得たのはNHK「クローズアップ現代」2016年1月19日に放映された“最期のとき”をどう決める〜“終末期鎮静”めぐる葛藤〜を見たからだ。その回の取材対象者のひとりのALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者は、最終的に人工呼吸器を装着することに決めるが、そう決断するまで人工呼吸器は着けないという思いを強くもっておられるようだった。そんな方が人工呼吸器を装着する決断をされたのは、主治医が患者の言葉を鵜呑みにしないで本心に近づこうと対話を重ねたからだ。主治医が患者と話すシーンは、まるで植物のうす皮を一枚一枚ゆっくりと手でむいていくようだった。柔らかな土を両手でやさしくかき分けて、大切なものを土の中から取り出すのだ。

患者の意思の尊重という一見だれも傷つけない選択肢を取るのは簡単だろう。子育てでも教育でも、僕はこれまで相手がこうしたいということを聞いてあげることが「尊重」だと考えていたのだと思う。でもそれでは対話は始まらない。対話というのは、人の声に真剣に耳を傾けることから始まる。そのはじめの一歩を、僕は人の気持ちが常に同じところにとどまっていないということに気づいたことで踏み出せたのかもしれない。

#終末期医療 #対話

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