情けは自分のためみんなのため【しん劇のお仕事2021】エンタメ・アート考
はいどーもー、しん劇(回路R森本)でございますー。
何だか時間がどんどん過ぎていく気がします。
さて…
他人に親切にしましょう、思いやりの気持ちを持って日々を過ごしましょう、お互い様だから困ってる人には手を貸しましょう。
子供の時からそう教わって、それが当たり前だと思っていました。
人としてそれが普通の感覚だと思っていましたし、誰もがそう教わって誰もがそう思っているんだと、思っていました。
だけど世の中は広いですね。
色んな人がいるんです。
損得勘定でしか行動しない人だっているわけで。
だからそういう人のために、次の言葉があるんだと思います。
『情けは人のためならず』
「情け(親切とか思いやり)ってものは、いつか自分に返ってくるものだから、自分のためにやってるんだと思って他人に情けをかけなさい」って、わざわざ損得勘定を考えたような言葉を用意して、損得勘定しかない人にも親切心や思いやりの心を持ってもらえるように、工夫したんでしょう。
「他人に情けを掛けることはその人のためにならない」って間違った解釈をする人もいるようですが、それはとんでもない誤りです。
だって、人生一寸先は闇、明日は我が身。
親切心、思いやりの心ってものは、人にとってなくてはならないものですよ。
どこかの記事で読んだんですが、親が子供の面倒を見て育てる。これは他の動物でも見られることだけど、子供が成長して年老いた親の世話をするのは、人間だけだそうです。
親子に限らず、助けあう。
それがなくなったとき、人は人でなくなって、ただ欲望の赴くままに生きる、心のない生物に堕ちるんでしょう。
人には心がある。
その心とは、こういった感覚を持っているってことではないでしょうか。
そして、その心を豊かにするものが、エンターテインメントだったりアートだったりするわけです。
この仕事は何をする仕事なのか。
例えば、興行で経済活動をするのが劇団の仕事ですが、興行の中身、商品は何なのかといいますと、物語です。
作家、演出家、多くのスタッフと俳優がひとつになって、物語を表現する仕事です。
そこで繰り広げられる物語をお客さんが鑑賞する行為は、日々の生活の中で直面する、悩みだとか喜びだとか、やり場のない悲しみ、感動なんかを共有する行為。
そこには、人生の深さや機微、社会的なテーマなんかもあるでしょう。
子供に物語を読み聞かせすることは、情操教育になると言います。
なぜならば、子供は物語に触れることで、喜怒哀楽の感情が発達し、モラルやマナーの基本的なことを学ぶからです。
同じように、小説であれ、漫画であれ、アニメ、ドラマ、映画、舞台、落語、講談等々、物語は大人にとっても、社会で生きていくために大切なもののひとつであると思います。
人は物語に触れることで、社会にはこんな苦しみがあるのか、こんな理不尽があるのかと気付いたり、相互理解を深めたり、自己主張と自己抑制の線引きを覚えたり、他人の痛みを知って思いやりの気持ちを抱いたり、人生に希望をみつけたり、人が人として生きていくために大切なものを再認識していくのです。
我々の仕事は生活には直接関係しない仕事?
いいえ、心を豊かにし人生を豊かにする、生活に密接した仕事だと思っています。
我々の仕事は、他の色んな産業と同様、生きていくために必要な産業だと思っています。
食糧にかかわる仕事(農業だったり水産業だったり外食産業だったり)が人の体を作る仕事だとすれば、教育やアート(音楽や美術、ダンスなどなど)や物語を表現する仕事は、人の内面を作る仕事であります。
人とその他の動物との違いが人の内面であるならば、人を人たらしめんために必要な物をつくるのが、音楽家であり、美術家であり、ダンサー、俳優、芸人、監督、小説家、脚本家、などなどの文化芸術的職業にたずさわる者なのです。
医、食、生活必需品、教育にかかわる仕事同様に、なくなってはならない仕事なのです。
良く言われることに
「歌だ芝居だなんてものは生きるために必要か?生きるか死ぬかのときに何が一番大切だ?非常時には生きるために食べなきゃいけない」
もっともなことです。
ぐうの音も出ません。
ぐう。
しかし、生き延びた上で人が人として生きていく証しのひとつがエンターテイメントだったりアートだったりするのです。
役者が芝居をしたいから公演する、芸人が芸をしたいからステージに立つ、そんなわがままのために行うわけではありません。
職業、仕事なのです。
仕事がなくなれば収入がなくなり生きていけません。
公演自粛なら補償がほしい…
あ、脱線しました。
話を戻しましょう。
ただ生きるための栄養をとるなら、空腹を満たすためなら、水と主食に、足りない栄養素を補うサプリみたいなものでいいわけです。
でも人は色んな料理を食べたい。好みの服を着たい。髪を整え化粧したい。運動したい。旅行に行きたい。
そのためにそれを提供する職業があって、飲食店、スーパー、理髪店、旅館ホテル、そしてエンタメ、アートも同じ。
人が他の動物と違うのは、心の満足がなくては生きていけないという部分。
メンタルがやられてしまうんです。
おかしくなって生きていけない。
エンタメ、アートが無駄なこと必要ないことだと言うなら、様々な料理も必要ないことだし、様々なドリンクだって無駄なことなんじゃないんですか?
服もそう。防寒とかできりゃいいわけで、デザインなんか無駄なこと。
住まいだって雨風しのげりゃいい。家の設計、マンションのデザインなんか無駄無駄。
理髪店理容室も無駄無駄。
旅館ホテル?旅行?観光なんて無駄無駄。
ってことにはならないでしょ?
生きるために食べる、寝起きするための住まい、生きるために最低限必要なことだけなら、他の動物と同じ。
例えば美味しいものを食べたいってことは、すでにエンタメ。
飲食、ファッション、観光、宿泊、みんなエンタメ。
動物たちの目から見て無駄だと思うものだけど、人にとっては必要なもの。
エンタメ、アートってのは、そういうものだと思うのです。
なあんて。
回路Rチャンネルの朗読をお楽しみください。
◼️おはなしサスペンス劇場
「夢野久作の短いお話」
作:夢野久作
「正夢」大正8年萠円名義
「ドン」大正12年海若藍平名義
「お菓子の大舞踏会」大正12年海若藍平名義
「森の神」大正12年香俱土三鳥名義
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