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好きなことをやりながら死ねたら

 お久しぶりです。プロ野球2019年シーズン終了後まったく更新してませんでした。

 昨年の夏にオリックス・バファローズの田口壮コーチにインタビューさせていただいたんですが、今年の二月にとあるお仕事でまたお会いする機会があって、少しだけご挨拶をしました。

田口コーチのインタビューは、私自身かなり救われたというかちょっと心の支えになったんです。

インタビュー記事 前編後編

 このインタビューのとき、私はある質問をしました。

――20年以上野球に携わられていますが、今までに野球を嫌いになったことはありますか

……まあ、記事の上ではここまではしょりました。実際には、超絶おこがましいと承知の上で、少しだけ自分の話をしてこの質問をしています。

私は20年くらい(途中お休みしながらも)吹奏楽・マーチングバンドをやっていて、ここ数年はもう潮時かななんて考えることも増えました。長年やっていると単純な好き嫌いだけじゃなくなってきちゃうんですよね。シンプルに考えられなくなって、義務感とか、技術以外の悩みとかいろいろあったり。もちろん仲間と吹くのは楽しくて好きなんですが(打ち上げはもっと好き)、なんとか続けている状態でした。

イップスになったりコンバートされたり勝ったり負けたりしながら、今もコーチとして今も野球に携わり続けている田口コーチ。さてどうして続けられるのでしょう、と不思議に思ったんです。

 田口コーチは(私のくだらない身の上話をしっかりと聞いてくれた上で)質問に対して、こう答えてくれました。

田口「たぶん、根本的には野球のこと好きなんだと思うんですよ。野球が嫌いになったとはいいますけど、それはその時の自分が嫌いなだけで。”野球をうまくやれない自分が”嫌いということなんですよ。

うまくいかないし何をやっても光が見えない自分のことが嫌いなだけで、野球自体が嫌いなんじゃなかったんだと思います。でもそういう状況にいる時は”野球が嫌い”っていう思いに置き換えてしまいますし、グラウンドに行きたくないっていう気持ちも生まれてしまいますよね」

――記事より抜粋

 ああ。好きなものをうまくやれない自分が嫌いだっただけなんて。わかっているようで、全然わかっていませんでした。それって楽器だけじゃなくて仕事にも、すべてのことに言えることだわ。

田口コーチのお話を聞いて以降、私はなんだか気持ちが楽になりました。楽団での練習はもちろん、いろんなことがうまくいかなくても楽しめるようになってきて。魔法の言葉をもらったなぁ、と深く感謝しています。

 それで先日お会いした際、(「お話を聞いて以降、趣味の楽器がすごく楽しくなりました。楽しくなりすぎて、有志でアンサンブルコンテストにも出たくらいです。これからも好きなことを楽しく続けられそうな気がして、すごく感謝してます。勝手ですけど、お礼を言わせてください。ありがとうございます」とヲタク特有の早口で思いの丈をぶつけて)ご挨拶したところ、あっはっはと笑いながらこう返してくれました。

「それはよかった。好きなことは死ぬまでやりなさい。好きなことをやりながら死ねたら最高だね、楽器吹きながら死ぬくらいがいいよ」

そして、颯爽と去っていった(去り際にきっちりとお辞儀をされて)。

 田口コーチと話すときはいつも、心の蓋が透明になったような気持ちになる。見透かされているような、風通しがいいような。紆余曲折を経ての今なのに、なんでこんなにもまっすぐな人なんだろう。私もまっすぐな人でいたい。そして、好きなことをやりながら死にたい。

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