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優秀な視聴者に向けて作られるドラマ *TBSドラマ「アンチヒーロー 」1,2話の内容(ネタバレ含む)を含みます。

*この文章はTBSドラマ「アンチヒーロー 」1,2話の内容(ネタバレ含む)を含みます。

社会で働いていると、たとえ仕事ができる優秀な人間でも一緒に飲んだりすると、どうしようもない酒癖があったり、風紀が乱れたりしますよね。

でもそういう癖や性格はその主が優秀かどうかに関わらず、万人が持っているのは当然なのですが、TBSドラマ「アンチヒーロー」を見ていて、このドラマはそういう優秀な視聴者に向けて作られたドラマだなと思いました。

優秀な人間が抱える葛藤や悩みは普通の人間が理解できる範囲を超えているため、あまり表沙汰にならないのでしょう。しかし、同じく優秀な人間からその人間を見た場合、何が悩みか理解できてしまう。別にそれがいいことでも悪いことでもないと思うのですが、結局似たような人間が集まるのかなあと。

*TBSドラマ「アンチヒーロー 」3話以降を見ていないので、ここまでの感想です。

2話の最後で明墨が赤峰とやりとりしたセリフがありました。

赤峰「先生の正義がどこにあるのかわかりません」

明墨「例えば、大切な家族に命の危機が迫っていたら、目の前でナイフを持った男に大切は家族が殺されそうになっている。こっちはその男を殺せるナイフを持っている。赤峰君ならどうする?大切な家族を守るためにその男を殺すか?」

赤峰
「どうしてそんなことを聞くんですか?」

明墨
「大事な人を守るために、やむを得ず人を殺した者、殺意を持って人を殺そうとしたができなかった者、罪が重いのはどっちなんだろうね」

赤峰
「殺します」

ドラマを見ていない人の為に、二人のこのやりとりまでのあらすじを説明すると、弁護士である明墨は殺人容疑で訴えられた緋山の弁護を担当し、持ち前の頭脳で緋山を無罪にします。しかし、明墨と同じ法律事務所で働く若手弁護士の赤峰緋山が証拠となる血痕のついた上着を廃棄する所を目撃します。明墨のところにやってきた赤峰は「最初から全部わかっていたんですね。緋山さんは罪を犯していた。彼は人を殺しているんです。」と言い、詰め寄ります。

殺人容疑で訴えられた被告人の緋山は自分が働いている工場の社長・羽木のパワハラを受けており、それに耐えかねて犯行に及んだのであって、誰かの命が危険で守らなければならなかったわけじゃないから、明墨緋山を弁護して、無罪にすることは捻じ曲がった正義だということを赤峰は主張しています。

このドラマが普通の視聴者に向けて作られているのであれば、緋山が犯行に及ぶ背景や状況が描かれることになると思うのですが、3話以降、どうも単純にそういう展開にはなりそうにないので、やはり頭のいい視聴者に向けて難しく作られているのかなあと思った次第です。

頭がいい人間が仕事を選ぶ時、自分の能力を発揮できることとその仕事の意義を天秤に掛けた場合、前者に重きを置く気がしていて、つまり、「なんのためにその仕事をするのか」より「その仕事で(自分が)何ができるのか」を大事に考えていると思うのです。そうすると、明墨のような優秀な弁護士が「自分の能力を以ってすれば、緋山を無罪にすることができる」と思えば、無罪を選択すると思うのです。作中でも明墨が「裁判の勝ち方を見せてあげよう」と赤峰に言っていますし。結局、「(主人公に)能力さえあれば、悪人を無罪にしてもいい」と言っているドラマなのではないでしょうか。(3話以降でこの認識が変われば良いです)

普通の人に作られたドラマであれば、「優秀な人間でも、悪人を助けていいわけがない」と視聴者に伝えるために、作品でその悪人の悲惨な過去や耐え難い状況を丁寧に描くところが、このドラマではそうではなく、2話であっという間に悪人を無罪にしてしまい、その後は、優秀な人間である明墨の正義や過去が描かれるのだと思うと、やはり頭がいい視聴者に向けて作られているのではないかと思ってしまいます。そうすると、「優秀な人間であれば、悪人を助けていい」と考える人が今後世の中に出てくるのでないかと少し心配しました。

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